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8月15日、16日

僕は綺麗な景色を観るのが好きだった


This is my memoryーI love…


ー8月15日ー

今日は気温が割と低く28℃くらいだそうだ。今朝のニュースでやっていたのを漠然と見ていたのを思い出した。地球温暖化が進んで去年より気温が高い。実感ではわからないが数値ではそう。もし昔の人が現代に来たら暑くて死んじゃうかもね。なんて。

そんな時代だから気温が低いって言ったって暑いもんは暑い。扇風機にしがみつきながらどうにかしたいとあれこれ考えるのだ。

「そうだ、川に行こう」

10kmくらい行けば山があり清流が流れてる(はず。昔 父親に連れていってもらっただけだから確かじゃない)

自転車をこいで良い汗かいて川に入ればきっと気持ち良いに違いない!

地図で場所を確認して準備を始めるのだ。

今日はもう行くには遅いから明日行こう。そう思って胸を弾ませる。


あっ、ゴーグルは忘れちゃいけないよ。



ー8月16日ー

()()。昨日に比べて今日は本当に暑い。今朝のニュースでは35℃って言ってた。

まあ、僕くらいのポジティブ思考なやつからすれば暑ければ暑いほど川が気持ち良く感じるってもんよ。

そう言い聞かせながら自転車をこぐ。あと半分くらい。リュックがちょっと重いかな?肩が痛い気がする。

大きな川が見えてきた。この支流が今日の目的地だ。

さっき買ったココアシガレットを咥えながらずんずん進む。煙草みたいにしてカッコつけてるつもりだけど自転車は中学生の時から使ってる銀色のアレ。我ながらダサい。まあ、しょうがない。

目的地の川に着いたのは思ってたより早く10時くらい。しかし僕は川の上の橋で立ち尽くしていた。

「人が、人が多い……」

人は嫌いだ。なんでも壊してしまう。という自分も人なのだが、そんな持論は置いといて。わざわざちょっと奥まで来たのにこんなところにまで人がいるとは思わなかった。どうしよう。


まだ10時だしもうちょっと奥まで行ってみることにした。

次の橋のところまで来た。ーいる。

その次の橋のところまで来た。ーいる。

同じような考えの人がいるんだろうなと思った。けど僕は諦めないよ。

その後30分くらい進んだ。ふと、藪の奥に川原があるのが見えた。ーあそこならー

無理に押し入ってなんとか川原に着いた。


━━━━━━━━その時僕は思わず息を呑んだ。

見たことない程の透明度。川は深いが最奥まで見える。日が差して水の色はエメラルド色になっている。

鳥肌が立った。蹂躙された現代の地球にこんな場所が残っているとは。


まずは水を触ってみる。

「あれ、そんなに冷たくない」

こういう所の水は普通冷たいはずなんだけど…まあいいや。

そして服を脱ぎ水着に着替える。水温がそこまで低くないから一気に全身まで浸かれた。

「あぁ……」背浮きをしながら声が零れた。魂の浄化を思わせる心地良さだ。

次は潜ってみる。川の底から景色を観たいと思ったのだ。


この綺麗な世界では僕がただ一つの汚れだ。

僕はなんとなく恥ずかしくなった。

魚がいた。君も綺麗だね。

川の底から観た景色は絶景だった。日頃、浸水都市みたいな二次創作絵をよく見たが、まさにそれだった。岩が街に見えた。魚が住人だ。


「こんな世界が良いな━━━」

その時だった。苦しかった水圧が和らぎ息がしやすくなった。

ん?

んん?

僕は魚類になったんだと思う。は?

訳が分からないけどとても気分が良い。僕は川を自由に泳ぎ回った。


少し深いところに行ったとき何か一際綺麗な光を見つけた。なんだろう。近づいてみると光は強くなった。

「わっ、わっ」眩しいほど強くなった光に僕は目を閉じた。光が落ち着いて目を開いたら目の前には美しい同い年?くらいの女の子がいた。何か言っている。僕には聴き取れない。キョトンとした顔をした後で彼女はフフっと笑った。つられて笑った。彼女は何かを僕に渡そうとしてきた。見ると、丸みを帯びた綺麗な石である。この川を表してるような。

僕は「ありがとう」と言ったが果たして伝わっているのか。彼女は目を合わせた後でまた笑った。つられて笑った。


━━━━━━━━━━━━━━━


目尻を下げる勢いで閉じた瞳を開いた瞬間、景色は一変してさっきの川原だった。

……?

潜って息が苦しくなって戻ってきたんだっけ?なんか記憶が飛んでる気がする。え、そんなに酸欠状態だったのか?やばいな。

ふとポケットに入っているモノの存在に気づく。

綺麗な石だ。

これを拾いに行ってたのかな。石をリュックに入れる。良いお土産ができた!

もう3時になっていた。お昼ご飯を食べて写真を撮って帰る支度をした。そして自転車を引いて歩き出そうとしたとき、

「キーン…」

音がしたように思えた。しかし川を見ても何かあるわけでもない。僕は歩き出した。いやぁ、今日は本当に良い所に来れたなぁ。さて、帰るとしますか。

僕は自転車をこぎ始めた。


「ーまた会いましょうね」

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