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ガソ欠

作者: ハマハマ

関西弁ですが、ワタクシが他でやってる「異世界ニートを生贄に。」のタロウとは関係ございません。

よろしくお願い致します。


「ガソリンの事をな、ガスって言うやん」

「おぅ、言うな」

「でも俺は言わんねん」

「おぅ、俺も言わんな」

「せやからガス欠の事をな、これからガソ欠って言おう思うねん」

「せやな、俺もこれからガソ欠って言うわ」

「ほないくで」

「おう」



「「くっそー! ガソ欠や!」」


 あれ大学入って割りとすぐやったよな。

 せや、一年の夏やな。

 もう何年前になるんかな。

 


「なぁ、原チャリで旅に出ようぜ」

 ってどんな青春ヤローやねんって正直ちょっと引いとったんやで。

 まぁそう言うなよ。

 実際のとこ俺とオマエの二人だけの参加やったやんけ。

 しかもオマエんちの前で集合やのに行ったらオマエまだ寝てるしな。

 一ミリのやる気も感じられんかったわ。

 ほんでやっと出てきて「行くぞー! 着いて来い!」って言われても「おー」の声が小さくもなるっつうの。


 いや文句ばっかり言うてるけど、もちろん旅は楽しかったで。

 トラブル続きでな、べらぼうにオモロかった。


 最初の年は四国一周やったな。

 いや悪かったってば。

 愛媛ぐらいいつでも行けたやんか。

 10日の予定が7日になったのもしゃあないやん。

 バイト休めんかってんから。


あん時に散々怒ったんやからもう許せってば。

「四国一周やねんぞ! 愛媛行けんかったら三国みくに一周になるやんけ! 三国なんかチャリで行けるわ!」やったか。


※大阪市の北側に「三国」という街があります。



 何回もガソ欠なったよなー。スタンドから次のスタンドまで走り切れん時とかあったもんな。

 そん時やな、オマエがガソ欠って言い始めたの。


 次の年に行った北海道ん時はガソ欠少なかったよな。

 エンジンオイルの空き缶にガソリン詰め替えて持ち運ぶという、俺の名案のおかげで。

 なんでやねん、俺やってば。

 オマエ最初、ペットボトル案やったやん。

 溶けるっつうの。


 でも北海道は雨が辛かったなー。

 もう雨ば〜っかり。

 大雨の中で一晩中走り続けるんはきつかった。

 八月やのに寒いし眠いし。

 朝まで走り切って函館、早朝の温泉直行はマジ最高やったわ。


 雨ん中でパンクした事もあったよな。

 そうそう、オマエなんかタイヤがバーストしてなー。


 逆に九州は晴ればっかりで物足りんかったなー。トラブルらしいトラブルは駐禁切られたくらいやもんなー。



 おお、すまんすまん。

 思い出したら涙出てきたわ。もうあんな旅はできへんなー。


 なんでやねん、一人で行ったっておもろないやん。

 まぁええねん、その話は。


 遊んだなー、あの頃は。

 いっつも言い出しっぺはオマエでな。

 原チャリ旅も釣りも合コンも麻雀なんかまで全力で遊んだなー。

 その割にオマエはテストも課題も良い点やったな。

 みんな全力で遊んでんのに、オマエだけ学校も全力やったもんな。


「頑張り屋さんやのー」て言うたら、

「何も頑張ってへん。俺は欲張りなんや」て眠っそうな顔でしれっと言いよんねん。

 あれ言われた時は、カッコ良くて腹がたってうっかり抱かれても良いかも、って思ってもうたわ。


 なんやねん照れんなや。

 あの頃のオマエは真顔で言うとったぞ。


 せやな、若気の至りやな。俺まで赤面しそうや。


 でもな、あの頃オマエに会えて良かったと思ってる。

 最高の学生生活やったと胸張って言える。

 社会人になって会う量は減ったけど、オマエと会って話すのはずっと心の支えになっとった。

 今はもう、こうやってしか話せんけど、ちょこちょこ顔出すわな。


 オマエみたいにな、病院のベッドの上で、ホンマの最期の最期で同じセリフ言える様に全力で生きてくわ。


「あかん、もうすっかりガソ欠やわ」って。


 じゃあ、また、来年の命日にな。

 化けて出んなよ。


「異世界ニートを生贄に。」もよろしくお願い致します。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 途中から片方の語りのみだなと思っていたら。 いろんな意味でやられました。 しんみり。
[良い点] 文章にぐんぐん引き込まれ、無意識に場面の情景を想像しながら読んでいました。 [気になる点] 個人的には、物語の最後のあたりにある直接的な表現「病院のベットの上で」「命日」はなくても良いかも…
[良い点] 読むのは2回目ですが、さらに2回読みました。 良かったです。読書習慣がないせいで不感症なのか、1回目に読んだ時より心に響きました。でも他の人も複数回読んだ方が良いと思います。 [一言] 「…
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