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-Main Story-

※2016年3月執筆

赤、黄色、葉っぱの色。

秋の色。


「なーにやってんの?」


背中の後ろから声がした。

のけぞって見上げれば、見知った顔。

手元の葉っぱを重ねて見れば、やっぱり合わさる髪の色。

太陽に透けて、きらきらしてる。










≪キミイロモミジ≫










「ねえ、君のそれは何色なの?」

「えーと……キャロットオレンジ、だったはず」

「この前は金髪だったよね」

「季節によって変えていくスタイルで」


笑い声が響く。

他の誰もいない、木々の道。


「んで、お前は?何やってたの?」

「秋を満喫してるの」

「お、いいな。俺もやる」


とん、と背中に重力。

地べたに座って、制服汚れるよなんて言って。

それでも二人、気にしないまま。


「髪痛んでそうだよね」

「うーわ、あんまり考えたくねえな」


くすくすと背中が揺れる。


「それ、めちゃくちゃ怒られるでしょ」

「まあ。今日も呼び出されましたんで」


もう何週間目だよと不満そうな呟き。

当たり前なんて返事する。


「怒られるのわかってて何で続けるかな」

「学生の内にやっておきたいじゃん」

「わっかんないなー」


私の言葉に反応するように、背中をぐっと押された。


「あと少しで大学なんだぜ」

「……面接それでいくの?」

「んなわけあるかって」


どこか乾いた笑い。

『あと少しで大学生』なんて言葉。

少しだけ切なくなる感じ。


「あぁ、秋だからセンチメンタルなの?」

「あっはは、そう見える?」


背中の後ろ。

顔は見えない。

どこか乾いてそうな声。


「なんとなく。そんな感じ」

「さーてどうだろうな」


何考えてるか、本当にわからない。

わかりたいと思うのは、何でだろう。

その視界の中に私はどう映ってるのだろう。


この、赤と黄色の景色の中で。


「なぁさっきからそれ何やってんの」

「んー、重ねてんの」

「何と」

「内緒」


キミと。


同じ色したこの葉っぱ。

太陽に透けて輝いて、空の色と、混ざって。


秋を感じたのは、寂しさを感じたのは、この人を想ったから。

もしかして、この人自身が季節なんだろうか。


私にとっての。


「この髪色目立つ?」

「悪い意味でね」

「うわきっついこと言うな」


触れる背中が熱い。

何でだろう。


「その葉っぱどうすんの?」

「そうだなぁ……。栞にでもしようかな」

「いいな。俺にも作ってよ」

「あんた本読むの?」


思わず問いかけた私の言葉に、一瞬の間。


「……漫画なら」


漫画に栞って使うんだろうか。

そう聞こうとした言葉を飲み込んで

「いいよ」って言葉を返したのは

せっかくの機会だと思ったから。


なんて、やっぱり。


「ねえあのさ」

「あー?」


好きな人とか、いる?なんて

どうせ聞けるはずない問いかけだった。


「秋って、何で寂しくなるんだろうね」


君がいるから?

君がいないから?

こんなに明るい色ばかりなのに。


君を想う度、寂しくなる。

君を想う度、悲しくなる。

この景色の中で、君に見つけてほしいなんて。

なんて。勝手。


「俺は、冬が近づくから寂しいけど」


すっと、後ろから伸びてきた手に驚く。

背中の熱さは、いつの間にか消えてて。


「冬が来たらさ、学校、あんまり来なくなるし」


紅葉を掴む私の手を握った体温は、熱くて。


「その後、卒業だし?」

「七原……?」


見上げた先に、ぶつかる視線。

どきっとした。


「葉月の顔、赤いな。紅葉みてえ」

「それはあんたの髪の色でしょ……」


秋だから、ですか。

私の気持ちが、赤く色づくのは。


君の色に染まるのは。


「俺の色はもう少しオレンジだろ」

「そうね、この葉っぱと同じ色ね」


握られた手の中の、オレンジ色。

秋を知らせるモミジの色。


「だったら――」


息が止まる。

鼓動が強くなる。


「俺の事も、もう少し見てくれてもいいんじゃないの?」


聞こえた言葉に熱くなる。


「……もうとっくに見てたわよ」


悔しいけれど、認めるしかない目の前の色。


「もっと早く言えよ、ばか」


笑顔の君と、空の青。

モミジ色。秋の色。



END

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