04.能力粒子(エレメント)
INDIGO-BLUEからの帰り道、明日翔は先程見たものについて零愛とミイに聞いた。
「そういえば、さっきの…………能力ですか?」
「ええ、私の能力は光線照射。そしてミイは…………」
「ん? ああ、粒子崩壊だったかな」
零愛が説明を続ける。
「私は指先から光を出せるの」
そう言いながら手を下に向け、日陰を照らしてみせた。黒い陰の中に一つだけ、輝く円ができている。
「それで、ミイの能力はね……」
そんな話をしているうちに家についてしまった。
「それじゃあ、続きは地下の研究室で話すわ」
「はい、お願いします!」
明日翔は聞く気満々だ。扉を開けると、こころがキッチンで昼食を作っていた。この家では彼女しか料理ができる人がいないのだ。
「たっだいまー!」
「おっ、おかえり」
話を聞くために明日翔は階段を降りて地下に行った。零愛は何やらパソコンを弄っている。前の大きなモニターで説明してくれるようだ。
「まずは、能力粒子について。その名の通り、能力の使用に不可欠な粒子のことよ。ただ、現時点で分かっていることはほんの少しで、何人もの研究者が謎を解明しようとしてるの。ちなみに、私もその一人よ。」
このあたりの知識は明日翔でも一応知っていた。少し前に本で読んだからだ。
「でも、最近新発見があったのよ。それもエレメントの構造について。なんと2重になっていたのよ! 立方体と球の!」
零愛はモニターに図を表示してくれた。確かに、立方体の中に球が入っている。
「中の球体こそが能力のエネルギーになる、エレメントコア。外側のは只のケースに過ぎないの。そして、『エレメントからエレメントコアを取り出せる人』こそが『能力者』と定義されるわ」
「じゃあ、能力が使えなくても、それを取り出せる人は能力者なんですか?」
「いい質問ね。その通り、能力、通称アビリティはある時急に目覚めるものなの。使えるか使えないかは生まれた時から決まってるけど、今のところ法則は見つかってないの。普通の人は中学2年生くらいまでに目覚めるけど稀に遅い人もいるらしいわ」
明日翔は思い出した。この間、特に意識はしていなかったものの、手の周りにほんの少しだけ、キラキラと光の粒が見えたのだ。それを零愛に話すと、
「それって、本当?」
「はい。ということは、私も能力者ってことですか?」
「実は、目覚めるのが遅い人は通常よりも明らかに強い能力を持つというデータがあるのよ。もしかしたら、凄いアビリティを持っているのかもね」
零愛はモニターの画像を切り替え、説明に戻る。
「そして、アビリティとエレメントには5つの『属性』があるの。『火・水・光・感・無』ね。それぞれの特徴はこんな感じ」
画面には
『火:火、熱等』
『水:水、冷却等』
『光:光線、屈折等』
『感:感覚、感情等』
『無:上記以外のもの』
と書いてある。
「ちなみに、私は光属性でミイは無属性よ。そして、今から言うほが一番大事なことなんだけど、『火・水・光属性には対応するエレメントがある』の。つまり、エレメントの供給源が限られるってこと。私だったら日光とかね」
「残り2つは…………」
「その他の属性の能力者は全てのエレメントを利用できるのよ。私からするとちょっとズルく感じるわ。でも、そのせいか、他の3属性に比べてエレメントの変換効率が悪いらしいけど」
変換効率は別として、能力使用に場所を選ばないというのは中々便利なものだ。
「ちなみに、ミイの能力について説明するとね。エレメントの粒子は能力者が変換せずにケース部分に力がかかると崩壊を起こすの。この時にコアが砕けてその分のエネルギーを放出するんだけど、ミイはその崩壊を制御できるのよ。まあ、この能力を持つのはミイ、ただ一人らしいわ」
ただ一人……か。私もアビリティが使えたらなあ。明日翔はそんなことを考えていたのだった。