02.シェアハウスここのぎ
「それじゃ、案内するね」
零愛が木製の立派な扉を開いた。玄関には靴が3足。人数分だろうか。
「まず入って右側が共同スペースね。食事は大体ここで食べるの」
これまた立派なテーブルが部屋の真ん中に置いてある。椅子は4つ……つまり住人は明日翔含め4人である。
「料理は奥のキッチンでご自由に」
「あの……私料理苦手なんですけど…………」
「大丈夫。この家でまともに料理できる人は1人しかいないから♪」
「あっ……はい」
共同スペースを出ると廊下を挟んでお風呂があり、右には上りと下りの階段がある。
「地下、あるんですか?」
「えぇ……私、能力の研究をしてるの。地下は研究室になってるわ。上のスペースが空いてたから住めるようにしたのよ」
「研究……何か凄そうですね」
そんな会話をしていると何やら地下から声が聞こえた。
「零愛さーん! データ採れましたよー!」
零愛も大声で答える。
「分かった!今そっちに行く」
階段を降りるとそこには大量の機械が置いてあった。正面にはとても大きなモニターがついていた。その前には白衣を来た女の子。
「あれ、零愛さんもしかしてその子……」
「さっき着いたところよ。明日……」
すると、その女の子は明日翔に向かって駆け寄ってきて、
「あなたが新しい住人ね! お名前は?」
「花束 明日翔です…………」
「明日翔さんね! 今日からよろしくぅ♪」
明日翔は思った。超絡み辛い。
「よ、よろしくお願いします……」
「おっと、忘れてた。私の名前は如月 こころ。ちなみに、ミイさんにはもう会ったの?」
「ミイさん」が誰だか分からない明日翔は零愛に視線を向ける。すると零愛は、
「そういえばミイ……今日一度も見てないような……」
「え、また部屋で倒れてたりしないよね?」
「ちょっと見に行きましょうか。明日翔ちゃんにも紹介しなきゃいけないし」
2階まで階段を上ると個室が4部屋あった。一番奥の部屋だけ明かりが漏れていた。おまけにカタカタという音も。
零愛はドアをノックし、問いかけた。
「ミイー!いるのー?」
何も返事がない。心配になってドアを開けてみると……
そこにはフードを被って寝ながらネトゲをしている女性がいた。
「ん、零愛?今集中してるから邪魔しないで……」
「どうせネトゲでしょ?暇じゃないの」
「イベント周回中なんだってば!ちょっと黙ってて……」
この発言でキレた零愛はパソコンのプラグをコンセントから抜いた。もちろん画面は真っ暗に。するとその女性は下を向きながらこちらに近づいてきた。そして、パーカーのポケットから小さな金属のネジを取り出し、
「零愛…………死して償え…………」
そういって零愛にネジを投げつけた女性は右手を天井に突き上げ……
「ちょっと、家の中はマズイって……」
ニヤッと笑いながら女性が指をパチンと鳴らすと……ネジを中心にとてつもない衝撃波が発生した。それもピンポイントに零愛の正面で。家が大きく揺れたように感じた程だ。
廊下まで吹っ飛ばされた零愛は、
「死ぬかと思ったぁ……てかホントに死んでたらどうするのよ」
「零愛はタフだから大丈夫だろ。それにこれでも手加減してるんだからさ」
「…………」
「君、巻き込んじゃって申し訳ないね。今日から住む子だろ?名前は?」
「あ、えーと花束 明日翔です」
「私は白雨 珠彩。通称ミイさん。ネトゲの腕前はプロ級で、でも無課金で………………」
ミイのお喋りが止まらないので明日翔はスッと部屋を出た。大きな荷物はもう届いていたので自分の部屋に運んだ。ベッドや机など大きなものを運び終わると、明日翔は疲れからかそのまま寝てしまった。