15.銃弾vs銃弾
「先生、私もやってみたいです」
栞凛は手を挙げてそう言った。
「君は……三延か。圧力射撃だね」
「はい、弾速には自信があります。銃弾、お借りしてもよろしいでしょうか?」
絵留は鞄から予備の銃弾を取り出し、投げて栞凛に渡した。
「皆、反対側に寄って。跳弾すると危ないから」
絵留と栞凛の伸ばした手が一直線上に並んだ。撃つ原理は違えど、どちらも殺傷能力は十分な速さだ。二人とも、エレメントを取り込み始めた。
「もし、少しでも軌道がずれていたら、弾が直撃するが……大丈夫なのか?」
「勿論、大丈夫ですよ。……絶対に撃ち落としますから……」
絵留の目が水色になっている。エレメントの吸収と同時に、話しながらアビリティを使っていたのだ。流石、処理能力が違う。
「同時に撃たないといけないからな。合図を頼む」
「分かりました。……せーの!」
二人の放った弾は激しい金属音を響かせ衝突した。銃弾の一つが弾かれ床に落ちた。それの半分には削れたような跡があった。あれ……もう一つの銃弾は……。明日翔がそう思ったと同時に、ドサッという音がした。まさか……!
教壇の方を見ると、絵留が脇腹を抑え倒れていた。と、思ったら普通に起き上がった。
「痛っ…………やっぱ強いわ」
「先生! 大丈夫ですか!?」
すると絵留は穴の空いたワイシャツのボタンを開き始めた。何を見せるのと思ったら、
「ほら、この通り。私、お風呂以外はどこでも防弾チョッキ着てるから
」
色々とツッコミ所はあるが、まあ無事で良かった。
「私の負けだよ、三延。それじゃ、残りの時間を使ってアビリティチェックの結果を返すぞ」
絵留は一人ずつ名前を呼んで、結果の書かれた紙を渡した。明日翔が受け取った紙には、
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1-2-21 花束 明日翔
アビリティ Ability
:重力制御 GravityControl
ランク Lank
:78
────────────
と書いてあった。
「明日翔さん、どうでしたか?」
栞凛が聞いてきた。
「ランク……78だった。やっぱりもう少し練習しておけば良かったかな……
」
「凄いじゃないですか!この前目覚めたばかりなのに。」
「ちなみに、栞凛はどうだった?」
「それがなんと、私もランク78に上がったんですよ! 明日翔さんと一緒です!」
栞凛とはこれからも仲良くやっていけそう。明日翔はそんな気がした。
◆◆◆◆◆◆◆
家に帰ると、零愛が階段を駆け上がってきた。
「明日翔ちゃん! 場所が分かったわ!」
遂に六ノ瀬 希の居場所が分かったらしい。零愛は地下の研究室のモニターに写真を映して話を始めた。
「先に結論を言わせて貰うと、六ノ瀬 希がいたのは……『藍華中央病院』よ。」
藍華中央病院…………十環女子高等学校からビルとモノレールを挟んで直ぐのところにある病院のことだ。思ったよりも近かった。でも間にあるビルって……デザイン的に築20年は建ってそうだし、高さもある……。
「本当にそこからトワジョ見えたんですか? 間にビルが……」
「勿論、今はどの病室からも見えないわ。でもね、10年前は見えたのよ。そう、最上階の病室ならね」
「え、どういうことですか? それだと10年間でビルが伸びたってことに……」
「それが、伸びてるのよ。5年前に、リフォームのついでに2階分増築したらしいわ。他のどの病院からもトワジョは見えなかったから、多分ここが正解よ。今週末に行ってみましょうか」
また、六ノ瀬 希に少し近づけた。そういえば、何で病院に居たんだろう。怪我でもしていたのだろうか……そんなことを考えながら、明日翔は一層強く、彼女に会いたいと思うようになった。