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13.重力使いの本気

 次々と3年生達がアビリティチェックを終えていく。そして、1年生の番となった。周りには上級生達が、今年の新入先達がどんなアビリティを持っているかを知る為に、アビリティチェックを見ていた。


「もうすぐ……ですね」


「うん…………緊張するなぁ……。」


「そういえば……明日翔のこと、上の学年でちょっと話題になってるらしいですよ」


「え、何で……?」


「多分、私とアビリティを見せあってた時に見てた生徒から広がっちゃったのではないかと……」


 1年生が一人ずつ呼び出される。平等に行うため順番はランダムらしい。やはり同じアビリティを持つ1年生と3年生との違いは明らかだった。例えば火炎放射フレイムラディエーション。1年生は1mでも好成績なのに対し、3年生は軽く20mは届いてしまうのだ。1年生の半分程が終わった頃、栞凛が呼ばれた。


「それじゃあ、行ってきますね」


「栞凛ちゃん、頑張って!」


 でも、栞凛は違った。定位置に着くと、今度は大きなコンクリートブロックが運ばれてきた。果たして彼女の本気は何れ程なのか。栞凛は目を瞑り、エレメントの吸収に意識を集中させた。こうしてみると、やはり無属性の能力者の吸収効率の悪さが分かる。ミイも栞凛も最大限吸収するのに1分程かかっているのだ。エレメント溜め終わると、栞凛は右手の人差し指と中指の間に小さな鉄球を挟み、前に向けた。


「BANG!」


 その声と共に栞凛の放った弾丸はあの時よりも早かった……気がする。普通に音速を超えている為、鉄球は一瞬でコンクリートブロックに到達するのだ。舞い上がった砂が落ちると、コンクリートがバラバラに砕けているのが確認できた。弾丸は、粉々に散って行方不明。


「はぁ、疲れました…………」


「お疲れ様。やっぱ栞凛ちゃんは凄いなぁ……。ほら、3年生の人達ザワついてるし」


 そりゃまあ、こんなに大人しそうな女の子が音速超えの射撃をしたら驚かない人などいないと思うが……。


「そういえば、私のアビリティってどうやってチェックするんだろう」


「言われてみれば確かに……重力制御って別に破壊目的のものじゃないですからね。もしかしたら……色々な検査をするのでは?」


 そんな会話をしていると明日翔の番になった。すると先生が寄ってきて、


「花束さん、あなたのアビリティはあまり前例が無いので、幾つか検査を受けてもらいます」


 見事に栞凛の予想が的中。やっぱり前例……つまり六ノ瀬 希のデータしか存在しないということだ。複数の検査があっても仕方がない。


「それでは、初めにアレを浮かせてみて下さい」


 先生が指で差した先にあったのはコンクリートブロック……を吊るした重機!?


「え……まさか、アレごと持ち上げるんですか……?」


 先生は首を縦に振った。勿論、あんな大きな物を持ち上げたことなんてある訳がない。今まで持ち上げてきた物なんて、精々椅子とか机程度なのだ。


 こんな重いもの持ち上げられる訳…………明日翔は先日、零愛が言っていたことを思い出した。


「グラスとか机とか持ち上げてみて気づいたんですけど、私のアビリティ、必要な力って重さには依存してないですよね? どっちも同じ高さなら同じくらいの力で持ち上がるし……」


「うーん、詳しくは分からないけど、『範囲』と『強さ』で決まるんじゃないかな。明日翔ちゃんが直接物体を持ち上げてる訳じゃないし 」


 どんなに重いものでも無重力なら当然浮くのだ。つまり、重機でも何でも、浮かせるだけならそこまで難しいものではない。


 明日翔は両手を広げ、重機に向けた。時間が勿体ないと思った彼女は待っている間に、最大限エレメントを吸収しておいた。


「えいっ!」


 重機はゆっくりと地面を離れ、空中で揺れていた。大きい為か、バランスをとり辛い。重心が分かりにくいものを持ち上げるのがこんなにも難しいとは思ってもみなかった。3年生達の注目は明日翔に集まっていた。強い能力者に目をつけられなければいいが……。


 その後も、物体を高速落下させたり、出来るだけ静止させたり……。アビリティを使い続けた明日翔はグッタリだった。


「花束さん、大丈夫……ですか?」


「ダメ…………もう無理」


 すると向こうからミイが歩いてきて、


「明日翔ちゃん、見てたぞ。凄いじゃないか」


「いえ、ミイ先輩が練習に付き合ってくれたお陰ですよ」


「ただ確実に、学校内の敵が増えただろうな」


 この時明日翔はまだ、この言葉の真の意味を理解していなかった。

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