12.上位0.0005%の力
帰宅した明日翔は直ぐに零愛にメモを見せた。
「えっと、つまり……この条件を満たす場所を探せってこと?」
「はい、そうです!」
「トワジョなんて結構大きいし、モノレールなんて藍華市中を走ってる。一ヶ所には絞れなそうだけど……取り敢えずやってみるわ」
「よろしくお願いします」
零愛は早速、藍華市の3Dデータを元に解析を始めた。
◆◆◆◆◆◆◆
今日で、明日翔が十環女子高等学校に入学してから丁度2週間が経つ。それが何を意味するかお分かりだろうか。そう、トワジョでは新学期が始まってから2週間後に必ず全学年一斉アビリティチェックを行うのだ。
「(まあ、昨日ミイ先輩と練習したし…………大丈夫だよね……)」
アビリティチェックとは何なのか。簡単にいえば、『ランク』を計る為のテストだ。ランクとは、アビリティの強さを1~100の100段階で表したものだ。藍華市の能力者のランクの平均は約37程度。ランク90以上の能力者は現在7人しかいない。その一人がミイ。彼女はランク93でトワジョ最強、全能力者の内でも4番目なのだ。明日翔がそのことを知ったのはつい最近だった。
しかし、『アビリティの強さ』といっても、アビリティによって『何が強いのか』は異なる。破壊力、速度、範囲、効率等だ。また、感属性のアビリティに関しては正確さ等が求められる。
「花束さん、今日のアビリティチェック、目標ランクはどれくらいですか?」
栞凛が聞いてきた。
「うーん、平均いけばいいかなぁ……」
「あなたなら簡単に80前後は出ると思います。私でさえランク76ですし……」
一瞬、聞き間違いかと思ってしまった。ランク50以上だって人口の上位0.3%なのだ。70超えとなると、たったの0.02%。つまり、栞凛は相当な実力者ということになる。ちなみに80以上は0.005%、90以上は7人だから0.0005%となる。
「それでは皆さん、各自の指定されたアビリティチェック会場に移動来て下さい」
先生の指示に従って決められた会場に移動する。危険だったり、大きなスペースを必要とする能力者はグラウンドを使用する。例年、何が起きるか分からない為か、校内には重機だけでなく消防車や救急車まで来ている。
アビリティチェックは高3、高1、高2の順で、高2と高3は去年のランク順に行う。つまり、一番最初にチェックを受けるのは…………ミイだ。
グラウンドの中心には一辺が1m程の巨大な鉄のブロックが重機によって設置された。生徒達が見守る中、ミイは一人、前に出た。
「それでは、アビリティチェック始めます。ランク計測を開始しました」
その放送を確認したミイは意識を集中し、左手で目一杯エレメントを貯める。いつものお遊びではない。これは本気だ。ゆっくりと右手を上げ、親指と中指をくっつける。そして……パチン。一瞬にして鉄の塊は莫大なエネルギーへと変わる。発生した衝撃波は今までのものとは桁違いに強く、地面が大きく揺れるほどだった。グラウンドには砂塵が吹き荒れる。風圧に耐えきれず転んでしまう生徒もいた。砂嵐が収まり視界が戻ると、鉄の塊があった場所を中心に深さ1メートル以上、グラウンドが抉られていた。これが……ランク90超えの能力者の本気……。上位0.0005%の力なのだ。
「計測が終了しました。これでアビリティチェックは終わりです。お疲れ様でした」
終了の合図を聞いたミイはほっと一息ついた後、明日翔に気づいたのかこちらに歩いてきた。
「流石、トワジョ最強! ミイ先輩の本気、初めて見ましたよ」
「そりゃ、そうだよ。外でこんなことしたら危険すぎるし。唯一、手加減無しで能力が使えるのがアビリティチェックだからさ……」
横を見ると栞凛が固まっていた。
「は、花束さん……白雨先輩と知り合いだったんですか!?」
「知り合いも何も、一緒に住んでるんだけど…………」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? そんなこと初めて聞きましたよ!?」
「特に聞かれて無いし……って、そろそろ私達も準備しないと」
ミイが吹っ飛ばした分の土が埋め終わりアビリティチェックが再開していた頃、明日翔はミイに借りたネジで制御の練習をしていた。