プロローグ
俺が生まれる少し前。一際明るい光が世界に落っこちたという。光は、太平洋に浮かぶとある島に直撃し、島は塵となってこの星を覆った。そのせいで、地球に太陽の光が直接届くことは無くなり、世界は、いつもどんよりと暗くなった。落っこちてきた光はというと、塵になってしまった島に変って、新たな島として、太平洋に浮かんでいた。
これだけでも、人類の歴史の中で、とても重大な出来事なのに、その新しくできた島を調べてみると、さらに、驚くべき『もの』が発見された。
それは、黒が多く含まれた灰色の球体で、一見、岩のようにも見えるが、触れると暖かく、古びたゴムのような感触がしたという。そして、時々まるで呼吸をするかのように縮んでは膨らんだ。
縮んでは膨らみ……膨らんでは縮む……。
真っ先にその島を調査したアメリカは、それを生物だと判断した。宇宙から来た光、隕石に乗っていた生物……つまり、『宇宙人』と――。
その後、アメリカに回収された『宇宙人』がどこへ行ったのか、どうなったのかは、世界中のほとんどの人々が知らない。
それは、日本の平凡な家庭に住む俺にとっても同じことだった。