宿痾来たりて、夢終焱す。
その焔、誰も知らぬ。遙か天蓋に焔を知るもの有り也
「ここは寺であるか?」
男はそこに直立して言う。眼前には巨大な寺がある。寺とは分かっているのだが、神神しく思わず口から出た。柱の木を見る。幻想郷特有の木が使われている、外観もとても素晴らしい。掃除も行き届いている。男は髭を触りながら鑑賞に耽る。
「何の御用でしょうか?」
前の扉が開く。前から女性が出てくる、聖白蓮である。顔は少しだけ笑っているが、眼は怪訝そうな眼であった。これは気付いてるね、まああれだけ騒ぎを起こしたらね。男はそう思う。だがその前にしたい事が…ある…。男は小袋の中から何か出す。聖はそれを見る。それは線香である、男は線香に火をつけて手を合わせる。男は目を瞑り、少しの間祈りを捧げ、立ち上がる。冷たい風が吹いた。聖は男を見つめた。僧侶の様な格好をしている。烏帽子を被っていて、服は白い袴である。服には巨大な数珠が掛けられている。左手には錫杖が握られている。男は手を開く。そして、聖に線香を投げる。聖は躱す。
「僧、覚悟!」
男は叫び、聖に殴りかかる。聖はそれを手で払い、掌底を男の腹に打ち込む。男は少しよろめいて、後ろに下がる。口から少し血が出ている。
「我が名は、クローバー=ヴァルキリー。世界を正すもの也」
ヴァルキリーはそう言い、また聖に殴りかかる。聖は手で払おうとするが、ヴァルキリーに手を蹴られる。
聖から声が漏れる、その瞬間ヴァルキリーは聖の腹に拳を打ち込んだ。聖は寺の方へ吹き飛んでいった。
物凄い音を立てて物見櫓が倒れた。人間たちは逃げ惑っている、その光景を男は上から眺めていた。現在人里には二つの種類の人間がいる。一つは逃げ惑うもの、もう一つは前者に攻撃するもの。
「HAHAHA,面白いねぇ〜」
男は笑い、後ろを見る。後ろも前も人の悲鳴まみれだ、後者の人物も叫んでいる。「逃げろ」「助けてくれ」などなど、下らない。男はそう思い、糸を放つ。糸は逃げ惑う人間の背中に当たる。男は指を鳴らす、するとその人間の動きが止まる、そしてそのまま瓦礫に潰されていった。また悲鳴が増した。男は笑い、左を向く。左には見知らぬ何かが映っていた。男がそれを認識する前に、吹き飛ばされる。その何かが近付いてくる、男は糸を放つ。何かは躱して、男を殴り飛ばした。男は転がりながら飛んでいく。
「痛いじゃないの、上白沢慧音」
男はそう言い、嫌々立ち上がる。慧音は男を見つめる。男は腹を抑えている、本気で殴ったのだ恐らく何本か折れているだろう。男は口を拭いた。
「ひはっ、おもしろすな予感がするお」
男がそう言い、手をあわせる。慧音は男に近づく、その瞬間男は手をずらして糸を飛ばした。慧音の右手に当たる、その瞬間慧音の右手が折畳まれる。まるで新聞紙を折り畳むかのように。慧音は必死で右手を抑える、男は次の瞬間物凄い速度で上に飛び上がった。そして見えなくなった。高度が高すぎるのだ。慧音の右手はバキバキと音を立てながら死んでいく。慧音は手を抑えてうずくまる。慧音は必死に辺りを見回す。敵は居なかった。叫び声は依然聞こえる。
「手伝いましょうか?慧音先生」
後ろから森近霖之助の声がする。ええ、お願いするわ。慧音はそう言った。
「妹紅!」
魔理沙は迷いの竹林で妹紅を呼ぶ、だが声が帰ってこない。魔理沙は走って妹紅を捜索する。だが、妹紅の声は帰ってこない。何故、不死の妹紅が…何もしていないの?敵にやられるなんてないはず。魔理沙は考察する。そうこうしている内に前に妹紅が見えた。妹紅は座り込んでいた。声をかけても何の反応もない。魔理沙は妹紅を抱きかかえて揺さぶる。妹紅は呻き声を上げて、眼を少し開ける。
「早く…逃げろ…この森はヤバい…何かが…いる…」
妹紅は苦しそうにそう言う。そして何も喋らなくなった。魔理沙は脈を慌てて探る、だがよく分からない。
「どうなってるのよまったく…」
後ろから兎詐欺の声が聞こえる。因幡てゐ、永遠亭のう詐欺だ。てゐは何時になく慌てた口調であった。それも悪戯がばれたときのようなものでは無かった。まるで何かを怖れているかのような…。
「う詐欺、どうしたんだ?」
魔理沙はてゐに尋ねた。てゐは答えた、だかその答えはあまりにも信じがたいものであった。魔理沙はもう一度聞き返した。もしかしたら自分は疲れたのかもしれない、魔理沙はそう思った。だがてゐは–––––––––
「何回言わせるのよ…永遠亭が無いのよ」
先程と同じことを言った。
どんどん中2臭くなってる!うわ、ヤバッ!(棒)