花粉症
――くしゅんっ。
「あ゛ー……鼻水が……」
仕事から帰ったあたりから止まらない。
心なしかヒリヒリするので、鏡で確認してみると――
かみすぎで真っ赤になっていた。
「風邪とかじゃないと思うんだけどなぁ……」
そういうタイプの鼻水ではないし。
熱っぽくもないし。
咳はない。くしゃみが凄い。
というか、薄々感づいていた。
鼻水が出る。くしゃみが出る。
目が痒くて涙が出る。
……間違いない。花粉症だ。
「去年まではそんなに酷くなかったんだが――」
暖かくなったのは良いが、今度は花粉ときた。
スギ、ヒノキ、シラカバ。
この国は――
何かにつけて、人類に猛威を振るわないと気が済まないらしい。
丸めたティッシュを、ゴミ箱に向けて放り投げたところで――
――くしゅんっ!
自分のものではないくしゃみが聞こえてきた。
マンガンとアルカリが机の上に出てくる。
くしゃみをしていたのは――アルカリだろう。
今も鼻をすすっているので、一目瞭然だった。
……電池がくしゃみってなんだ?
鼻があるのは見れば分かるが――
鼻として機能している(?)ことに驚きだ。
「おー、アルカリ。お前も体調が悪そうだな」
「なんとかは風邪をひかないって聞いた事があるけど――」
そもそも、乾電池は冷暗所で保管推奨だろ。
温度が低いとパワーが落ちるとは聞くけども。
「失礼なことを――くしゅんっ!」
しかし、それとは様子が異なるようだった。
鼻水やら涙やら、自分以上に凄いことになっている。
「んん。なんだか気分悪い……くしゅんっ!」
くしゃみをする衝撃で、いろいろ飛び散っている。
「お、おい……。本当に大丈夫か?」
「あーあー。いろんな汁が……」
汁とか粉とか――
……って!
「お前! それ液漏れ起こしてんだろ!」
水酸化カリウム。強塩基。
放置してるとヤバい――!
急遽――
家中の電子機器を引っ張り出すことになった。
――――
押入れの中で眠っていた、乾電池式のデジカメ。
その中に入っていたうちの一本が、液漏れを起こしていた。
何年前に買ったのか分からないが――
きっとすぐに飽きてしまったのだろう。
なにかの行事がある時には、持って行った記憶もあるけど――
「最近はそういうこともめっきり少なくなったからな……」
何はともあれ、早期発見できたのはアルカリのお手柄だった。
たまには褒めてやろうと思ったが――
「アルカリって、お漏らし癖あるものねー」
「ちょっと!? その言い方やめてくれる!?」
マンガンにからかわれて、それどころでは無いようだった。