裏ワザ
冒頭に主人公が出てこないので、今回は三人称に。
……できてる?
とある日の夕方――
今日も机の上で、マンガンとアルカリは駄弁っていた。
「あのさ……さっきの事なんだけど……」
「ん? なになに?」
「ご主人がテレビを見てたわけよ」
『私はリモコンの中にいたから、声しか聞こえなかったんだけどね』と続ける。
「ほうほう」
「で、『家庭の裏ワザ!』ってタイトルの番組で、私たち電池の話をしてたんだけど――」
「へー。全国ネットで紹介だなんて、すごいことじゃん」
「その内容なんだけどね……」
途端に、声が小さくなるマンガン。
そこから、二人は頭を寄せ合い、声を潜め。
内緒話をする姿勢になった。
「ふんふん」
「元気のない私たちを――擦って無理やり元気にさせるらしいわ」
「……え? ……え!?」
アルカリの顔が真っ赤になる。
「あーあー、旧マンガンみたいに……」
「ど、どういうことなの、それって――」
もっとよく聞こうと、アルカリが迫るが――
廊下の方から足音がした。
「あ、帰ってきた」
「あー、寒い。廊下は別世界だよな。ダメージ床だよ、これもう」
『スリッパ買った方がいいよなぁ』と呟く主人に、
マンガンが大きな声で言う。
「なんだかー。アルカリが最近元気がないみたいなんだけどー」
「ちょっ!? 何言ってんの!?」
「大丈夫か? そういえば――丁度使えそうな裏ワザをテレビやってたんだよ。
ちょっと試してみるか」
「え、え、え!? いやいやいや、待って待って!」
手を前にだして、ブンブンと振るアルカリ。
顔はさっき以上に真っ赤になっていた。
対して、マンガンは期待に目を輝かせている。
「ちょっと待って! 心の準備が――」
「大丈夫だって、二十秒ぐらいでだいぶ復活するらしいから」
必死に抵抗するが、体の大きさが違い過ぎた。
ガッと、掴まれ、持ち上げられ――
そして――
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああぁぁぁぁ!!」
凄い速度でズボンに擦りつけられる。
太ももの部分に。
頭を。凸を。
「うわぁ……痛そう……」
「熱い熱い熱い! 摩擦熱が! 摩擦熱がぁぁぁ!」
「そりゃあ、この熱で化学反応を促進させてるらしいからな――」
二十秒後――
「……どう? 元気になった?」
「なるかぁ!!」
怒りに任せて飛び掛かるアルカリ。
マンガンがその両腕を受け止め、取っ組み合いのような状態に――
なったかと思いきや、凄い勢いで二人が飛び退いた。
「……どうした?」
…………
二人とも何も言わない。
手を振ったり、息を吹きかけている。
「あぁ――なるほど」
そんな二人を見て――
主人は理解したように頷いた。
「そりゃあ、ショートするよなぁ……」
R-15タグ付けてないけど大丈夫だよね?
それらしい表現? ないない。