たんいち!
「…………」
「やっぱりさぁ。時代が私たちに追いついてないっていうのかな。
『そんな狭い枠の中でやってられるか!』みたいな感じしない?」
「あーするする。私たちのポテンシャルを活かしきれてない、みたいな」
机の上で、マンガンとアルカリが駄弁っていた。
最近、まったく働こうとしない。
……反抗期が始まったのだろうか。
おのれ、電池風情が。
この謎の反抗期のおかげで――
我が家の電池を使った機器が、殆ど機能していなかった。
時計だとか、シェーバーはまぁ良しとしよう。
しかし、問題はリモコン類である。
テレビは、主電源を押せばいいだけなので大丈夫だが――
「エアコンが使えないのは痛いな……」
暖房をつけていないと、この時期はまだ寒い。特に朝が。
何とかやる気を出してもらわないと、非常に生活し辛い。
どうしたものかと、頭を悩ませていると――
「……ん?」
二人の外見が変わっていることに気が付いた。
なんというか――
「なぁ、お前ら……」
「……なんです?」
「残念ですけど、期待に沿えるような返事は――」
「最近太っt――」
「!!」
二人がビクリと肩を震わせる。
非常に分かりやすい。
「太って――」
「あー! あー! あー!」
「聞こえない聞こえない!」
しかも露骨に遮ってくる。
慌ててリモコンやヘッドホンの中に隠れようとする。
――が、上手く入れていない。
見ていると、可哀そうになってくる。
「太ったんだろお前らぁ!」
絶対にそうだ。
道理で懐中電灯だとか、ガスコンロだとか――
滅多に使わないものから出てくると思った。
「どうするんだよ! これだと作品のタイトルが変わるだろうが!」
「連載第二話にして!?」
「そうだよ!! というか、もうサブタイトルが変わってるぞ!」
…………
「……失礼な! まだ単二ぐらいだし!」
「やっぱり太ってんじゃねぇかあああぁぁぁぁぁぁ!」
しかも、一番使い道に困るやつだ。
まだ単一の方が使い勝手がいい。
「次回から! 『たんいち!』始まります!」
「ご期待ください!」
「始まるかぁ!」
それから数日間、寒さに震えるなかで。
全力でダイエットさせたのは言うまでもない。
単三から単二、単一になるから太ったって表現にしたけど……。
電池の膨張って普通にやばいよね。
電池は用法、用量を守って正しくお使いください。