70 大舞台
◯ 70 大舞台
精霊界に居を構えるというのは、アストリューの家が精霊界とアストリュー世界との両方を兼ねるという事だった。精霊界に行こうと思うとアストリュー世界から出るのを感じたし、アストリューに戻ろうと思えば戻った。
花の広場のゲート前はメレディーナさんが珍しく緊張した面持ちで待っている。
「緊張してるね」
「まあ、大丈夫よ〜」
レイは色鮮やかな衣装を着てメレディーナさんの隣にいる。メレディーナさんも何時もよりも豪華な衣装だし、全員が正式な衣装を着ている。
僕もアストリュー神官の衣装を着て、紫月と一緒に出迎えをしている。今日はこの出迎えが終ったら、そのままポースと一緒に明日の歓迎の席でのステージのリハーサルだ。
ウィルジュ神が僕達に一言話すまでが仕組まれているが、問題はない。
ゲートが光り出し、ウィルジスハーミー世界の管理神の正式訪問が実現した。メレディーナさんとレイが進みでて挨拶を交わした。イーサさんの合図で全員がアストリュー式の挨拶の礼を取った。
そのままメレディーナさんとウィルジュ神の会談が行われるはずの場所に向かった。歓迎会は後でとの事前の取り決めのもと、スケジュールが組まれてるので、スムーズに進んでいる。
「『妙扇風』の一番の大舞台ね〜?」
「燃えてきたぞーっ!!」
気合いを入れているらしいポースが、興奮した声を出している。
「ポース、いつも通りやれば気に入ってくれるよ。もう既に一回見てくれてるし」
「なんだ。そうなのか?」
「覚えてないの? ウィルジスハーミーでこないだライブがあった時、闇の魔導書がこんなに陽気だと調子が狂うって言ってた人だよ」
サキトさんからの又聞きだ。そのように言っていたと笑いながら言われたのだ。
「ああ、あいつか。まあまあだな。アッキと紫月のコンビの方が俺様を良く見せれるからな」
ポースはどうやらちゃんと覚えてないみたいだ。紫月はフィトォラと遊んでいる妖精達に、明日の歌の順番を話している。
「ありがとう。ポースもいるから僕達はここまで来れたんだよ」
「お互い様よ〜。さあ、リハーサルよ〜!」
皆を呼んで全力で楽しんだ。神殿から家に帰る途中にレイが合流し、マリーさんと話し始めた。
「歌う花畑は最終日の明後日に向かうんだって」
「タイトスケジュールよねぇ、ゆっくりして行けば良いのに〜」
「ゆっくりお忍びで来るって言ってたから、煩わしいのは早く終らせたいんじゃない?」
「成る程ね〜、それなら分かるわ」
僕達は神殿で疲れを取る為に、温泉に浸かってきたのでもう眠くて仕方なかった。ティートリュウムが妖精達を籠に入れて家まで運んでくれている。紫月も眠そうだけど頑張っている。そのままどうやって家に帰ったのか記憶がないけど、目が覚めると本番の日だった。
「気分は?」
皆に聞いた。
「最高だ!」
「好いよ」
「ばっちりよ〜」
アロア達は既にくるくると踊って元気一杯だ。
「じゃあ、行こうか」
光の中央広場でのステージ後、予定通りに声を掛けられた。
「楽しき歌声に佳き月の風であった。また会える事を望んでおるぞ」
紫月とポースを見てから、僕を見て微笑んだ。ウィルジュ神は元、精霊の長をやってただけあって輝くオーラが眩しい。姿も美麗だ。正式訪問だからか余り力を押さえてないのが分かる。
「お言葉を賜り嬉しく存じます。これより精進して参ります」
僕が代表でやり取りを交わし、予定は無事にこなす事が出来た。舌を噛まなくてよかった。何回も練習した甲斐があったよ。任務完了したので家に帰って緊張をほぐした。
この声がけで『妙扇風』はアストリュー以外でも名前が出るらしい。神魔具の扇子は異界を渡る許可が出やすくなって、レイの計画する癒しのツアーをやれるとウキウキしていた。
「まずはナリシニアデレートか、メラードノストか……迷うね?」
「メラードノストの妖精達に会いたいな」
朝からたっぷりの朝食を食べているレイが顔を上げた。
「それはプライベートで行かないとね?」
「立ち入りが難しいんだ。渡航の手続きが新人は降りないみたいで……まだ怒ってるのかな」
僕の情報に首を傾げている。
「星深零の不手際の後遺症だね? まだ撤回してなかったんだ。こっちも迷惑をかけたからね。もう一度聞いてみるよ。まだ管理神に面会を求める新人がいるなら罰も考えなくちゃ」
思い出した事件を上げて、眉間に皺をよせた。どうやら調べてくれる気になったみたいだった。
「本当? 妖精達にはお世話になったのに、お礼が出来てないから気になってたんだ」
「ちゃんと調べるよ」
「うん。待ってるね」




