51 要望
◯ 51 要望
「シュウ?」
「う、アキ」
一晩中続いた宴が終って片付けをしていたら、シュウ達が僕の前で立ち止まった。胸の辺りを見てどういっていいのか分からないみたいだ。
「これは変身する為の衣装だから、気にしないで? 脱いだら男だし」
着物の袖を見せながらそう言ったら、全員が納得していた。祐志ががっかりした顔をしていたので、触っても感触がないといったら、楽しみが無いと更にがっかりしていた。
「えっと、鮎川君って神様なの?」
西本さんが遠慮がちに聞いてきた。
「えーと、見習いだよ」
「じゃあ、まだ違うのか?」
祐志が確かめるように聞いてきた。
「そうだね。外では普通に精霊だよ」
「精霊……幽霊じゃないのか?」
「幽霊は卒業したんだ」
一応は精霊の長に仲間認定してもらったところだ。
「そうか。良く分からないけど、ここの住人の俺達からしたら神の一人であってるんだな?」
「只の見習いだから、これまで通りで御願いするよ」
「そ、そうか? いや助かるけど、どうしたら良いか俺達も分からなくて……」
急に変わっても困るよね。僕も困る。友達は友達のままでいて欲しいし、友達でいたい。
「うーんと、神樹の僕だからね、シュウ達は。今いる神界の神で一番長く、そして一番ここを思っている神の僕だから大変だと思うけど、僕も支えるからね?」
「分かったよ。同士ってことで手を打つよ」
にやりと笑ったシュウの顔はふてぶてしかった。が、成長の証とも言えると思う。僕の願いをちゃんと汲み取ってくれているし、シュウも同じ気持ちなんだと嬉しかった。
「神樹が見に来てたから俺達も関係あると言えばあるからな」
そう言いながら後片付けを始めた。
「それはどの方なのだ?」
隣で聞いていたルルさんがシュウに聞いた。神の名は鑑定では出ない仕様だと確かめれた気がする。
「あ、ルルさん。えーと金色に緑掛かった色の髪の女性ですよ」
「あの方が神樹様か。確かに神々しいお姿であらせられた。この世界を支えて下さっていると聞いているが、あのお方が……。それで光の神はその隣の方か?」
「えーと、レイの事? 確かに光だね……。神樹の事を手伝ってるよ。僕の師匠になるかな?」
「ほお。あの方が主神であらせられるか?」
「……質問の答えは拒否致します」
多分管理神を聞いていると思うが、それが僕だと知ったら怒りそうだ。黙っているのが身の為だ。レイは外でも色々やってるし、マシュさんもそうだ。手伝ってくれているけど、皆は他にも仕事がある。やっぱり外の神になる。
神樹であるアイリージュデットさんと、ガリルだけがここの専属と言っても良い。それで言うと神樹が中心だからアイリージュデットさんが主神なのかな?
「聞かずとも分かるわ。一番力を持っているように見えた。抑えてらしたようだが、溢れる気品は見逃せぬ程であった」
ルルさんがレイの姿を思っているのか、目を閉じて思い出しているみたいでうっとりしている。アイリージュデットさんも最盛期に近づいたらあんな感じだと思うけど。
まあ僕達はチームプレイだから、主神という言い方はちょっと合わないかな。それぞれが得意分野を頑張って支え合ってる。
「月夜神様を目の前にして無礼なるぞ! グラメール!」
ジャラリと身に付けた宝飾品の音を立てながら、ルルさんを避難する人がいた。
「えーと、ダークエルフさん?」
「族長のディ レージェシー ペソラシータともうします。ペソラシータ、もしくはシータとお呼び下さい、月夜神様」
ペソラシータさんが跪いて、恭しく頭を垂れて挨拶してくれた。
「あ、うん、ペソラシータさん。昨夜はありがとう。楽しかったです」
「おお。そう言って頂けるだけで至上の喜びであります。この地が闇の地である限りここに留まり繁栄を御手伝いさせて頂きます! どうか何なりと御申し付け下さい」
目に力が入って輝かしいくらいの笑顔で言われた。ダークエルフはやっぱり褐色の肌で胸は大きかった。踊りが得意なだけあって、色鮮やかで扇情的な衣装がこれまたよく似合った。銀色の髪はしなやかに背中を飾って腰の辺りまで到達して、エルフと同じとんがり耳も健在だがそこには沢山の耳飾りがされていた。
「芸術が好きなの? ダークエルフ達は」
「はい。歌と踊りに留まらず、彫刻や絵画などの造形に情熱を費やしてございます」
「へえ、美に関してはレ……光の神もうるさいからね。きっと喜ぶよ」
「なんだとっ! キポローム! もっと芸術班を充実させろ!」
僕の言葉に目を剥いてルルさんが叫んでいる。
「アキ、エルフも芸術には普通の生活に取り入れていてうるさいぞ? ダークエルフは無理に自分達の物だと言っているがそんな事はない」
焦っているルルさんの様子がおかしいが、笑いを堪えた。
「種類がちょっと違うだけだね。大丈夫だよ。割と何でも好きだよ。心に響く美に関しては視野は広いからね」
系統の違いだ。死神のファッションとマリーさんの作る服との差みたいなものだ。
「そうか。では我らにも挽回のチャンスはあるのだな?」
握りこぶしを作ってルルさんが不敵に笑っている。
「そ、そうだね」
ポースが全員を自分の中に呼び戻し始めた。その様子を見て、僕達を遠巻きに見ていた人々が腰を抜かさんばかりに驚いていた。出す時は見てないからそうなるのは分かる。
「な、なんと?!」
ペソラシータさんは口を大きく開けて固まった。
「あの方はポカレス様とお呼びした方が良いのか?」
ルルさんはポースの言葉を思い出してか聞いてきた。紀夜媛=ポースなのだろう。
「本人はファンなら呼び方はこだわらないよ。多分偉くなった気分を味わってみたいだけだよ」
「それは……なんなのだ?」
ルルさんは首を捻っていた。
「偉大なる魔導書のポカレス様の登場だ!!」
ポースが僕の場所に向かって飛んできた。
「起きたんだね?」
「すっかり朝だな」
途中から眠りこけてたポースは気分が良さそうだ。僕は眠くて仕方ない。チャーリーとクシュリーがポースの後ろに付いてきている。
「そろそろ戻りましょう。一晩中起きていては眠いでしょう」
「うん。徹夜なんて久しぶりだから眠いよ。帰ろうか」
欠伸を殺しながら答えた。ビクトゥームを呼んでポースと一緒に神界に戻って夜の宴を報告し、そのままアストリューの家まで向かってぐっすりと眠った。映像を置いてきたからみんな見てるかもしれない。
夢の中で妙に熱い信仰の念いのエネルギーを受け取ったけど、ダークエルフ達とエルフ達の精霊へのラブコールだった。ドワーフ達も少し混ざっていて、火と土の象徴する精霊を求める気持ちが入っていた。
アンデッド達に関しては純粋に月夜神への信仰心として受け止めれたと思う。歌と踊りが好きだとの認識ですっかりと芸術の神としても定着する様な気配がした。




