37 浸呪術
◯ 37 浸呪術
「それであの呪いは、周りに広がって行くタイプだから厄介なんだ。自分の分身を作ってはそれを広げ、周りの人間を汚染していく。時間的に早く解決してるから問題は低く見積もられているが、実際は……」
ナオトギの話で深刻な状態だったのが分かった。
「危険だな。時間経過で共鳴が深くなって、呪いを受けて動き回っている奴らが、同じ呪いを発動し易くなる。呪浸術だ」
ホングもその説明で何か思い出したらしい。
「ああ、禁術の一つだ。悪神の仲間探しにも使われる。抵抗出来ない者が自分と同じ闇を持つ……」
ナオトギが嫌悪を丸出しにしている。あれを弾くか、受けても抵抗出来れば動きは鈍いので、治療をすれば問題はないのだとか。
「詳しいね?」
「警備をやっているからな」
ビックリだ。
「魔王が治安維持!」
つい叫んでしまった。
「うるせえ。犯罪心理は一応調べてんだよ。遠慮無く叩ける相手がいるならそれにこしたことは無い。落ちるのを止めれるなら……止めてやりたいからな」
最後はぼそぼそと小声になったがしっかりと聞こえた。
「優しいね」
「ところで、今回の女性は気の強いのが揃ってたみたいだけど、恋愛関係は進んだのか?」
ちょっと恥ずかしがったみたいで、目を逸らされた。意外と繊細?
「ここまで極限だと吊り橋効果が怖いな」
「ここにいるなら、問題ないだろ?」
「……残っている女性の三人ともが、戦闘職希望で姉御肌。戦乙女だなんて何かあるのか?」
近寄るなオーラが漂った三人は、『スフォラー』を手に入れるかは保留だとかの話をしているのが聞こえる。戦闘の役に立つのかまだ分からない、との意見が男顔負けの詳しさで話されている。
その横をフィトラが愛嬌を振りまきながら歩いている。女性達はその可愛い尻尾を目で追っているので、案外モフモフ好きかもしれない。
「近寄れない……」
こそこそと話し合う僕達男四人は、悲しいかなへたれだった。他の二人の女性は全てカップルになっているのか相手と腕を組んでいたり、いちゃついている。残り三人の男は一塊で何やらエリクサーなどの伝説級の薬に付いて話し込んでいて、専門性が高くなっている。
「四、四、三、三で別れたか。このままだと、後の訓練は充実カップルと組まされるかもしれないぞ?」
ホングがそんな予測を立てた。
「それは避けたいな。あのいちゃつきを見せつけられたらイラッと来る」
ナオトギが勘弁してくれと言った顔で文句を口にした。
「商品開発組は戦闘職組と当たるとして、あのバカップルはどういう仲だ?」
「それを聞くの?」
呆れた。
「さすが勇者だな」
ホングが笑っている。
「アキ。聞いてこいよ」
ヴァリーに振られた。
「ええっ? 嫌だよ」
「冗談だ。あの間に入ろうなんて誰が考える? 蹴られて終わりだ」
ヴァリーが僕の反応を見て面白がっていた。
そんな話の途中で扉が開かれ、集合場所を言われた。二十分後に訓練が始まる。と告げられた。
「どうする?」
「回復を掛けておくよ。皆、疲れた顔してる」
「立ち直ったか?」
「有り難い」
「治療師か?」
「神官だよ」
「そうかアバウトな方か」
一人ずつ一分ぐらい掛けて魔法での治療回復をやった。
「ふう、痛かった筋肉が収まったぜ」
ナオトギは満足そうだ。
「靴擦れが治ったな」
ホングが足をチェックしていた。
「仕事を受けなかったのはそのせいか?」
「ああ。自分で多少は治療回復する手段がないとダメだな」
フィトォラを抱いて、僕は一番最後に扉をくぐった。




