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世界を繋ぐお仕事 〜縁切り結び編〜  作者: na-ho
たのしいきゃんぷ
30/203

28 激変

 ◯ 28 激変


 訓練をこのまま続け、最終的に『スフォラー』を無事にゲット出来たら罪に問わない、という契約をした四人は最初の態度を改め、なり振り構わずの体勢を取って教官を待っていた。あの騒動は彼女達にすれば事故だと思っているというか、そういう事にしたいんだろうとレイが言っていた。

 絶対に無理という訳でもないが、彼女達が『スフォラー』を捉えるのは難しいはずだ。腕輪からの繋がりで嫌われてたらその分だけ『スフォラー』の移動速度が速まるからだ。

 全員が質素に後ろに束ねただけの髪型になって気合いを現している。が、レイの思惑通りの新しいイケメン教官のジェッドさんが現れた瞬間に固まっていた。

 それで何で僕の方を見て睨んでいるのかが分からない。そりゃあイノシシ擬きの皮で作った紐と光のベールを元に作った髪飾りを付けて纏めているけど、それは僕の勝手だ。お門違いって言うんだぞ?


「ルシール教官が負傷したので、代わりを努めるジェッドだ。まだ四日目ということで、これまで習ったサバイバルの基礎が出来ているかを見て行く。では、朝食は全員で協同作業とする」


 爽やかな笑顔を振りまいて挨拶が終った。


「協同で、なのですか?」


 眉をひそめ、困惑した顔でキャスリーンが質問した。思いもよらなかったんだろうか? 素人の訓練がいきなり周りも敵みたいな考えでやる訳がない。全員で協力して進めることからで正解だと思う。

 他の四人も顔を見合わせて、自分達の認識がおかしかったのを確かめていた。

 そして、結局は僕が悪いと目配せと表情のみで示し合わせていた。睨みつけられたからそうだと思う。似た者同士だから通じ合うみたいな感じだろうか? 仲が良いと思う。

 多少のライバル意識はモチベーションに必須だと言うならやれば良いが、訓練の妨げになる程のことを持ち込むのは大人じゃないよ。自分の胸にそっと閉まっておくぐらいのことが出来なくてはダメだし、自身のコントロールが出来てこそサバイバル訓練の意味がある、はず……。


「二日目の最初の訓練はそのはずだったが、のけ者にしたり、足を引っ張り合ったりがあったせいでここのチームは出来なかったと報告が上がっている」


「そ、そうなんです。彼が私達を陥れようと、伝達事項をわざと教えなかったんです」


 ヴィクトリアが自分の言動を棚に上げて、必死な様子で被害者なんです、と涙を目に浮かべて訴えた。


「ええ、私達は本当にひどい目に会いました。損害賠償を求めるつもりです」


 メリールが悲しげに本当はこんな事したくないんですと、呟きながら教官に人を裁きに掛ける心苦しさをアピールしていた。


「彼のせいで必要な講習を受けれず、もう一度その講習をお金を払って受けさせられました」


 ウィルミナが俯いて訴えることになった内容を控えめに伝えた。大げさな演技よりは真実みが増すなあ、と変な感想を僕は持った。何か人ごとな気分だ。本当の起因が別なことを分かっているから何とも言えそうにないし、僕のせいにしたいんだと改めて思った。いや、彼女達からするとそう見えるんだと思う。認識の違いに面白さを感じる。


「そうか、大変だったな。だがこの後はそのようなことが起こらないように、関係改善をして大人らしく仲良く進めて行こう」


 未来を良くしようとイケメンスマイルで彼女達を諭している。


「はい。頑張りますわ」


 ヴィクトリアが答えて恥ずかしそうに俯きながら答えた。時々上目遣いにちらちらと見ている……。うん? あの人、誰?! 驚くよ?!


「彼が私達を陥れる様なことがないように、一度謝って誓ってもらい、それから仲直りをすれば良いと思うんです」


 ウィルミナが両手を合わせてそんな風に言った。ジェッド教官に取り入って謝らせることで溜飲を下げたいのだろう。イケメンになら愛想を振りまいても良いみたいで、教官を仲間に入れようとしているのは見ていれば分かる。


「そうかい? お互い水に流すということで良いんじゃないのかい? 君も彼には謝った方が良いことをしたと報告があるからね。怪我をさせたそうじゃないか」


 教官のソフトな指摘に、唇を噛んで俯いている。教官が視線を変えた隙に、思い切り睨まれたがそれも一瞬で消えた。ウィルミナさん、聖女じゃなくて悪女か般若ですよ、その顔は……。他の三人も似た顔を見せた。

 なんとか自分の中の感情をコントロールして、


「……僕はそれで良いです」


 と、答えた。彼女達の最後のサバイバルの苦労が、半端じゃないのを知っているので余裕だ。ジェッド教官が微妙に冷や汗をかいているのを可哀想だと思いつつ、朝食での自分の役割を考えて彼女達に告げた。


「そう、ジェッド教官が言うのでしたら仕方ないです。そういう事にしてあげても構いません」


「じゃあ、始めよう」


 ジュース用の果物を採ってきて六人分の飲み物を用意した。コップもグラスを用意して、食器も揃えておいた。


 最初の印象で弱く役に立たないと判断した僕という存在は、彼女達のストレスを押し付ける為の存在として認識したのだと思う。

 その役目を全うしないのは悪いとか言い、潰そうと躍起になり、ついには敵になっている。そして、敵になると悪い出来事を全て押し付けて仕舞える都合の良さを覚えて、際限なく悪に仕立て上げられている。

 悪者に仕立て上げる前に、ちゃんと向き合わないとならない。現実で、敵に回そうとしているのだから。

 まあ、難しいことは考えてないか……。ただ適当に自分を良く見せるのに必要な、ダシに使う為の人間を欲しただけだろう。そんな生き方をしているんだ、新しい場所でのボス争いが、出だしであったのもそのせいだろう。

 それが彼女達の首を絞めたのは痛いことだろうが、僕だって傷つくし、手を振り払わないと現実で退場させられてしまう。そろそろ大人の女性に成長してもらわないと周りが大迷惑だ。


 女性達と教官……イケメン教官を取り巻いた女性達は食べれる森の恵みを採取しに何処かへと行ったきり、中々帰ってこなかった。


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