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世界を繋ぐお仕事 〜縁切り結び編〜  作者: na-ho
たのしいきゃんぷ
22/203

20 お知らせ

 ◯ 20 お知らせ


 地面に書いた魔法陣のおかげで夜明け前に目が覚めた。寝てる間に魔結晶を作る為の物だけど、出来上がりと共に目覚まし機能を付けておいたのだ。

 六時間で出来る大きさを先に計っておいて、大きさに達したら目が覚めるという僕にしてはちょっと複雑な魔法陣だ。アストリューでこれを完成させるのに随分時間が掛かったが、このサバイバル訓練中はきっと役に立つはずだ。魔法で物質を作り出してミスリルの鎖をつけて魔結晶をペンダントにした。首に掛けて服の中に仕舞った。



「ちょっと、自分だけ食べ物を取ってきて、食べてるの? 無神経ね」


 ヴィクトリアが僕の朝食を見て目を剥いていた。さっき、ナイフで皮を剥いて綺麗な大きめの木の葉っぱに盛りつけたところだ。木の切り株に乗せて優雅な朝食を頂くべく果汁百%ジュースを作ろうとしていたら、皆が起きてきたのだ。


「そうよ。私達の分も取ってこないと。まったく、貴方って団体行動が分かってないのね?」


 キャスリーンがそれに乗って、僕を責めた。


「昨日は近寄るなと言ってたから起こせなかったんだよ。教官と一緒に朝のサバイバル講習を受けたからこれは僕の分だよ? それに採取は、ちゃんと自分でやらないと……」


 説明をしていたら、途中で不機嫌なヴィクトリアの声がさえぎった。さっきまでいた教官はもう何処かに行って見当たらない。ゆっくり朝食を食べていそうだ。


「何言ってるの。夜明け後に朝食って言ってたはずよ。訓練があるなんて聞いてないわ」


 いいや、言っていたはずだ。夜明け前に教官のテント前に集合だと。キャンプ初日だから交流会だと夜更かしした彼女達が悪い。


「あら、美味しいわね。フルーツたっぷりの朝食って健康的だわ」


 振り向いたら僕の切り分けたフルーツの半分が無くなっていた。朝食泥棒をしているウィルミナは悪びれもしていない。


「あ、僕の……」


「これはサバイバル訓練なのですもの横取りは当たり前よ。最も、私は貴方と違って親切だから、皆さんに分けて差し上げるわ」


 団体行動を強調したり、サバイバルだと言ったり仲間を大事にとコロコロと変わるが、気にしていない彼女達に呆れる。自分の都合に合わせてルール変更するのは常套手段だ。


「いい気味ね? これに懲りたら明日からは私達の分を用意しておくことね」


 メリールが当然のように澄まし顔で言った。


「そうしなさい、命令よ。私達の命令を聞けるなんて栄誉なことよ? しっかり働くと良いわ」


 ヴィクトリアが侮蔑の籠った笑みを向けているのが見えた。


「お断りします」


 教官にはサバイバル移動の為の訓練を兼ねているから、自分達で起きて用意しないとダメだと言われているし、僕の朝食を台無しにするなんて許さないからっ! 協力してやるはずだった今日の訓練をすっぽかしたのは彼女達だ。普通に集合場所に行って時間後も十五分程待ったのだ。それ以上は無駄だからと僕一人だけど、講習が始まった。


「喧嘩を売っているの? 良い度胸ね、後悔させてあげるわ」


「男は女の為にあるってことを分からせてあげるから」


「女性に跪いて奉仕するのが紳士というものよ。教育されてない野蛮人はこれだから嫌なのよ」


 口々に勝手気ままを吐き続けながら、彼女達は僕の朝食を分けて食べていた。

 僕はテントから離れて作りかけのジュースと、可哀想だから少しだけ彼女達に渡すはずだったフルーツを改めて綺麗に剥いて食べ、次の訓練場所に向かった。勿論、彼女達には言う必要を感じなかったので放置してきた。泥棒に情けは無用と知ったから良いはずだ。

 彼女達はテント内で話し合っている。呼び出しがあると思っているのだろうか? 情報を僕が握っていると何故思わなかったのか、教官と訓練したと言っていたのに関わらずだ。


「他のメンバーは?」


「置いてきました」


 敢えて置いてきた発言に、怪訝そうに眉をひそめた美人教官のルシールさんは少し考え込んだ。なにげにここのグループの美人度は高い。自分が浮いていないか気になる……。


「……何故?」


 僕の不機嫌顔を見つめながら、理由を聞いてくれたので答えた。


「僕の朝食を盗んでサバイバルだと宣ったので、情報を与えるのを止めました。サバイバルというのなら、僕から情報を引き出さなくてはならないことに気が付くべきです。僕に明日からの朝食を用意させようと画策するよりは大事なことのはずです」


 さすがの彼女達も、僕に聞かないと教官の場所にたどり着けないことまでには頭が回らなかったようだ。ルシール教官は長い溜息を吐いて、困っていた。今日の訓練内容が自分達で食料を調達する為のものだからだ。朝は食べれる草やフルーツ、きのこや薬草にハーブその他の知識を教わるものだった。

 そして昼までにタンパク源である肉の調達だ。狩りをし、獲物の解体と素材の活用の説明を受ける。


「初日で彼女達は、この野営と戦闘の訓練を終える為の重要な講習を二つも抜かしている。君は良心は痛まないのかい?」


 苦笑いして聞かれたが、追加講習を受ければ良いのだ。自腹だけど!


「僕の朝食を四人掛かりで奪って、自分の面倒を見ろと命令するのは犯罪だと思います。それに、彼女達は優秀だと言っていたのでなんとかするでしょう」


 苦笑いをしてからルシール教官はゆっくり頷いた。


「……確かに。彼女達は君に教えを請うべきだったな。助けを求めるというべきか? 最初から高飛車な人物がいたせいで全員があのモードだ」


 全員が僕に助けを求めるのはプライドが許さないだろうから、それは無いと思う。高飛車なのは分かる気がする。庶民な僕を見下したいみたいだしね。

 優越感に酔っていたい気持ちは何となく分からないでも無いが、歪んだ想いの上下関係なんて薄ら寒いだけだ。

 彼女達は客観的に見て、恥ずかしい心理状態だと個人的に思う。この考えや思い込みが今の自分を作っているんだとは思うけど、今のところは変えようとは思わないので、このスタイルが好きなのだろうと僕自身を分析している。

 要は明確にルールのある教官と訓練生という関係性の方が分かり易くていい。僕は問い、教えを受けるのみだ。


「教官。右上空二十メートル先に三十センチ程の生命反応がこちらに移動中です」


「鳥か?」


「妖精です」


「……それは食べれないな。だが、何故この森に現れているんだ?」


 妖精達の姿を確認して教官は首を傾げた。


「多分あれを求めているのではないかと……」


 僕は五メートルちょっと先の魔力の高い植物を指さした。ほんのり光を放っている葉が見えた。妖精達の手に似た葉が握られている。植物に関しては違いが随分分かるようになっているし、あれは目立つ。


「成る程、これは珍しい。この辺りに芽が出るなんて……これを集めにきているのか。それなら分かる」


 これを好んで集めて、魔法生物を育てるらしい。共生関係にあるので今はその準備期間だそうだ。


「今朝、今年は温暖な気候が続いたから、植物の成長が良いと言ってましたね」


「うむ、ここまでこの植物の分布が広がっているから出てきているんだな。訓練場所を変えた方が良いかもしれない」


 そう言って教官は待機している運営本部キャンプに連絡を入れた。暫くしてからそのままここでの続行が決まったと伝えられた。ついでにそれを調べるようにブレンダナード世界の神から追加依頼が来た。


「聖域の管理者なら妖精の動きを追ってもらえるだろうだってさ。戦闘訓練は今日は彼女達もいないし中止だ。これから夜に入るまでにこの辺りの森を調べて行く」


 何やら取引があったに違いない。適任者が現場にいるなら使えって感じかな? うちの組合らしくて苦笑いが出る。


「了解」


 という訳で、訓練は一旦中断された。地図を見ながら植物の関係と妖精達の動きをまとめて教官と一緒に報告した。感謝とお礼が訓練後に届くと言われた。

 緊急依頼をこなしたので夕食を作る暇がなかった。なので運営が用意してくれた夕食が、昨日の集合場所だった運営本部にあるのでそこで教官と一緒に食べてから、ピンクの紙を引いた四人が放置され、不貞腐れて過ごしているテント場所に戻った。


「運営に抗議を致しましたわ。どういった理由で私達を放置しているのか、訓練を受けさせないでいるのかを徹底的に追及させてもらうから、覚悟をすると良いでしょう」


 ヴィクトリアがルシール教官に食って掛かっている。が、ルシール教官は涼しい顔で、寝坊したせいで訓練をすっぽかし、唯一訓練をこなした者から次の訓練の情報を引き出さなかったのが悪いと説明していた。

 そして自分のしたことを棚に上げて、運営に文句をつけるばかりの四人は既に降格処分が決まっていると、彼女達に取っては悲しいお知らせを笑顔で伝えていた。


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