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世界を繋ぐお仕事 〜縁切り結び編〜  作者: na-ho
たのしいきゃんぷ
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19 距離感

 ◯ 19 距離感


 仁科教官が戻って来て、夕暮れの時間の中、近くの森の中に入って携帯食料を渡された。その携帯食料を食べている間に説明してくれた。僕はこの中で一番とろくて戦闘に向いていないらしい。地味に傷つく結果だ。


「君には護身術というよりは索敵、危険察知を磨く訓練をしてもらう。気配察知は出来ているし、悪意も判別出来る。人物の気配を読み取れるから大体の気分も察知出来ているし、対面していれば微表情の読みも入れて相手の心理も分かるようだ。それを伸ばして行こう。距離が離れても殺気なんかを感知出来れば、君の運動神経でも対応出来るはずだ」


「……分かりました」


 つまり、あの四人に追い掛けられるらしい。想像するだけで恐ろしい。女の子達に追い掛けられるなんてある意味美味しい役所のはずなのに、何故かものすごく胃が痛いし楽しくない。しかし、それに負けずに捕まらないように逃げるのが今回の訓練だ。

 戦闘訓練中は闇のベールや世界に繋がって使う力を禁じられた。サバイバルでは使っていいけど、追いかけっこには制限がないと訓練にはならない。魔法使用のみの行動を言い渡された。これはかなり厳しそうだ。

 まあまずは、二人に追い掛けられることになる。最初から全員に追い掛けられるのでもないので、ホッとした。というかこれ、トラウマになりそうだ。


 シャワーなどの施設は無く、自力で生活する形だ。さすがに食料は初日なので配布されたが、この六日間は訓練中に食料を調達しつつ、サバイバルの基礎を叩き込まれる。そして、戦闘訓練もやる……。日の出前には起きないとならないので夜更かしは厳禁だ。時計も無いし、無い無い尽くしだ。

 テントの他に渡されたのは着替えと小さなリュックとナイフだけだ。後の自分の荷物は持ち込めない。美容ドリンクもパックも取られてしまった。ここにいる間に自力で便利グッズを作るのは問題ないので、サバイバル用になんとか事前に考えた方法を取る事にした。

 本格サバイバルが始まる前に準備を整えることにする。


「このテントを組み立てるのね?」


 各自、自分でテントを組み立てることになっている。最初の期間中はそこに自分の持ち物を置いておくのだ。指定された場所の半径五十メートル以内の好きな場所にテントを組み立てる。小さな三角テントが出来た。


「ちょっと、近すぎるわ。レディーにはもっと遠慮するべきよ」


 編み込み髪の女王様なメリールが、不機嫌にテントを張り終えたばかりの場所に態々来て文句を言いにきた。心の中では、最早全員に敬称付けは出来そうにない。


「え、でも三メートル以上離れてるし、結界を張れば……」


「最低でも十メートルは離しなさい。男がこんな近くに寝るなんて変な噂が出たら困るじゃないの。嫁入り前なのよ?」


 苛ついた感情を僕に向けて飛ばしてくるが、言いがかりも良いところだ。


「そんな。なら最初から別の場所に張れば良かったじゃないか」


 どう聞いても彼女の言い分はおかしいし、ただの意地悪だ。先にテントを張り始めたのが僕なのだから。移動しろと言うのなら自身が動かないとおかしい。しかも、しなさいって……何で命令?


「女の私にそんな重労働をもう一度やれって言うの?! 男じゃないわ」


「どうしたの?」


 そこに策士で聖女のツインお団子のウィルミナと、悪役令嬢で縦ロールなヴィクトリアがやってきて親切そうな顔でメリールに話し掛けた。僕はこの二人が一番苦手だ。メリールがテントの場所についてあれこれ言っている。


「まあ。酷いわね」


「そうなのよ。この木の下なら問題ないと思ったのだけど、この方がいるせいで安眠出来そうにないのよ」


「キャンプの運営陣はどうして間違いを認めないのかしら? あんなに進言したのにこの男がここにいるのはおかしいわ」


「貴方、早くこの訓練を自主的に解約しなさいよ。私達が迷惑なの」


「ヴィクトリアさん、貴方の物言いは直接過ぎるわ。それでは貴方が責任を問われるわよ? 言い方を変えた方が良いわ。忠告よ」


 ヴィクトリアが無茶苦茶な要求を突きつけてきた。その横でウィルミナが諌めているが僕を擁護している発言ではない。

 彼女達の間には何やらライバル意識が見え隠れしている。僕という異物をどう排除しえるかの手腕を競いつつ、覇権を争っているように見える。それも楽しそうに……。僕の良く分からない女性ならではの世界が広がっている。

 それよりも、僕をないがしろにしたらエリート、セレブと勇者、主人公な二人を紹介するのは無くなるんだからね?! と心の中で叫んだ。

 口にしたら虚しいので大人しく場所を移動することにした。まあ、彼女達を紹介するなんてホング達も迷惑だろう。

 退いた後は案の定、まだテントを組み立ててなかったウィルミナが、僕の見つけた良い場所を占領し始めた。運営に文句を付けるのに必死で、テントをまだ張ってなかったのだ。

 彼女達が配布されたテントを立てている間に、僕は木の陰に隠れて闇のベールで即席のテントを一秒で作り、その中で明日からの準備に備えた。時間が惜しいので力を有効活用するのが良い。


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