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世界を繋ぐお仕事 〜縁切り結び編〜  作者: na-ho
たのしいきゃんぷ
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18 診断

 ◯ 18 診断


「…………」


 体力測定に性格テスト、これまでの仕事の内容に軽い質疑応答があって、更にこれまでの組合の僕の情報を入れて何やら分析してくれた。そして、その場で結果を貰った。

 が、このアイドル、姫タイプってなんだ?! 何か突っ込みたいけど、墓穴を掘りそうで突っ込めない。適性タイプの結果を見てかなり動揺している。いや、もしかしたらヒーロー、王子タイプもあるかもしれない。


「勇者、主人公タイプってなんだ?」


 隣でヴァリーが首を傾げた。


「その他、モブって?」


「俺、引き立て、サポーター」


 後ろから声がしたら、そんなタイプがあると分かった。


「エリート、セレブ?」


 ホングがヴァリーの横で困惑顔で呟いている。あちこちで上がる声を聞いて自分だけが変な役割ではないことにホッとした。……マリーさんだろうか、この仕分けの変なネーミングは。


「悪役令嬢って何よ!! 失礼しちゃうわ!」


 斜め前の縦ロールの女の子が叫んでいる。


「俺は魔王だぞ?! どうなってるんだ。お前のは? ……当て馬? ぷっはは!」


「返せよっ!」


「俺様の役に立てよ!?」


「各自渡された紙の色のキャンプ地に移動だ! そこで六日間の訓練を開始する! 異動後は明日に備えて食事し、その後は就寝とする。以上、解散!」


 仁科教官が叫んでいる。ザワザワと人の声が重なった周りの声は収まらずに続いている。


「全員別れたか。まあ良い。キャンプが終ってから報告し合おう、じゃあな」


 赤い紙を持ったヴァリーがすぐに行動に移っている。


「うん。気をつけて、じゃあまた」


 二人に声を掛けてピンクの紙を握りしめた。


「暴走するなよ、冷静にな? じゃあな」


 緑の紙のホングは主にヴァリーに釘を刺してから移動し始めた。僕は移動無しでこの場所だった。何故か斜め前にいた縦ロールの人もピンクの紙だ。


「ピンクの紙を持った者は五人か。二人組にすると一人溢れるな」


 仁科教官は細眉を寄せて眉間に皺を寄せた。少し待っていろと言って別の部屋に入って行った。


「男が一人紛れてるから溢れるのは貴方よ」


 縦ロールの女の子が指をさして僕を睨んだ。


「男性の方とは、体力が違ってくるので、他所に変わった方が良いのではありませんか?」


 トイプードルな獣人族の犬耳にリボンを飾った女の子も、もっともそうな意見を出してはいるが、口元が歪んでいるので笑いを堪えているみたいだ。


「男の娘という感じでもなさそうだし、中性的という感じでもないわ」


 声に振り返れば清楚系のブルーの髪を編み込みこんだ美少女が、迷惑そうな表情を無理に作っている。隠そうとしている本心が含み笑いになっているのが分かる。折角の美少女顔が歪んで残念なことになっている顔をこっちに向けて、僕を上から下まで品定めしていた。


「気持ち悪いよね?」


 金茶の髪の縦ロールの女の子がそれに同調したようで、僕に聞こえるようにわざと大きめの声であざけるように言った。


「分かるわ。あのタイプは腹黒いから気をつけた方が良いわよ?」


 清楚系の色彩のブルーの編み込み髪の美少女と、気が合ったと言わんばかりに手を取り合っている。


「そうよ。見て? あの汚い黒い色の髪。暗い性格に決まってるわ」


 茶色い髪がウエーブになっているトイプードルな女の子が更に意見を合わせた。何となくこれでパワーバランスが生まれたのを僕は悟った。


「皆さん、あからさまにのけ者にするのは良くないわ」


 ピンクの髪を二つにまとめた髪型のおとなしめの女の子が、たれ目がちの目を細めて微笑みながら言った。何故か背筋に鳥肌が立った。


「あら、貴方が彼と組めば? 私達は三人で組めば良いでしょ?」


「そうではなくて、運営に彼の相手を見つけてくれるように頼めば解決すると言ってるのよ」


 方眉を上げてそんなことも分からないのかと目で牽制している。


「あら。それはもっともな意見だわ。この事態は彼らの責任ですもの、しっかりしてもらわないと困るわ。出来れば、こんなみすぼらしい人間とは食事もご一緒したくないくらいよ?」


 縦ロールの女の子は一瞬だけ嫌悪の表情を浮かべたが、それを抑えてピンクのツインお団子の女の子の意見に乗った。ついでに最初の発言を取り消さなければならなかった状況の鬱憤を晴らすように、僕を貶める発言を付け加えた。それで溜飲を下げているのだろうか? ただの八つ当たりにしか思えない。


「そう表立って、というか直接に言うのは良くないわ。彼には力仕事を任せれば良いのよ。使い方よ」


 ちらりとこっちを見て言うピンクのツインお団子の女の子の目は、しっかりと見下しているのが分かった。ああ、空気は読めても対応が出来そうにない。僕には無理だ。もう帰ろうかな……。


「ふん、まあ良いわ。そこそこ使えそうだし、仲間に入れてあげる(・・・)


 イントネーションで陣営に入れてあげることを強調した縦ロールの女の子の台詞は、ボスは私だと言っているように聞こえた。


「ふふ。ありがとう。わたしはウィルミナよ。優等生、聖女タイプだったわ」


 余裕の微笑みで、それを流したピンクのツインお団子の女の子が自己紹介した。


「私はヴィクトリア。貴族、令嬢タイプよ」


 縦ロールの女性が大きめの胸を張ってそう言いのけたが、悪役が抜けているのは気のせいじゃ無いよね? 


「あたくしはメリール。淑女、女王タイプよ」


 ブルーの髪の編み込み美少女が余裕の微笑みで威厳たっぷりに言った。タイプの女王というのに力が入った気がする。


「私はキャスリーンよ。タイプは起業家、才女だったわ」


 犬耳に飾ったリボンを揺らして不敵に微笑んだ。

 彼女達が妙な団結力を見せているこの状況は、一人を生け贄に仲間意識を取りつつ誰がこのメンバーの上に立つのかという戦いがあったのだ、と今更ながら理解した。ある程度終ってから気が付いてるようじゃ遅い。出だしで決まるのか、こういうのは……。勉強したが付いていけないのは明らかだ。

 ただなんとなく、この四人で牽制し合ってこのキャンプを過ごすのだとだけは理解した。これ以上、とばっちりが来ませんように、と僕は真剣に窓から見える曇り空の向こうにあるはずの夜空の星に祈った。


役者は揃った!?

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