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世界を繋ぐお仕事 〜縁切り結び編〜  作者: na-ho
たのしいきゃんぷ
18/203

16 友情

 たのしいきゃんぴんぐ

 ◯ 16 友情


「……と言う訳で、二人には新しい機能を入れたアシスタントタイプの『スフォラー』の期間限定モニターをやってみたい、と思うなら参加をして欲しいんだけど?」


 ヴァリーとホングにアストリューのビーチで、一昨日会議室で話し合った新人の戦闘訓練の参加を聞いてみた。黄昏のビーチは空のグラデーションが綺麗だ。


「人間同士みたいに相性があるのか?」


 トロピカルジュースを飲みながら、真面目な話を続けた。


「そうだね。ベースが今までのモニターの『スフォラー』から取ったものがベースだから、サポートをする知能的なところはかなり進歩しているし、合わせてはくれるよ? でも、扱いが雑だったりなおざりにされてしまうと感情もあるし、本人に合わせて育ってるから性格やら人格に難が出てしまうと難しいかな」


 マシュさんの説明を思い出しつつ二人に伝えた。インテリジェンスアイテムとしての『スフォラー』のテストモニターだ。


「感情は無いと困るのか?」


「それを理解しないと命令の善し悪しを判断出来ない場合が多いし、何処までサポートするのかとか持ち主の気持ちの部分も汲み取るからね。細やかな配慮が出来るには必要なんだって」


 今までのモニター達の調査で性格の違いで、仕事の効率が上がったり下がったりの資料が揃っている。無駄に態度が威圧的な人は得に『スフォラー』がストライキを起こす程、持ち主は嫌われるらしい。事実上の返品になる。というか自分で返品にしろというらしい。最悪は逃げ帰ってくるとか……。

 出戻り機能付きなのは、今までには無い斬新さだと思う。というか、狂ってしまうよりは拒否をしてもらった方がこっちも楽なのだとか。僕は余り意識してなかったけど、インテリジェンスアイテムらしい取り扱いの注意があるらしい。

 相性テストにお試し期間まであるが、道具として必要な人はそんな機能を付けたがらないみたいだ。スフォラがこれだけ感情豊かに、そして持ち主の命令だけじゃなくて、ちゃんと周囲の状況を判断して対応出来るというのはアピールポイントになるらしく、そういった研究も今回の訓練でもう少しデータを取りたいらしい。ついでに売込みもやる。


「秘書を雇うくらいの性能だとは聞いているが、聞いているとその通りな気がするな。僕としては嬉しいけど、良いのか?」


 条件としては、戦闘訓練の期間はデータを取らせてもらう代わりに、訓練の費用が半額になり、相性がいいなら『スフォラー』も割引になる。


「うん。戦闘訓練を受けに行こうか迷ってるって聞いたから、声を掛けてみたんだけど?」


「ああ。多少の護身術は習得した方が金銭的にも良い仕事が取れるし、治安の良い場所ばかりを動いていてもつまらん。魔物を扱ってる世界も動けた方が幅が出る」


 興味を持った表情のヴァリーは行く事を決めたみたいで、彼らしい考え方を口に出していた。自分の魔結晶をはめ込んだ銀色の腕輪をきらりと光らせながら、手に持ったグラスを傾けてジュースを飲み干している。うーんなんか余裕だ。


「ヴァリーは仕事柄必要は出てくるね。バーバダラスでもキメラに襲われたしね」


 僕はしみじみとあの時のことを思い出していた。あのレベルは討伐するとかはちょっと難しいけど。


「僕も立場上、護身術は覚えた方が良いんだ。逆恨みとかないとは言えないからね」


 コーヒーを片手に言う内容は、ホングの方はこれからの仕事内容に関することだった。見習いとはいえ真偽官の仕事を補佐とはいえやっているし、あの区画は犯罪者とは切っても切れない場所だ。多少の心得はあった方が良いと推奨されているんだろう。


「そっか、そんなのにも気をつけないとダメなんだ」


 僕は死神として訓練はしてるけど、スフォラに頼りっぱなしだから、自力を上げた方が皆の足を引っ張らないかと……。


「まあ、ヴァリーとアキに付き合ってたら、多少は必要だとハラを括るしかない」


 ホングは大げさに手を挙げて仕方ないと言った表情を作っている。まあ確かに、ね。戦闘訓練は三人で受けることにした。管理組合員の訓練は受けておいた方が評価に影響があるのでついでにいく事にした。『スフォラー』無しの訓練とかやったこと無いけど大丈夫かな?


「死神の見習い様の実力が分かるな?」


「そうだな。お手並み拝見だ」


「え? だから僕は神官だって言ってるんだけど」


 二人のニヤついた顔を見ながら反論したが、余り聞いて貰えなかった。日が沈んで二人はそのまま海の見える宿に泊まって行くことになった。僕はアストリューの家に帰って明日の温泉街の夏祭りの準備だ。

 夕方には『妙旋風』のステージもあるし、午前中にはリハーサルもやらないとならない。ホングとヴァリーも明日はこっちに合流予定だ。宙翔の温泉宿も勧めたけど、海の方が良かったらしい。


 長い間ガリェンツリー世界にかかり切りだったせいで、向こうとは季節も変わってしまっているが、そこは問題なかった。自分で出来る範囲で管理していれば大丈夫だ。

 レイみたいに自身の存在が三つもあっても大丈夫とかは、僕には無理だし理解出来ないけど、そんな力もあるということは知っておくと良いみたいだ。その内自分にも出来るかもしれないしね。


 次の日、しっかりと舞台の上で歌って踊った。しかし、ヴァリー達がこっちに来ていないのは、何か手違いでもあったんだろうか? 心配だ。せめて連絡をくれてもいいと思うんだけど、メッセージは返ってこない。

 夜の学生達の悪魔退治の舞台を見つつスフォラと心配していたら、メッセージがやっと来た。どうやら二人で女の子とデートをしていたらしい。確かに可愛い娘とビーチで楽しんでいる映像が貼付けられている。

 男の友情なんてこんなものなのかもしれないと悲しかったが、こっちも負けずに雨森姉妹と宙翔のお姉さんの美寿さんとその友達とで並んだ浴衣姿の写真を送っておいた。対抗はしたけどやっぱり大人げなかったかな? 


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