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160 報酬

 ◯ 160 報酬


 翌々日には、池での水浴びは口をつぐむ様にメールが届いた。ついでに少し色もつけて残りの金額が送られてきた。これでしばらくは大丈夫だ。助かった。


「アキちゃん、成功おめでとう〜」


 お金が振り込まれたのを言うと、マリーさんが嬉しそうにしている。これは皆に早速分配だ。


「マリーさんのデザインが良かったんだよ。黒鳥のボートが気に入ってたよ?」


「本当〜? 嬉しいわ。でも、ナザレの庭の助言が一番の功績ね〜」


「そうだね。お礼に妖精のお酒を持ってポースが遊びに行ったよ」


「ポースも子供達と遊んで楽しんでるし、あそこはお酒好きだから調度いいわね〜」


 また宴会が始まりそうな予感はする。翌週には中年貴族の紹介で何処かのお屋敷に招かれ、ゲスト用の部屋の改装を注文された。飽きのこない造りでと言われたが、どうしたもんだろう? 女主人の移り気な様子から無理な気がした。マリーさんには恐る恐る注文を送ってみた。


「完璧な美に飽きはこないわ〜」


 と、何か対抗意識を燃やし、ナリミルさんと徹夜で考えていた。デザインを一つ送ってみたら、時間がないから早く取りかかってと返事が来た。

 まあ、今回は僕は余り技術は要らない。シンプルに、しかし、マリーさん達の仕掛けが仕込める様に下準備だ。内装というか、インテリアで変更する形が良いのだ。

 壁紙を貼る様に幻の壁を取り替えては楽しめる工夫満載だ。その仕掛けの装置で魔法陣を仕込んだ魔結晶の交換で壁の仕様が変わる。つまり飽きたら、魔結晶を買い替えるのだ。それだけで変わる。うちもまた儲かる。飽きる、変える、儲かる。素晴らしい。完璧な美だ。勿論、絨毯にカーテン、ソファー、家具類も売りつける。更に下取りまで準備万端だっ!

 何処かのセールストークを思い出しながら説明をし、家具類から小物まで配置して完了だ。


「お客が帰った後でリビングもこの仕様にしてくれる?」


「はい。勿論です」


 女主人は甚く気に入ったらしい。工事が終ってニッコリ微笑む僕達がいた。予算が余ったからリビングも頼めると嬉しそうだった。次の確約も出来たし、克実ブランドとは長く付き合ってくれそうだ。


「取り敢えずは順調ね〜」


 家に帰ったらマリーさんがカフェの仕込みをやっていた。僕もお手伝いを始める。


「みかんの町ではどうなの?」


「当然、注目よ〜。ヘッジスも来てたわよ?」


「あ、採用されたんだ?」


「アキちゃんの紹介なら断るのは無いわ〜。彼、月の浄化が強いのよ。大量に浄化して行ってくれて大助かりよ? 光は苦手そうだけど、使えてるし、ほんの少し特訓すれば大丈夫よ〜。直ぐに安定するわ」


「やっぱりそうなんだ。普段は救護係をやっているし、休暇のときはナリミルさんに怒られてばっかりだけど……最近は出番が増えてるし、蓄えが無いとかはなさそうなんだけど」


「どうも彼は食道楽ね。美味しい物には目がないのよ。それもお酒! 大量に飲むんじゃないけど、味を確かめてしっかりと飲んでるわね。それにはお金は糸目をつけないのよ〜。あたしの布への情熱に近いわね」


 マリーさんが笑っている。同族の臭いがすると。


「何か分かった気がする」


 最近は『みかんなバー』に通っているのは知っている。あれだ、金のかかる趣味だ。でもまあ良いお客ではある。


「そういえば、妖精のお酒は誰かに卸してるの〜?」


「あ、うん。ギベロさんとナオトギ経由で少しだけ。個人店で予算が足りないから時々しか卸してないけど、喜んでたよ」


「そうなの〜?」


 ナオトギ経由の方はあの酒好きのマスターの所だ。


「うん。そこのマスターも酒好きで、ヘッジスさんと似たタイプっぽいかな」


「そういう客を掴まないとダメね〜。お料理にも少し工夫を凝らすべきね」


「そうだね。幸い畑はばっちりだから、その他の物だね」


「そうねぇ、飲んべえの意見を聞いてみようかしら?」


「行きつけのお店を聞いてみたら?」


「偵察に行くのね? 良いわ〜、頑張っちゃう」


 新たな客はそういう店主達がターゲットだ。酒蔵ならではの強みだ。克実ブランドの酒の販路が少し増やされた。新しいお酒が入り次第連絡が行き、みかんなバーで試飲し、気に入ったら仕入れてもらうというコースが出来上がった。バーよりもその方が儲かる。ギベロさんも時々来ている。みかんなバーの仕入れ会員様専用の会員バッジまで作ってある。

 ……何故かラークさんが一番来ている。みかんの部屋に入ってきたラークさんに聞いてみる。


「竜のお酒はもうちょっとで出来ます。それは持って帰りますよね?」


「勿論、楽しみにしてるよ。龍の霊酒も作っているのかい?」


「はい。ありますよ。そろそろ飲めるので、一樽分持って行きますか?」


「どのくらい作ったんだい?」


 嬉しそうな顔でラークさんが聞いてくる。


「鱗が二十枚だから、二十樽になりました。今回はちょっと凝縮しすぎたかもしれません」


「おや、人が飲める範囲に収まってるかい?」


「試してません」


「見て上げよう」


「お願いします」


 こういう時、飲めないのはいけないと思う。人頼りになるから人員は必要だ。飲んでもらったら、かなり濃縮し過ぎだと言われた。


「これだと、喉が焼ける程傷むはずだ。酒の旨味が味わえないのでは意味が無い。のたうち回って苦しむが、人なら腕くらいは再生もしてしまいそうだ……その代わりに痛みで廃人になりそうだね」


 呆れた顔のラークさんが首を傾げた。使い道に困る類いだそうだ。人だと飲めないし、神々には弱い。神々が普通にお酒として飲むには良いけど、効能を考えたらそれは勿体無い。まあ僕くらい中途半端なのが飲むと調度いい。精霊達には良いお酒になりそうだが、それだとお金にはならない……。まあ、いくらかはみんなに分けるとして、残りをなんとかする必要がある。


「少し、違うお酒をいれて薄めるか、何か手を打つべきだね」


「……ソーダ割りとかそんなのですか?」


「そうだね。果実を入れても良いね。あれの刺激を押さえる何かを入れるべきだ」


 カシガナの実を絞っていれたら調度いいかな?


「取り敢えず、これで……」


 果汁五十%にしてみた。百で死ぬなら半分なら飲めるかなという単純さだ。


「良くなってるね……これなら温泉の近くの実を入れれば使えそうだ。貰って行くよ?」


 五樽分を容器に入れてラークさんは、みかんの部屋から自分の世界に戻ろうとしている。妖精のお酒を入れたら十樽分はある。


「そんなに使うんですか?」


「精霊にも飲ませたいし、悪神達は変な宗教を置いて行ったからね。少し威厳を上げるのに使わせてもらってるよ?」


 なるほど、参考になります。カシガナの実の方が足りないかもしれない……また植えに向かった方が良いかな。でも、そろそろ植物の成長の助けを言われているから、少し通わないとならない。

 ダンジョン化しかけた後の浄化は進んで随分落ち着き、ダンジョン化の心配も無くなっていると聞く。トーイの木の精霊は人里には妖精達を寄り付かせなくなっていて、トーイの木の栽培はあの辺りでは全くされなくなった。

 あの地のエルフ族も罰として、トーイの木の精霊とは接触を禁じられてしまっているらしい。減ってしまった他の妖精達も、戻るまでは長く掛かりそうだ。警戒心の強い妖精達が戻る様にエルフ族も森を整える必要がある。汚染された森の土地を自分達で綺麗にして行っているみたいだ。

 そこまで考えて、あのお酒は妖精達にも配ってそうだと気が付いた。


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