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154 器用

 ◯ 154 器用


 今日は夢縁にいる。加島さんも木尾先輩もこっちに戻っている。というか、夢は繋がっているのだ。アストリューにいたって来れる。ここ最近の溜まり場の、西門の近くにあるアストリュー世界留学の情報交換サロンだ。


「ところで、今日の話し合いはこないだの続きだ。報告は必要だからな」


 と、木尾先輩は僕にちらりと目線をよこし、そして皆に目配せをした。


「えーと、続きって?」


「あかりちゃんだ。グラスグリーンからは落ちてないが、しばらく……と言っても日本時間で一週間程だが、夢には現れてなかったらしい。で、やっと今日、姿の確認が取れた」


「そっか。元気なの?」


「取り巻きはその間に、あかりちゃん熱が落ち着いてるから問題は無い。だが、洗脳から解けた途端にアストリュー行きの試験に受かり出した者が出た。何度かチャレンジして旅行だけでも許可を取れないか頑張っている団体がいてな。最初はあかりちゃんの為にって理由だったみたいだけど……」


「それは……偶然じゃなくて、精神の呪縛があったせいで気分が悪くて苦しんだってことだよね」


 深刻な話だ。


「それで、魔女あかりに成り下がった評判が酷い。逆風は本人がしでかした事のツケだから仕方ないと言えばそうだが、半分は制御不足のせいでもある。対策を講じずにグラスグリーンに上げて仕舞った講師もグルというかなんて言うか」


「複雑だね。講師もあの洗脳に飲まれていたとするなら、どうしようもないよね。本人のモラルの問題と言うか。大丈夫の基準が人と違ってたって事かな。でもこのバッシングで直るんじゃないのかな」


「確かに。しばらくは様子を見るが暴力沙汰になるようなら、我々レイカ様ファンとして庇護下に入れる検討をする。レイカ様の威光に傷が付いてはいけない。そして、本題に入る……」


 キリッと真面目な顔を作り、目力たっぷりに正面から真直ぐに向き直り木尾先輩は口を開いた。


「レイカ様には、い、妹様がいらっしゃるのかを聞いても?」


 何かと思えばそんな事だった。


「会ったよね?」


「ご姉妹で間違いないと?!」


「双子だよ」


「なんと!! あああああぁ〜っ、素晴らしいっ!」


 奇声を上げて喜びに悶える木尾先輩の事は目を逸らしておく。


「どういう関係なんだ?」


 加島さんが隣でまだ興奮状態の木尾先輩を苦笑してから聞いてきた。


「……下僕?」


 出会いからしたらそんな感じだった気が……。


「え?」


 加島さんの顔が面白いくらい崩れた。これは映像に残しておこう。


「パシリ要員だよ」


 温泉饅頭専用のパシリなのは変わってない。


「そうか……頑張れよ」


 目を逸らされたが、可哀想に思われている気がしないでもない。


「下僕でも良い。お二人とお話ができるなんて! 羨ましい〜」


 木尾先輩には若干背中に冷や汗をかきたくなるくらいの鬼気迫る泣き顔で詰め寄られたが、ちゃんと顔を逸らしておいた。これは映像記録には残さなくていいよ、フィトォラ。え? 参考に取っておく? そう? まあ良いけど。


「ところで、適性は分かったんですか?」


 両先輩に聞いてみた。


「火、土、水、風の基本属性はほぼ取れると言われたが、混合、闇も取れるみたいだ」


「加島は闇か。基本属性と俺は炎だった。混合ってなんだ?」


「火と水をあわせてお湯とか、風と水で冷風とか?」


「便利だな。それはまだ見てないが取りたい」


「極めたら、錬金術とか取れるタイプだね? 僕は霧が取れたよ」


 混合は無理に取らなくても錬金術の基礎は受けれたので、僕は取ってない。


「……そうか。良かったな」


 木尾先輩の残念そうな視線が気になる。


「む、光とあわせたら幻が作れるよ? 蜃気楼とか、虹とか」


 熱とかもあわせたら良い感じだ。


「へえ。就職には役に立つのか?」


「イベントとか、ア、アイドルのステージ演出とか……」


 実戦しているぞ?


「意外な使い道だな」


 見直してくれたみたいだ。


「成る程。意外と使えたんだな」


 加島さんも苦笑いしているが、頷いてくれている。


「火を扱うと熱の加減ができると言われたが、その調節はかなり難しい。自分の魔力の使い方をコントロールしないとならない。つまり繊細な気の扱いだ」


「乗り越えないとならないのはそこだな。気弾をぶっ放すだけだと全く意味がない。特にここでの生活の魔法が……」


 ハードルが高いと二人が口を揃えた。ここでのメインはそれだよね。どれだけ魔法を便利に使うかが課題だと思う。


「魔術でも補えるが、せめて鮎川がやってたドライの魔法は覚えたい」


 まあね、コストが掛かるのが魔術だ。


「あれは便利だ。髪を乾かせれば朝のセットが楽だ」


「魔法道具か魔法陣の魔術があるからそれで感覚を掴むとできるよ? 僕もそんな感じで覚えたし」


「じゃあ、それを貸してくれ。覚えたら返すから」


「できるのは基礎を取ってからかな……」


「じゃあそのくらいに借りに行く」


「良いよ」


 何故かそんな魔法を希望する二人に首を傾げつつ、今日の話は終った。


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