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お使いは簡単だが、噂は千里を駆け巡ったりする。どこぞの令嬢との秘密のやり取りとして、リーシャンが見せてくれた女性記者コロンの会員制の情報ページには、そんな題名が付いた僕の姿と東雲さんがメモを受け渡しする姿が載っていた。
いつの間に図書館に? いや、別の人か……。女性の会員がどれだけいるんだと突っ込みたかったが、新人なら図書館通いもあるかと自分の行動を振り返って納得する事にした。
「着物の高級素材がすごいとか書かれているね。僕じゃ勿体無いとか、星深零の諜報員とまで書かれてるけど……。すごい妄想だよね」
「はい。この方は幹部に近いと仰ってましたので、ご迷惑にならなければ良いのですが」
リーシャンとチャーリーとで頭を悩ませている。会員制の情報内だけだから、問題はそんなには無いと思いたい。
「何? 何?」
「レイ」
僕達が頭をよせて話し合っているのに気を引かれたらしい。
「熱心に見てるから、何かあった?」
気になると顔に書いてある。相談してみるか。
「うーん。微妙かなぁ。疾しい事も無いし、放っとくといいよ。それに女の子にも興味あるって見せといた方が、アキは良いんじゃないの?」
「はっ、そ、そうだね!」
レイのアドバイスはもっともだ。僕はこの噂は放置しようと決めた。可愛い女の子も好きだし、綺麗な女の子も好きだ! 年上だって大丈夫だし、東雲さんは見た目は二十五、六って感じだ。
しかし、上手くいかないのが僕の運命なのか!? 今度は権力が好きという噂が流れた。東雲さんは星深零では有名人で、即どこぞの令嬢ではなく、東雲様として身元がバレていた。当然、ナオトギに問い詰められた。つまり、外にまでこの噂は出回っているらしい。
「ふっ、ふふっ、ふふふ」
ご機嫌な東雲さんは、僕の目の前で扇を口元に当てたまま笑っている。
「良いんですか? 噂が酷いから本は送るつもりだったのに」
「良い。おかしくて笑いが止まらぬ。妾に若いツバメと逢い引きなどと噂が出るなぞ、リーシュも大笑いしておった。たまには良い。それよりもそなたが狙われるやも知れぬぞ? 妾には敵は多い」
東雲さんからするとそんな噂になっているらしい。
「そんな〜」
「まあ、そなたには冥界の後ろ盾に精霊界の後ろ盾、レイン神も付いておるなら問題あるまい」
「はあ〜。分かりました」
放置したのは僕の意志だし、男好きと言われるよりは良い。と、思っておこう。
「おや、男も女も既に関係あるまい」
「う、まだそこは……」
「レイン神など最初から老若男女問わずであった。星深零にどれだけ持ち込まれたか分からぬ。そうか、それはそなたは違うのか?」
レイが何故ここが苦手か分かったよ。いや、星深零の方が苦手がっているか。東雲さんに目を覗き込まれたが答えにくい質問だ。
「……」
「ふふふっ。からかうのはこのくらいに。ところで、この本の題名は知らぬ」
「あ、それは。この本を読むならこっちも良いと教えてくれて……女性なら楽しめるって司書さんがお勧めしてくれました」
「それは楽しみだの」
「あ、はい。面白かったです」
会うまでの三日間の間に読んだら面白かった。
「読んだのか。分類は何か」
「恋愛です」
「そうか。男女の縁の切れ目が一番星深零でも多い。うんざりするくらいの」
「……呪いの解除もそんな感じですね」
「やっぱりそうか」
「ええ。とっても」
「どのような呪いを解除した?」
「う、え、と」
東雲さんは思いっきり眉をひそめてから苦笑いした。
「それは生々しい。口にはしにくいのは理解した。星深零での舌戦も醜いがそちらも大概か」
どうやら心を読んだらしい。
「ええ。とても」
「ふむ、よう笑うた。ではしばしの間、これはわらわの楽しみとして借り受ける」
持ってきた本をまとめて、持ち運びの収納スペースか本人の空間収納か分からないけど、仕舞った後に立上がった。僕もそれに習って立ち上がり歩いた。
「はい。楽しめると嬉しいです」
「ではまた。若いツバメ殿」
「東雲さん……読み終えたら、連絡お待ちしてます」
ツバメの呼びかけには抵抗があるが、何とか意志を強く保って答えた。僕達は待ち合わせた美術館横のカフェから出て、手を振って別れた。東雲さんにはお付きの人が外に出るとそばに来て、一緒に戻って行った。外で待つなんて大変な仕事だと思った。
「そうでもありません。あちらには乗り物の乗り場があるのです」
肩の上のリス姿のクシュリーに感想を言うと、そんな答えが返ってきた。東雲さんが向かった方角を見ると、確かに空飛ぶ乗り物が空にすっと上がった。車のように乗り込む形の物だ。
「成る程。美術館に止めてたんだ」
「こちらにはあの乗り物は入って来れませんから」
理解したかも。




