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世界を繋ぐお仕事 〜縁切り結び編〜  作者: na-ho
はたけのめぐみ
118/203

主人公を目指せ!?

今日、三話目になります。

人物A〜E迄いらっしゃいますので、適当に区切って読んでくだされば良いかと思います。名無しが多いですが、適当に自分で名前をつけてくれて大丈夫です。

そして後七名、お好きに書いてみるとか如何でしょう?

 ◯ 覚醒者A


 俺は死んだが、覚醒者とやらで生まれ変わりがある程度融通が出来る存在だ。

 転生が出来ると聞いて、異世界に行く事を希望したが、性別や、種族が選べるサポートは付かないとか言いやがった。植物になったり、虫や微生物という場合もあるとか脅かされて二の足を踏んだ。

 だが何か方法があるはずだ。諦めずに交渉を続ければ、少し待てば俺の希望の剣と魔法の世界へのサポートが出来るはずだという。やっぱりな、あると思ってたんだ。出し惜しみしやがってさっさと案内しろよ。

 まだ相手との交渉中だとか言うので、待つ事にした。その間、眠らされたが問題は無かった。死ぬ前の名前とかの記憶は消えたが、人生の大体は覚えているし、異世界への渇望も消えなかった。そこで俺は成り上がるんだ。


「ようこそガリェンツリー世界へ。ここは剣と魔法の……」


 目の前にとんでもない美少女がいる。淡く化粧を施しているが、まぎれも無く美少女だ。胸も中々良い感じだし、何よりもちらりと見える脚の白さに釘付けだ。手首足首くびれもきゅっと締まってて好みだ。挨拶は俺の脳内をすり抜けて行く。

 そこに、無礼な奴が一発頼むとか言いやがった。俺の美少女神になんて事を言うんだ!


「失礼だぞ貴様、こんな奴は無視して是非お名前を! 仲良くしましょう!」


 俺は思わずそう叫んだ。魂の叫びだ。俺の視線に美少女神は目を逸らした。おお、照れている!? アピールはばっちりだ。少しでも彼女の記憶に残ってくれと願った。美少女神を落とすのはテンプレだ。

 彼女は気を取り直して何やら説明してくれる。今度は真剣に聞いた。少し低めの、でも癒される様な綺麗な声だ。


 念願のスキル選びが始まった。名前は選べないのか……まあいい。新しい両親に期待しよう。種族選びか……何々? 変換ポイントで選べるみたいだな。竜人がある! エルフもいるのか! エルフっ娘は俺の嫁にする!! そして美少女神もいずれは……俺のハーレムに加える!!


 よく見ると竜人の文字が薄い、選択出来ないぞ? そう思ったら直ぐに、竜人を選ぶには神僕か神の協力者になる必要があると文字が出た。竜人は現在神と交渉を断り続けているらしく、説得中だと書かれている。その竜人の情報を探る為の神僕か協力者を選べば、その分の変換ポイントは減らないみたいだ。

 これは……美少女神とお近づきになれるチャンスに違いない!


「良し!」


 しかし、竜人って鱗まみれじゃないよな? リザードな顔とかは勘弁してくれよ、と思っていたら、竜人の姿が画面に映し出された。


「おおーっ」


 赤い髪が多く、火を操るのが得意とある。水を操る者は青い髪、風は緑で土は茶とある。ちゃんと人だ。瞳の瞳孔は縦長で、耳が少し尖って小さく角もある。牙歯があるが目立つ程じゃない。笑ったときに出るくらいだ。尻尾もカッコいい。半竜化出来ると書いてあって、その際は体の半分程が鱗に覆われ、戦闘力が増すと説明にある。く、これは良い。

 一応他の種族もパッと見たが引かれるのはやっぱり竜人だ。俺はこれでいく。


 年齢のところに書いてある説明を読んで、ちょっと吹きそうになった。赤ちゃんプレイは確かに避けたいが、この時期に魔力を育てれば、アドバンテージは高くなる。散々迷って1と記入した。おむつはどのくらいで取れるんだったか分からないが、美少女神を手に入れる為だ。


 職業に進んだ。よく見れば成人の時にもう一度選べると書かれている。これは、ここで一般人を選ぶ奴はいないだろう。危険もあるから自分の気持ちを整理して決めて欲しいと書かれている。随分優しい設定だ。

 美少女神の柔らかな光をたたえた、吸い込まれそうな黒い瞳を思い出す。彼女の人柄がここに現れている。俺は神僕を選んだ。


 特典ボーナスは、まあ普通だな。読み書きが含まれるのか不安だが……思ったら読み書きは自力でと書かれていた。そこは甘くはないか……。

 現在持ってるスキルは、格闘術3 威圧1 となっている。横の数字は習得レベルらしく、上限は5とある。確かに学生時代は武道をやっていたから多少は戦闘もこなせるはずだ。冒険者ギルドとかあると思うしな! 魔物の出る世界だと聞いているし、あるよな? 画面はあると答えた。良し!


 次は変換ポイントだ。これである程度の希望が叶う。男か女か、当然男だ。身長は180以上を選んだ。顔の造作はカッコいい方が良いに決まっている。身分は選ぶ事は出来なかったが、いきなり奴隷とかじゃなければ許す。って奴隷はいるのか? いるとあったが、神界の活動では奴隷は解放を推奨しているとある。解放か待遇の改善で、犯罪者に関しては契約で縛るのは許されているみたいだ。

 どうやら、横暴な奴隷商人が活躍していたらしいが、改善されつつあるみたいな事が書かれている。誰かが奴隷解放をしたのか? 俺も不当な扱いをされてる奴隷がいたら助けるぞ! 美少女奴隷限定だが。


「裏メニュー? 100ポイントも払って誰がするんだ?」


 俺はスルーした。持ちポイントもそんなに無いのに無理だろう。


「次はお待ちかねだ!」


 スキル選びだ! 変換ポイントでも選べるからちょろい。お、地球からの転生者特別お勧めスキル? アイテムボックスがある。これはお約束だろう。鑑定もあった。ん? これは識別を選ばないとダメなのか? これを育てて鑑定になるとか書いてある。そんな事を教えてくれるなんてサービス満点じゃないか。

 良く探せば隠蔽にスキル強奪にスキル複写まである。これは……取りたいが、神僕だと取れないとか書いてある。どういう事だ!? 異世界と言ったら必要なのはこれだろ! 画面は答えを出さない。

 く、容姿をややカッコいいに落として神の協力者に変更し、隠蔽を取り、協力者の特典としてもらえる欲しいスキルをスキル強奪にした。ものすごく下の方に隠す様に入っているスキルだったが、見つけたからには取らないとな!

 どうやら他の奴らも決まったらしい。美少女神が微笑みながら送り出してくれた。その微笑みを心に刻んで俺は生まれ変わった。


 一歳の誕生日、その記憶がよみがえったが、まだ母乳を飲まないとならないし、おしめは取れない。竜人族は成長が遅いのだという推測を立てた。あっているはずだ。

 ちゃんと舌が回らずコミュニケーションもろくに取れない。赤ちゃんプレイを絶賛堪能中だ! 畜生! ちゃんと教えろよ〜!!


「う、うあぁん、ああぁ〜ん」


 叫びは鳴き声にしかならなかった。


「まあ〜、どしたのでちゅか〜? おなか空いちゃった〜?」


 茶髪の母親が機嫌を伺う様に俺を覗き込んでくる。いや、良い母親なんだけど、当たりたくないけど当たってしまう。癇癪を押さえれないんだ!! 美少女神よ怨むぞ! 竜人の革命を成功させて美少女神を奴隷にしてやる!


 一ヶ月くらいしてから、脳内に記憶の封印を延長しますか? と、美少女神から連絡が来た。俺の嘆きが聞こえたからという。俺は美少女神に感謝した。必ず嫁に迎えに行くと誓って記憶の封印をしてもらった。五歳まで眠るよ。それで大体人族でいうニ、三歳だそうだ。




 ◯ 覚醒者B 


 記憶が戻ったのは三歳の誕生日の今朝だった。起きたら思い出していて、今までの記憶と重なった。奴隷の娘として生まれ、随分虐げられた生活を送っている。

 私は奴隷解放をしている教会に逃げようと思ったので、二年後には教会に走った。母親なんて知らない。馬鹿で全然だめだし頼りないし、見切りをつける。


「生んでくれてありがとう、私は私の人生を歩むわ」


 その内に迎えにきてあげる。それまであんたが生きてたらね。

 でも、行き先は人族の神を信仰している場所だった。神の協力者のレポート提出の仕事は十歳からだったから問い合わせも出来ない。神は神でもここの神は人族絶対主義の神だった。それに気が付いたのは猫獣人がこんなところに逃げてくるなんてと、あざ笑われたからだ。

 世界樹の教会と、このロマールだか何とかいう神の教会は争っているらしい。そういえば種族選びの時にそんな事がちらっと書いてあった。もっとちゃんと覚えておけば良かった。

 獣人なら世界樹の教会に行かなければならなかったのに。あたしの馬鹿!! 早まってこんなところに来るなんて、と自分を呪ったが後の祭りだった。教会で変な術を掛けられた後は喋る事を禁じられ、こき使われる事になった。

 あの妙に色目を使って、周りの男を落とそうとしていたビッチ神の陰謀だと私は考えた。許さない。必ず復讐をしてやるから!! スキルを強奪して成り上がってあの顔を切り刻んでやるから!!


 そんな生活を一ヶ月続けていたら、カッコいい騎士が私を教会から連れ出してくれた。シュウという名の二十歳過ぎの神樹の僕だった。美少女神様が私の悲痛な叫びを聞いて温情を下さったという。なんだちょっと誤解してたわ。意外と良い神だったのね。

 シュウは私の母親の元に連れて行ってくれ、世界樹の教会に親子で受け入れてくれた。まだ管理神が変わって数年と情勢的に不安定なため、私達神の協力者の手助けが必要なのだとか。シュウも聞けば日本にいたのだという。変革の時代からの神樹の僕としてかなり有名な人だと、世界樹の教会に集まっている人達に聞いて、憧れは更にふくれあがった。

 だが、邪魔者がいる。結婚してるなんてそんなの酷い! いいえ、私は容姿をちょっと美人にしているから彼の心を必ず掴むわ! たとえ子供がいるとしてもね。

 考えたらその子供とのほうが年が近いじゃないの!! こんな運命呪ってやる!

 しばらく泣いて暮らしたけれど、考えたら彼の子供でも良い訳だわ。男の子だって言うし、彼に似ているなら年下でも問題無しよ。


「裏メニューにあった魅了を使えばちょろいから!」


 おかげで殆どのスキルが取れなかった。でも良いの、誰かからスキルを頂戴すれば良いんだもん。このスキルも成人までは使えないのが悲しいけど、それまでは前世からの家事スキルでなんとかするわ。逆ハーレムには必要なスキルよね。





 ◯ 覚醒者C


 神僕だと選べないスキル強奪、スキル複写、隠蔽に裏メニュー……何かあると思ったので俺は選ばずに神僕を選んだ。人族の商人の元に生まれ変わって四歳になり、その誕生日に記憶を取り戻した。

 ステータスは色んな機能が、神僕としての活動が始まる十歳まで選択出来ない仕様だった。それまでの日記やらは脳内メモに溜めておけるし、PCっぽい使い方が出来る。纏めるのにフォルダー階層も出来るし、レポート作成に写真を入れたり動画も入れたりとかなり自由だ。脳内で全てが管理出来る。自分で情報をまとめて整理出来ればかなり使える機能だ。


「魔力は七歳からしか扱えない仕様なのか……?」


 家の隅で見つけた魔術の本を読んで首を傾げる。抜け道は無いんだろうか? 検証してみるべきだと色々とやってみたが全く分からない。こういった世界に生まれたらお約束の、魔力を増やす訓練は小さい頃からの訓練で、魔力を使い切ったらとか、使えば使う程とかだったと思うが、違うのか? 焦りながら瞑想をしたり色々と試した。

 世界樹の教会に行って神に祈ってみたが、神界との連絡は取れない。


「くそ、放置かよ!!」


 そんな感じで悶々としていたら、一ヶ月程してから美少女神から連絡が来た。お悩みの件についてですが、魔力が安定するまでは使えない仕様だという解答をくれた。どうやらある程度、体が育ってからでないとならないタイプの設定だったらしい。美少女神にお礼を言って俺は今後の計画を練った。

 この反転して今は使えないマップなどの全てのサポート機能が使えるのが神僕の特権なのか、協力者もなのかも知りたかったが、成人の際にもう一度選べるからその折に聞けば分かるだろう。

 世界樹の教会の聖騎士は優遇されている感じは受けないし、冒険者をやってから騎士になっているのは戦闘が必要だからだろう。

 まあ、まだ四歳児の知識ではここの正確な姿は分からない。神話としてもまだ数年程の世界のものなんて浅すぎだし、世界を浄化して悪しき神々を討伐したとかそんな話は信じられない。まず、乗っ取った神を信用は出来ない。勝者が歴史を改竄するのは常だからな。それに奴隷も多いし解放をしているなんて信じられない。

 生まれ変わる前の世界では何故こんな世界を紹介したんだか……俺達が乗っ取れってことだろうか? そんな忠誠心は無いが、登れるところまで登りたいとは思う。世界を征服するのはどんな気分だろうな。


「俺は騙されない」


 美少女神をいたぶるのは、さぞかし良い憂さ晴らしになりそうだ。泣かせてみたい顔をしていた。親切そうな顔を引きはがして、世界の乗っ取りをする様な女の本性を暴いてやりたい。


 八歳になって初めて魔法が使える様になった。それまでに剣の素振りをやったり、世界樹の教会の学校に通ったりして教育を受けた。

 読み書き計算、剣や、槍、弓の扱いや野営のやり方、魔法陣の種類や魔石の使い道、生産者と戦闘職に神官などの職業の説明と、弟子入りなどの斡旋まであった。子供なので持ち金はないが、元奴隷だったりするとそうも言ってられない。教会は子供でもお手伝いとかの仕事を割り振って、お小遣いを稼ぐ為の活動までやっていた。孤児の養子縁組も積極的だ。


 分かったのは天上界には七人の神がいて、美少女神は神樹の要請で世界を救う為に戦った一人だということだ。年数が浅いせいでその大戦の傷痕が残っている物が多く、奴隷の扱いの改革やらの活動を見た。町の施設の工事を元貴族達に神罰として科してさせているとか、かなりの情報が証言と証拠とともに出てきた。

 大戦が終ってしばらく後に、反乱を起こした神樹が力を取り戻し、世界樹が輝きを取り戻し歌い出したというのは全員が口を揃えた。

 つまり、それまでは本当に困窮していたという訳だ。地上からは作物がだんだんと取れなくなり、森は枯れ、水は瘴気で濁り、魔物が増えて村や町を襲い。奴隷商人は、今ではそれを使っていたら忌避される首輪を使って、無茶な奴隷狩りを日常的にやっていたという。

 今の比較的平和なこの世界は、どうやら神樹の反乱が成功したためだというのが分かった。意外だ。美少女神はあれで良い神なのかもしれない。第五フィールドで時折、かの美少女神と思われる月夜神の神舞が行われるらしい。一度は拝みに行きたい。


 親に頼んで見に行った彼女の舞に感動した。神界に恩を売っておくのは大事だ。神僕は続ける事に決めた。

 十歳になったある日、俺は夢の中で美少女神に会った。そして聞かれた。周りには人の気配が何人かしたが似た様な転生者だろう。


「ガリェンツリー世界は如何ですか? 楽しんでいらっしゃいますか?」


「はい。色々発見があって興味深いです。貴方の癒しの舞はとても綺麗でした。貴方と一緒にこの世界の平和を守りたいです」


「とても嬉しい申し出です。これから協力者としてレポートを提出して頂きたいと思っています。これまでで気が付いた事を書いて頂けますか?」


 嬉しそうな彼女を見てこっちもテンションが上がる。


「勿論です!」


 と、俺は返事をした。この何年かで俺はすっかり彼女のファンになった。種族間の摩擦を抑えようと努力している神界にも共感出来るし、神樹を中心にかなり良好な関係が広がっているのも分かる。

 一部の人族が変な宗教国を作って反旗を上げているが些細な事だ。


「ガリェンツリー神界は貴方を応援しています。前の世界のサポートも忘れない様にして下さい。次は成人する時に神界でお会いしましょう」


「は、はい」


 次の日の朝に目が覚めると、協力者の仕事(1)レポート作成を開始しますか? と脳内の疑似画面に文字が書かれている。夢は本当だったと確信した。神僕の仕事は成人する十六からだ。

 マップ機能と、神界へのレポート提出の項目が解放されていた。他の神の僕との連絡が取れるようになっていて、質問はカジュラという人が取りまとめて見てくれるみたいだ。最後の貢献ポイントというのが良く分からない。

 質問を文章に纏めてメール機能を使って送った。神官か聖騎士を目指すのなら連絡した方が良い。詳しい内容が返ってくるはずだ。




 覚醒者D


 私はライトエルフに生まれ変わった。とんがり耳が可愛いエルフに生まれ変わったのよ!

 スキル選びは慎重に選んだわ。エルフは妖精族という括りになって、ダークエルフとライトエルフに別れていた。

 ドワーフもいたけど、そっちは物作りが主な種族だと書かれていたわ。ライトエルフは資源を守る形で森を育てたりが多いみたいね。

 魔法以外の弓術と短剣術も取っておいてよかった。魔物が良く襲ってくるんだもの。大人達は口をつぐんでいるけれど、軽い神罰中なのは種族選びの時に書かれていたから分かっているわ。

 それに、元族長のグラメール様はその神罰を一身に集めているもの。思いっきり神罰中と書かれた悪趣味な服を着せられて、それで生活しているのだから、頭が下がるわ。時々神に会いに行って、神僕の仕事もしているらしい。

 でも何故か楽しそうで、いそいそ、うきうきと出かけて行く姿は神罰中の人には見えない。

 族長のキポローム様は何時も歌を熱心に練習なさっていて、『来るべき時』に備えている。『来るべき時』って何かはまだ魔法を教えてもらい始めた私には分からないけど、すごく大事な事なのは周りの雰囲気から何となく察する。


「そこの小娘! 族長のキポローム殿の屋敷に案内せよ。私はミズーダスの森からの使者だ」


「は、はい」


 何この人、偉そうね。レディーに向かって小娘だなんて失礼しちゃうわ! 

 族長はこの時間は里のまとめ役の識者達と話し合いをしているから、このナフシトリーの森の中央にある神殿の会議室だわ。そこに案内する事にした。

 神殿の中は神聖な場所なので普段は解放されていないけど、時折皆に解放される。月夜神様の神域だって言うけど、良く分からないわ。

 確かに綺麗な気に触れている様な感覚はあるけど、特別にすごいとは感じないもの。まあ、そこの真ん中に湧き出る水は聖水で、近くを流れる小川の水とは比べ物にならない位に貴重だっていうのは分かる。


「ユイカレード、今日は神殿は一般公開はしてませんよ」


 神殿の前で警備と受付当番をしているシスレン様が、間違えて来たと思っている私を見て微笑んでいる。


「はい、シスレン様。ミズーダスの森からの使者様が、キポローム様に会いたいと仰ったのでこちらにお連れいたしました」


「あら、そうだったのね。ご苦労だったわ。使者殿、族長と指導者は会議中で神殿内です。ご案内しますのでそちらで少々お待ち下さい」


「そうであったか。では待たせて頂こう」


「ユイカレード、聖水の配布は明後日よ」


「はい。母さんに伝えてきます!」


 私は使者をシスレン様にお任せして家に戻った。使者は何をしに来たのかしら? 母さんに聞いてみたけど知らなかったみたいだ。

 使者の態度がすごくいやだったと言ったら、私達エルフが傲慢になりすぎたのは良くないと説明してくれ、あんな風になってはだめだと母さんは言った。


「そろそろ貴方にも、少しお話をしておいた方が良いわね。エルフが何故神罰を受けているのかを」


 話を聞くと、神罰が下ったのは種族主義が行き過ぎたせいというのが分かった。誇りを持つのは良いけど、奢りすぎてはならない、この里の者が他のエルフを纏める形で神と交渉をするべきだと教えられた。

 あの楽しそうな元族長の様子から、神との交渉は上手くいっているのだと思う。森を整え、枯れた木々を土に還し、新しい芽を育てる。それが私達の使命だと母は言う。どうやら神殿の教えがそんな感じならしい。

父親はダンジョンにもぐって稼ぎに行っていて、数日留守だ。この活動も重要だと言うが、良く分からない。

 まあ、神殿でのお祈りやらお説教が始まるのは十歳を過ぎてからだし、それまでは各家庭でこうやって教えてもらうみたいだ。

 理解出来る年になったら洗脳する作戦ね? 悪いけど宗教には余り興味は無いわ。魔法少女として魔物を討伐するのが私の夢だもの! 父さんにはその内にダンジョンでの活動を教えてもらわなくちゃ。森での戦いは教えてもらったけど、まだ遠出はさせてもらえないし、ダンジョンに入るのも止められている。冒険者組合とかもあるって言うし、私は私で着々と準備を整えているわ! ああ早く魔法が上達しないかしら?


 ある日、父さんがそろそろ遠出をして、月夜神様の神舞を見るべきだというので付いていった。私はそんなので洗脳はされないわ!! 気を引き締めて月夜神とかいうエセ神を見に行った。

 愕然とした。魔法少女真っ青のステージのキラキラエフェクトに妖精達と精霊が歌い踊り、何故か本迄歌っている姿に衝撃を受けた。


「魔法少女なんてやってる場合じゃないわ! これからは美少女神よ!!」


 妖精達とキラキラダンスなんてアイドルじゃないの!! 私は目覚めた。これからはあれを目指す!! 幸い神の協力者をやるから、妖精をゲットする方法も分かるかもしれないし、ダメなら神僕でも何でもやる!!


 十歳になったある日、あの月夜神とか言う美少女神の夢を見た。目が覚めると協力者の仕事(1)とかいうのが脳内画面で点滅していた。

 そう言えばレポートを提出しないとならなかったと思い出した。スキルが選べるというので協力者を選んだだけだけど、まあ仕方ないわ。レポートなんて書き方は分からないけど、早速私は妖精達を手に入れる方法を聞く為にレポートは質問書になった。

 貢献ポイントとは何かも分からなかったのでそれも聞いた。カジュラとか言う神僕との連絡先もあったけど、そんな事よりも種族スキルの精霊魔法が使えないのは何でかを神に問い質したい。精霊や妖精を使役する魔法じゃないの?! ステージでのアイドル活動なんて反則だわ! 父さんなんて鼻の下を伸ばしてみっともないし、母さんは妖精に視線が釘付け。

 私だって、お隣のイケメンのマーキュを落とすんだから!! 美少女神になんて負けてられないのよーっ!!




 ◯ 覚醒者E


 俺は夢縁で活動していたが、ひょんな事で死んでしまった。理由? そんなの恥ずかしいから黙秘だ。

 神界との繋が取れないままでは外界に出るとかは出来ないと思っていたが、冥界の説明では外の世界に出る方法があるのが分かった。

 星三つまで取った俺なら、活躍出来る。それにこっちのサポートが多少通るというのも良い。協力すればどんなところか分かるし、転生無しの幽霊状態でもかまわないという。

 行き来出来る権利があるなら思い切った方が良い。条件は向こうの方がいいかもしれないし、魔法も使えるというのは大きい。呪符と合わせて魔物とかをどんどん倒したい! 無双が夢だ。


「ようこそガリェンツリー世界へ。ここは剣と魔法の世界……」


 美少女が目の前にいる。これは小説や漫画でおなじみの神様に違いない。


「美少女神が言うなら聞いてやらない事もない! 大人しくしてやるから一発頼む」


 と、俺は欲望をぶつけた。すかさず誰かが失礼だとか言って、美少女神の気を惹こうとしたが、彼女は困惑しているみたいで目を逸らして困り顔だ。意外と初心な感じが良い。

 こうやってちょっと突つけば人物が大体分かる。対応の仕方でどんな人物かが分かって選別できる。こんな事も対応出来ないなんて神としては三流だな。いずれは乗っ取りも可能かもしれない。

 俺は内心舌なめずりをした。本当にその内に俺の配下にしようと密かに決めた。彼女の説明を適当に流し、目の前の画面を見た。

 俺は他の奴らとは違う、夢縁からの転入者への契約について書かれているのを読んだ。


 このままゴーストを選ぶと、アンデッドとして地上界にも降りれるとある。他種族からの理解はまだ浸透していないが交流はあると書かれている。つまり、忌避されている訳か? そんなのは選べないな。


「そもそも一発どころか、触れもしないんじゃ無いのか?」


 疑問に思ったら目の前の画面が変わって答えが書かれていた。修行によって触れると書かれている。修行か……ここでも必要なのか。スキルを取ったら終わりという世界ではないらしい。

その他の種族は赤ん坊からのスタートだ。悩むな。他を取り敢えずは見ていると、記憶を思い出す設定迄あるのに気が付く。容姿も身長もある程度選べる。

 これは……生まれ変わりを選ぶだろ!? しかし、変換ポイントが少ないぞ!? 魔法は全属性の適性を取らないとだめだろ!? 現在のスキルは気操作、瞑想、覇気威圧 精神攻撃だ。魔法関係を強化するのは当たり前だろう。って、スキル強奪があるじゃないか。これは文字が薄くなっている……なんで取れないんだ!! 嫌がらせかよっ。

 画面に答えが出た。スキル譲渡とセットでお取り下さいと書かれている。成る程な。力を持たせすぎない処置だな? いや、チーレムとかいうのをやり易くなるかもしれない。確かそんな漫画があった気がする。

 が、隠蔽を取るのは自力だ。これは容姿を落とさないと取れない。

 俺は泣く泣く容姿を普通にして、隠蔽と識別を取った。アイテムボックスは悩んだが、これを取ると魔法の適性が全部取れない。厳選しないとならない。最後迄悩んで魔法関係を充実させた。いや、空間、召喚魔法と治癒、回復魔法も諦めた。裏メニューはポイントが足りないので見ていない。

 魔法のカバンとかあるのを祈ろう……画面にあると出た。今迄散々悩んで葛藤に使い無駄にしたエネルギーを返せ!!


 生まれ変わり、五歳の誕生日を迎えた今朝、何もかも思い出して自身を確認した。ダークエルフを選んだが、思っていたのとは何かが違う。呪符が使えないのは何故だ……。その上芸術の神を崇める集団だなんて聞いていない。チャラチャラした奴が多いのは許せない。そこは闇の神を崇めるんじゃないのか!? 

 大人達に聞けば闇の神でもあらせられるという。なんだよその軟弱な神は! 浅黒い肌のマッチョな神とかで闘神とかじゃなきゃダメだろ? 俺が這い上がってそいつと変わってやる!! 俺は認めないぞ。


 二年後、魔法を習う様になった頃、月夜神の踊りを見に連れて行かれた。俺が戦いにしか興味が無いのを心配して、両親が連れて行ってくれたのだ。


「あの時の美少女神じゃないか……マッチョなんかより全然好い」


 月夜神の神舞とやらを見に行ったら、アイドル的なステージがあった。ダークエルフ達が率先して踊りに加わっている。どうやら参加型のステージのようだ。

 族長も踊りに加わり、月夜神様にすれ違いざまに微笑まれている……。大きな、それでいて柔らかな癒しの力が世界に広がって行っている感覚を覚え、神の力に畏怖を覚えた。血の気が引いて鳥肌が立って脚が震える。

 出会い頭に一発頼むなんて無礼を口にしたのを、俺は猛烈に後悔した。神聖な舞を踊る癒しの神だ。あんな感情を向けていい相手じゃない。

 妖精達が光を撒きながら通り過ぎる。綺麗だ……。この奇跡を守るのが使命だと気が付いた。帰り際に俺は彼女を守る為に強くなると両親に宣言した。両親は笑ってそれを許してくれた。


 十歳を過ぎて暫くすると、美少女神と夢で会った。俺は土下座をして過去の事を謝った。直ぐに月夜神は許してくれ、俺の手を握って立たせてくれた。

 覚醒者との調整役なんて言わずに、選択肢にあった日本神界との世界の架け橋としての仲介者をやらせて貰えるか聞いた。成人迄はレポート提出だけで良いと言われたが、もっと役に立ちたかったのでお願いをした。首を傾げて月夜神は考えておきますと言って二人きりの夢は終った。


 次の日の朝、目の前の画面に仲介者の心得が届いていて書かれていた内容を読んだ。俺は……スキル強奪を選んでいる。神界に入るにはこの力は制限しないとならないし、誘惑に負けて人に向かって使えば権利が剥奪されると書かれていた。

 よく考えもせずに取った俺の責任だ。あのとき、スキル譲渡とセットという意味を、もっと考えなくてはならなかったんだ。ショックだった。

 スキル選びをやり直す場合は、半年は調整の為に力が使えなくなると書かれている。自分の適性の力を持った方が伸び易いのは何となく分かるが、これを手放すのは惜しい。つまり、選べるスキルが二つというのはこのセットを選ばせる罠だったのかと、思った。何かしっくり来た。

 手のひらで転がされていた事に腹立たしい思いを抱き、そしてそれが神の力なんだと気が付いた。守るなんておこがましい、あの出会いから翻弄されているのは俺の方だ。悔しさと情けなさでしばらく落込んで、答えを出せないまま一ヶ月程が立った。


 月夜神が夢に現れた。人生は長いし、ダークエルフならば半年の間の時間は短いと諭された。戦闘だけでなく、物作りや人脈作り、教える方に回っても貴方なら楽しめると言われた。

 確かに友人を作るのは後回しになっていた。精神年齢が邪魔をして楽しめていなかった。俺は覚悟を決め、もう一度スキルを選び直した。自分にあったスキルはお勧めの中にあるらしい。それを見て選んだ。

 地味な文系のスキルが揃っている。戦いに関するスキルは殆ど無く、結界術とかがあるだけだ。


「結界はこの世界では重宝されます。持っている者が少ないので気を落とさないで下さい。後、黒魔法は瘴気と合わせるとこちらの世界では忌避されるので、出来れば使わない様にして下さい」


 月夜神が注意してきた内容に俺は固まった。


「どういう事なんですか?」


「価値観の違いです。両世界間のこういった違いをまずは知ってもらいたいので、本格的な手伝いは成人してからの選択を推奨しています。瘴気のコントロールは夢縁ではありましたが、こちらでは瘴気を扱うとは、悪神の一派としてみられるという事です。アンデッドが忌避されるのはそのせいです。出来れば貴方には彼らとの交流の仲立ちを頼もうと思っています」


「確かにこっちにはゴーストもマミーもいるけど、月夜神の浄化にも何ともない。おかしいと思っていたけど……」


「ええ、彼らは瘴気を押さえる術を知っているし、覚醒者でもあるのです。闇を知りながらも月の浄化を受け入れ、光を目指す者達です」


 優しく微笑みながら教えてくれた内容に納得した。ここでの常識を知らないと前には進まない。違いを探して仲介者の仕事を受け入れるには、俺はまだ未熟だ。

 だが、長寿の種族を選んでよかった。どれだけ掛かろうとも神界へと登ろうと俺は思った。こんな俺でも優しくしてくれる神々がいるなら、頑張れる。俺をここに送ってくれた冥界の神にも感謝し、良いところだと素直に思えた。

 確かに彼女は闇の中に浮かぶ月だ。パッと見は神というより只の美少女だが、中身はちゃんと光を届けて導く神だ。力を発揮する迄気が付かないけれど、大きな力を内包している。これ迄はむき出しの力に憧れていたが、もう目が覚めた。俺の力を信じて進む。こんな存在の仕方もあるのだと知ったから。


「これからはもっと真面目に自分と向き合います」


 と、月夜神に伝えた。


「貴方が活躍するのを見せて下さいね。応援しています」


 彼女の励ましは心に響いた。主人公になるのに肩肘を張ってたら成れない。自分と向き合い目の前の相手と真剣に向き合ってこそ、自分の道が見えるんだ。その道を進むとき、俺の物語が始まるんだ。



裏メニューは魅了、隷属等のスキルを入れてみました。全ポイントをつぎ込んででも取りたい人が取るという罠満載のスキルです。使えば称号に邪神の卵と書かれそうですね……。

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