第3話 無の空間
さっきまではあんなことを言っていたが、冷静になって考えてみると、死と隣り合わせなんだよな。
このゲームの主催者は狂ってやがる。
そもそも何のためにこんなことをしているんだ?
俺はただ脱出ゲームを楽しみたいだけだ。
命なんて懸けたくない。まだ死にたくない。
だったらやることは1つしかない。
この部屋から脱出する。それだけだ。
この先にどれだけの脱出ゲームが用意されてるかはわからないが、とにかく脱出すれば死なない。
その時、恐ろしい考えが及んだ。
もし、延々と脱出ゲームが続いたら。
そしたら、どのみち俺は死ぬ。
主催者は愉快犯かもしれない。
俺を誘拐して、部屋に閉じ込め脱出ゲームをやらせ、それを見て笑ってるのかもしれない。
待てよ、なぜここから脱出できると思ったんだ?
ドミナとかいうやつが言ってたからか?
なぜあいつの言ったことを信じてるんだ?
脱出ゲームと言ってここから出れるという希望を持たせて、脱出できない部屋で必死にもがき苦しむ姿を見て楽しんでるかもしれないのに。
考えれば考えるほど怖くなった。
パチン、と両手で顔を叩き、気合を入れる。
ネガティブに考えるな。ポジティブに生きろ。
とにかく今はこの部屋から脱出することを考えろ。
とは、言ったものの、この部屋にはさっき入ってきたドア以外何もない。
もちろんそのドアは開かない。
「くそっ。冷静に考えろ。何かあるはずだ。」
だんだんさっきの恐怖がよみがえってきた。
「おーい。苦労してるみたいだね。」
ドミナだ。この機械音に恐怖を覚えた。
「ヒントをあげようか?初めてで冷静になれないと思うから特別に。」
少し悔しいが、ここで死ぬのよりかはましだ。
「ああ、欲しい。」
「りょーかい。じゃあ・・・映像を見せてあげる。
1回きりだからよーく見ておいてね。」
「なあ、俺お前のことが好きだ。」
壁に女の子を押し付けてこう言った。
そして、顔を赤らめて、
「えっ・・・、うん。私も・・・好きだよ。」
「はぁ?今のがヒント?ただの告白場面じゃねーか。」
「今の映像にヒントは隠れてたよ。さっきの映像のテーマはなんでしょう。
それがヒントです。では、もうヒントはないので。
次に君と話せるのは、君が脱出した時だね。じゃーねー。」
くそっ。テーマだって?告白じゃないのか?
ただ男が壁ドンしながら告白して、女が恥ずかしがって返事しただけじゃないか。
ん?壁ドン?
そうか、壁だ。なんでこんな単純なこと思いつかなかったんだ。
壁に何かあるに違いない。
壁をくまなく調べまわる。
「あった。」
ようやく見つけた不自然な跡。
何かでくり抜いた後、戻したような感じだ。
それを取ると、スイッチが出てきた。