僕が居なくなっても。
「僕ね、余命1ヶ月なんだって。」
君は驚いた顔をしている。
「僕も、最近知ったばっかりでさ。知った時は驚いたよ。でもね。思ったんだ。『なんだ。』ってね。『1ヶ月あるなら、十分だ。』本気でそう、思ったよ。」
僕が告げた途端、君は今にも泣き出しそうになった。
「どうしても、助からないの?」
君は、悲しそうな顔で、僕を見上げる。
そして、僕たちの真上で広がる、この大きな花火を見上げる。
「どうしても。」
僕は、今の思いを、全て君に打ち明けた。
「僕、ずっと君が好きだった。もちろん今でも。僕を、少ししか生かさせてくれない神様は嫌いだけど。僕の余命を、あと1ヶ月にしてくれた。そう。神様は、君と花火大会に行く、チャンスをくれたんだ。だから。」
君の、唾を飲む音が聞こえた。
「僕はこの人生に、後悔はしてない。」
僕の最後に、君と会えて嬉しかった。
そして。
今日、僕が、一番伝えたかったこと。
「僕は死んじゃうけど、君といた日のことは、絶対に忘れない。今まで楽しかった。またいつか逢おうね。」
「そんな。そんなの、おかしいじゃん。私だって、君がいないと、意味ないのにさ。」
「あああああああああああ」
私の声と、君の遠ざかる姿は、花火の音にかき消されて消えていった。