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【水音】【壊音】【触音】河野大翔ー中学生編

作者: 琉玲
掲載日:2026/08/22

初めまして、ご覧いただきありがとうございます。本作は【水音】【壊音】【触音】という3つの「音」をテーマに、一人の中学生の身に起きた奇妙な体験を描いた短編です。

どうぞ最後までお楽しみください。


「きりーつ、れい」


「先生、さようなら、皆さん、さようなら〜」


「はい、また明日。」


ガラッ‥バタバタ‥バタバタ〜


みんな、部活動の為に部室に走り去っていく。


テニス部員たちも、階段横にある2階の部室に走り込む。


「あっつ〜。」


2年生の部員の1人が、部室の窓を開けると、下からザッパーン、パチャパチャと笑い声が聞こえてきた。


そうそう、ここからは水泳部のプールが良く見える。


「いいなぁ〜気持ちよさそう〜」


「おっ、あれは蓮君!」


そのうちの1人が、水泳部員の男の子に気づき、声に出すと、他の女子部員達も、窓際に集まり手を振りだした。


その途端、プールサイドやプールの中から歓声があがった。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


「先輩、テニス部女子が手振ってる〜」


「おっ、蓮!早く振り返せ!」


「えっ?あー結衣かぁ~」


蓮が手を振り返したところで、今度は2階の部室より、女子の歓声が上がった。


そして、同級生の大翔が部室を見上げると、再び大歓声だ!!


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


「ヤバい!大翔先輩チョーカッコいい〜」


女子部員がほぼ全員うなづく。


「彼女いらっしゃいます?」


「いないと思うよ‥多分ね!」


「えっ、」「ホントですか?」


後輩達が驚愕の声をあげる中、


「河野‥大翔君‥??」とテニス部の中では、


色白な里美は首をかしげた。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


部活動も終わり、帰宅途中‥


キキードンッ


「大翔ー!」


遠くで蓮の声を聞きながら、意識を失い…


次に気づいた時は、ベッドに横たわる俺と、廊下で泣いている両親や蓮だった‥。


「えっ?俺、死んだのか‥?」


思った瞬間、また意識が遠のいていった。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


ポチャン‥ポチャン‥‥‥プールの水音が耳に入る‥。


「‥‥君、寝てるの?おーい‥、‥君‥‥君、起きて〜」


はっ‥‥‥‥‥


目を開けると、俺はプールの真ん中でプカプカ浮いていた。


その俺に、プールサイドから女の子が声をかけてきた。


なんだ‥?俺‥寝てた‥??


「えっ?えっ‥と‥、誰??」(綺麗な娘だなぁ〜)


「あっ‥気がついた?もしかして寝ながら泳いでたの?器用だね〜(ケラケラ)‥えっとはじめまして?って言うのはおかしいけど‥クラスが違うけど、同じ学年の垣田里美です。話すのははじめてです。」


「あっ‥俺は河野大翔です。起こしてくれて?になるのかなぁ?ありがとう。」


「大翔君‥?」


「えっ?」


「いやっ‥‥えっと‥思いきって言います。ずっと好きでした。付き合ってください。」


里美は、プールサイドから、真っ赤な顔をして告白してきた。


「えっ‥俺ですか?」


「はい!駄目ですか?好きな人いるとか‥?」


「いやっ‥いないけど‥」


「じゃ‥しばらくお試し期間してくれませんか?」


(やっぱり綺麗な娘だなぁ‥)「えっと‥じゃよろしくお願いします」


「はい、お願いします。」


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


それから、すぐに夏休みになり‥


彼女はテニス部の部活動が終わると、水泳部の活動を見に来るようになった。


親友の蓮や他の部員達から冷やかされながらも、プールサイドで話したり、グラウンドの隅で話したり、たまに図書館で夏休みの宿題なんかも一緒にやったりと、楽しい時間を過ごしていた。


夏休みのせいか、あまり人と会うこともなく、蝉の声が響いていた。


そして、ある日‥。


いつものように、図書館で過ごしていると突然、ガタガタガタガタ…ドッドッドッ…ゴーゴーと地響きのような音がし、室内の床が崩れ落ち、足元が真っ暗になっていった。


何が起きているのかわからなかったが、俺は彼女の手を取り、外に出るために走り続けた。


そして、外に出る一歩の所で、彼女は俺の手を離した。


「えっ‥?」後ろを振り向くと


「私は、行けないの。大翔君、とっても楽しかったよ。ありがとうー」と満面の笑顔で手を振っていた。


「何を言っているんだ!」


彼女の手を取ろうとした、その瞬間‥ふと思い出した‥。


彼女と過ごした、校庭、図書室、プールサイド‥誰かいたっけ??


蓮達から、冷やかされていた‥


いやっ違う‥。誰もいなかった‥。


そんな事が脳裏に浮かんだ直後、俺は意識を手放した。



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。


俺が目を開けると、母親が目に涙を溢れさせ、「おかえり」と言った‥。


部活の帰宅中、車にはねられ1週間眠り続けていたと、あとで聞いた。


それから、5カ月間の入院生活、リハビリを行い、クリスマスのイルミネーションが街を飾り始めたころ退院することが出来た。


冬休みになり、近所に住む祖父の家で餅つきの手伝いに行った日、全てパズルのピースがはまったような気がした。


祖父の中学生のアルバムの中に彼女はいた‥。


祖父に尋ねると、「クラスが多かったからなぁ〜、同じクラスにはなった事はないし、話した事もないと思う。」と返事が返ってきた。


ああ~そういうことか‥彼女、垣田里美は、俺の名前を呼んだくせに、改めて自己紹介した時に首をかしげていたな‥。


俺とアルバムの中の祖父は、瓜二つだった。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


その後、無事に3年生になり、もうすぐ夏休みに入ろうとしていた頃の昼休み。


いつものように蓮たちと窓際で話していると、突然、大翔の肩を「トントン」と叩かれる。


振り返ろうとした一瞬、大翔の頭の中に指令が来る。


「ここは3階だ」


周りで笑い声が響き渡る中‥


大翔の心臓が早鐘を打ち、冷や汗が流れ、両手が冷たくなっていくのを感じた。


大翔は、「今、振り返ってはいけない」と

呼吸を整え、それがいなくなるのをまんじりと待った‥。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!

日常のすぐそばにある違和感や、少しずつ揺らいでいく現実を感じていただけたら嬉しいです。

そして、ラストの「トントン」。 大翔の肩を叩いたのは、いったい何だったのでしょうか……。

その答えは、皆さんのご想像にお任せします。

もし少しでも「怖かった」「面白かった」と思っていただけましたら、評価や感想をいただけると嬉しいです!

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