【水音】【壊音】【触音】河野大翔ー中学生編
初めまして、ご覧いただきありがとうございます。本作は【水音】【壊音】【触音】という3つの「音」をテーマに、一人の中学生の身に起きた奇妙な体験を描いた短編です。
どうぞ最後までお楽しみください。
「きりーつ、れい」
「先生、さようなら、皆さん、さようなら〜」
「はい、また明日。」
ガラッ‥バタバタ‥バタバタ〜
みんな、部活動の為に部室に走り去っていく。
テニス部員たちも、階段横にある2階の部室に走り込む。
「あっつ〜。」
2年生の部員の1人が、部室の窓を開けると、下からザッパーン、パチャパチャと笑い声が聞こえてきた。
そうそう、ここからは水泳部のプールが良く見える。
「いいなぁ〜気持ちよさそう〜」
「おっ、あれは蓮君!」
そのうちの1人が、水泳部員の男の子に気づき、声に出すと、他の女子部員達も、窓際に集まり手を振りだした。
その途端、プールサイドやプールの中から歓声があがった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「先輩、テニス部女子が手振ってる〜」
「おっ、蓮!早く振り返せ!」
「えっ?あー結衣かぁ~」
蓮が手を振り返したところで、今度は2階の部室より、女子の歓声が上がった。
そして、同級生の大翔が部室を見上げると、再び大歓声だ!!
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
「ヤバい!大翔先輩チョーカッコいい〜」
女子部員がほぼ全員うなづく。
「彼女いらっしゃいます?」
「いないと思うよ‥多分ね!」
「えっ、」「ホントですか?」
後輩達が驚愕の声をあげる中、
「河野‥大翔君‥??」とテニス部の中では、
色白な里美は首をかしげた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
部活動も終わり、帰宅途中‥
キキードンッ
「大翔ー!」
遠くで蓮の声を聞きながら、意識を失い…
次に気づいた時は、ベッドに横たわる俺と、廊下で泣いている両親や蓮だった‥。
「えっ?俺、死んだのか‥?」
思った瞬間、また意識が遠のいていった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ポチャン‥ポチャン‥‥‥プールの水音が耳に入る‥。
「‥‥君、寝てるの?おーい‥、‥君‥‥君、起きて〜」
はっ‥‥‥‥‥
目を開けると、俺はプールの真ん中でプカプカ浮いていた。
その俺に、プールサイドから女の子が声をかけてきた。
なんだ‥?俺‥寝てた‥??
「えっ?えっ‥と‥、誰??」(綺麗な娘だなぁ〜)
「あっ‥気がついた?もしかして寝ながら泳いでたの?器用だね〜(ケラケラ)‥えっとはじめまして?って言うのはおかしいけど‥クラスが違うけど、同じ学年の垣田里美です。話すのははじめてです。」
「あっ‥俺は河野大翔です。起こしてくれて?になるのかなぁ?ありがとう。」
「大翔君‥?」
「えっ?」
「いやっ‥‥えっと‥思いきって言います。ずっと好きでした。付き合ってください。」
里美は、プールサイドから、真っ赤な顔をして告白してきた。
「えっ‥俺ですか?」
「はい!駄目ですか?好きな人いるとか‥?」
「いやっ‥いないけど‥」
「じゃ‥しばらくお試し期間してくれませんか?」
(やっぱり綺麗な娘だなぁ‥)「えっと‥じゃよろしくお願いします」
「はい、お願いします。」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
それから、すぐに夏休みになり‥
彼女はテニス部の部活動が終わると、水泳部の活動を見に来るようになった。
親友の蓮や他の部員達から冷やかされながらも、プールサイドで話したり、グラウンドの隅で話したり、たまに図書館で夏休みの宿題なんかも一緒にやったりと、楽しい時間を過ごしていた。
夏休みのせいか、あまり人と会うこともなく、蝉の声が響いていた。
そして、ある日‥。
いつものように、図書館で過ごしていると突然、ガタガタガタガタ…ドッドッドッ…ゴーゴーと地響きのような音がし、室内の床が崩れ落ち、足元が真っ暗になっていった。
何が起きているのかわからなかったが、俺は彼女の手を取り、外に出るために走り続けた。
そして、外に出る一歩の所で、彼女は俺の手を離した。
「えっ‥?」後ろを振り向くと
「私は、行けないの。大翔君、とっても楽しかったよ。ありがとうー」と満面の笑顔で手を振っていた。
「何を言っているんだ!」
彼女の手を取ろうとした、その瞬間‥ふと思い出した‥。
彼女と過ごした、校庭、図書室、プールサイド‥誰かいたっけ??
蓮達から、冷やかされていた‥
いやっ違う‥。誰もいなかった‥。
そんな事が脳裏に浮かんだ直後、俺は意識を手放した。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
俺が目を開けると、母親が目に涙を溢れさせ、「おかえり」と言った‥。
部活の帰宅中、車にはねられ1週間眠り続けていたと、あとで聞いた。
それから、5カ月間の入院生活、リハビリを行い、クリスマスのイルミネーションが街を飾り始めたころ退院することが出来た。
冬休みになり、近所に住む祖父の家で餅つきの手伝いに行った日、全てパズルのピースがはまったような気がした。
祖父の中学生のアルバムの中に彼女はいた‥。
祖父に尋ねると、「クラスが多かったからなぁ〜、同じクラスにはなった事はないし、話した事もないと思う。」と返事が返ってきた。
ああ~そういうことか‥彼女、垣田里美は、俺の名前を呼んだくせに、改めて自己紹介した時に首をかしげていたな‥。
俺とアルバムの中の祖父は、瓜二つだった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
その後、無事に3年生になり、もうすぐ夏休みに入ろうとしていた頃の昼休み。
いつものように蓮たちと窓際で話していると、突然、大翔の肩を「トントン」と叩かれる。
振り返ろうとした一瞬、大翔の頭の中に指令が来る。
「ここは3階だ」
周りで笑い声が響き渡る中‥
大翔の心臓が早鐘を打ち、冷や汗が流れ、両手が冷たくなっていくのを感じた。
大翔は、「今、振り返ってはいけない」と
呼吸を整え、それがいなくなるのをまんじりと待った‥。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
日常のすぐそばにある違和感や、少しずつ揺らいでいく現実を感じていただけたら嬉しいです。
そして、ラストの「トントン」。 大翔の肩を叩いたのは、いったい何だったのでしょうか……。
その答えは、皆さんのご想像にお任せします。
もし少しでも「怖かった」「面白かった」と思っていただけましたら、評価や感想をいただけると嬉しいです!




