第5話 第一王女
「お、これは便利かも」
僕は今日も冒険者として活動している。今は新しい魔法を試しながら狩りをしているところ。
この前の6本腕の巨大熊に遭遇したときに索敵に難があることがわかって、何か索敵できる魔法がないかって思っていたのだ。
そこで作ったのが『魔力探知』っていう魔法だ。これは魔法版レーダーで、魔力の波を打ち出して帰ってきた波を元に物体の位置関係や魔力の大きさを計る。魔力の消費も少ないし、いい魔法を考えられたと思う。
魔力探知を元に効率よく狩りを進めていくと、気付いた時には冒険者ランクがDランクに上がった。一応Dランクで初級者卒業で迷宮にも入れるから、これで僕も1人前の冒険者だ。
それと、最近になって転移の魔法を覚えたから行ったことのある場所ならどこでも好きなところへ行けるようになった。そんなわけで転移魔法でお昼を食べに公爵邸に帰る。
「アンジー!!」
「クリス!!」
公爵邸に帰ってしばらくすると今日は公爵邸にお客人が、それもアンゼリカ様に来た。これも魔力探知で知らない反応がないか探していたからすぐに気づけたのだ。
お客さんはアンゼリカ様のことを『アンジー』って呼ぶくらいだから相当仲がいいと見た。雪みたいに真っ白な髪の毛が綺麗な女の人だ。歳も近そう。
「アンジー!、ずっと心配だったわ......どこか怪我はしていないの?」
「ふふ♡、大丈夫よクリス♡、こちらにいらっしゃるシオン様が助けてくださったから♡」
どうやら『クリス』さんはアンゼリカ様のことを心配して顔を見に来たようだ。あれももう1か月くらい前になるだろうか。
「お初にお目にかかりますわ。わたくしはこの国の第一王女クリスティーン・フォン・トチーヌですの」
「お、お初にお目にかかります。シオンと申します」
大急ぎで膝をついて、頭を下げたけどもう遅いかな?、う、打ち首かな?
「そんなに畏まらないでくださいな、アンジーのお友達ならば、わたくしともお友達になってくださるでしょう?」
「は、はい!」
王女様とお友達なんて恐れ多すぎるけど、そう言われてしまったなら断れまい。
「それにしてもアンジー、どうしてそんなに髪が綺麗なの?」
「ふふ♡、聞きたい?♡、クリス?♡」
「もったいぶらずに教えてよ!♡」
「シオン様に髪を梳いていただくとこうなるわ♡、シオン様♡、クリスにもして差し上げて♡」
「失礼します」
僕はクリスティーン様の後ろに立って、するすると髪を梳いてあげる。元から手入れが行き届いてるから劇的な変化というわけではないけどクリスティーン様の髪もサラサラになった。
「ほ、本当にサラサラになった......どうしてですの?」
「シオン様の回復魔法は特別なの♡」
「クリスティーン様にもこちらを」
「櫛ですの?」
「こちらの櫛には今の回復魔法が込められています」
僕は回復魔法をこめた櫛をプレゼント用にストックしてあるからいつでもこうやって渡せる。女の人が多い世界だから喜ばれると思ったのだ。
「まぁ!♡、いつでもあの魔法が使えるんですのね♡、感謝しますわ♡、シオン様♡」
「わたくしは毎朝シオン様にしていただくけどね♡」
「ズルい!、あ、ちがッ!、これは......そ、そう!、作り手本人の魔法の方が魔道具よりも効果が高そうという意味ですわ!」
「ふふ♡、そんなに早口で慌ててどうしたのクリス?♡」
大慌てて発言を訂正するクリスティーン様のことをアンゼリカ様が面白そうにからかっている。
「あ、慌ててないもん!」
王女様って言うからお高くとまっているのかと思ったけど、意外と子供っぽいというか可愛らしいお人だ。
「シオン様はどちらからいらした方なの?」
クリスティーン様も交えて一緒にお茶をしていたら、僕の身の上の話になった。
「実は僕、アンゼリカ様に出会うまでの記憶がなくって......」
「なんと......」
「何か辛いことがあったような気もするんですがほとんど覚えてなくって......温かい光の中で気が付いたら森の中に......」
「きっとシオン様は女神様の祝福を受けたんですわ」
「女神様の祝福?」
クリスティーン様の言う通りのことを受けたし内容も全部知ってるけど、ここは知らない体で話を聞く。
「わたくしの推測ではシオン様はサガン公爵領のエルフ。昔からフシン王国の侵攻を受けているところですの......その中には戦火に巻き込まれた村も......」
サガン公爵領っていうのはこのトチーヌ王国の北西の領地。そしてフシン王国っていうのはこのトチーヌ王国の西隣の大国だ。
「僕はその村出身なんですか?」
「そうだと思いますわ。村が散り散りになる過程で女神様に選ばれたシオン様は転移の奇跡をその身に受けたのです」
「なるほど......」
僕は精いっぱいの演技をして、納得した感じを出す。
「ありがとうございます。教えていただいて」
「いえ......シオン様はお辛くないのですか?、わたくしたち王族の罪とも言えるあなたの運命を憎まないのですか?」
クリスティーン様は心配そうに僕の顔を覗き込んでくるけど僕は特に思うところはない。別に怒ってもない。
「はい。今はアンゼリカ様とクリスティーン様と一緒にいれるのが幸せですから」
「「シオン様......♡」」
2人とも頬をぽってり染めてくれて、うまく僕の身の上の話から注意を逸らせたんじゃないだろうか。
「コホン!、わたくしが女王になったらフシン王国なんて黙らせてやりますわ!」
照れているのを誤魔化すように咳払いしたクリスティーン様はかなり強気な発言をする。大丈夫かな?、聞く人が効いたら大問題になりそうだけど。
「我が国の無辜の民を踏みにじる行為は断じて許せません。お母さまも何か対策を考えているところですから、シオン様もご安心なさって!」
「お気遣いいただきありがとうございます。でも僕もその気になれば戦えます!」
「シオン様が戦わなくて済むような未来を作りますの!」
クリスティーン様は出会ってまだ間もない僕のことを守ろうと頑張ってくれるみたい。
「あらあら♡、クリスったらプロポーズみたいじゃない?♡」
「ななな!、違いますのよ!、今のは王族として民を守ると誓ったのであってですね!......そ、その気がないわけではないのですが......」
またアンゼリカ様がクリスティーン様のことをからかって遊んでいる。本当に仲良しそうで見ていて僕も楽しくなってくる。
モジモジしているクリスティーン様と一緒にお茶を頂いた後は、夜ご飯を一緒に食べて夜も眠くなるまでお話をしていた。
「はぁ......王都に帰るのが寂しい......」
「来年になったらシオン様とたくさん会えるわよ♡」
「シオン様も高等学院に入るんですの?」
「はい、僕も目指してます」
僕が来年一緒に受験するってわかった瞬間、クリスティーン様は花が咲いたような笑顔になってくれた。
「シオン様と一緒に......♡」
「さて♡、煩悩まみれなクリスのことは置いておいて、おやすみなさいませシオン様♡」
「はい、おやすみなさい」
ぐっすり眠って翌日の朝にはクリスティーン様は王都に帰ってしまった。本当に友人の無事を確かめに来ただけだったみたい。
今度会う時は秋のアンゼリカ様のお誕生日になるかもって言ってたからそれまで辛抱だね。
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