第4話 魔道具職人シオン
巨大な6本腕の熊と相対して、僕は魔力をみなぎらせる。
ここは森の中だから冒険者ギルドでやったような爆炎の魔法は使えない。火以外であの熊を倒さなくっては。
「アースランス!!」
僕は地面から岩の槍を作り出して熊を串刺しにするイメージで魔法を使う。槍が熊の胴体を貫通して血しぶきを上げる。
「グォォォォォォォ!!」
熊の悲痛な叫びが聞こえるけれど、まだ警戒は解けない。追い込まれた獣には要注意ってギルドでも常々言われてるからね。
しばらくして熊が動かなくなったのを確認して近づいてみる。意外とあっさりだったかも。
「シオン様にはまた命を救われてしまいましたわね♡」
熊が完全に沈黙したのを確認して僕の空間収納に仕舞う。こんな巨体でも入るんだからやっぱり便利だ。
ギルドに戻った僕らは森の中で魔物の熊に遭遇したことを報告して、ついでにランクアップの査定もしてもらう。最初はGランクだったのがもう2つも上がって、今はEランクだ。
素材は特に使い道もないから全部売り払ってしまって、僕のポケットマネーに変換だ。
アンゼリカ様とルアンさんと後日また3人でゆっくりピクニックしようと約束をして今日の所は公爵邸に帰る。日も傾いてきたしね。
「シオン様はどうしてそんなに髪の毛がきれいなんですの?」
お風呂上がりにゆっくりしていたら、アンゼリカ様にちょっと羨ましがられた。これはある実験の成果なのだ。
「実は髪の毛に回復魔法をかけてみているんです」
「回復魔法を?」
「はい、そうするとつるつるの綺麗な髪になるんです」
「わたくしにもしていただけませんか?♡」
「もちろんです」
僕はソファに座ったアンゼリカ様の後ろに立って髪の毛をサラサラと梳かしてあげる。こんなことしなくても元から充分綺麗な髪の毛だったけどね。でも確実に僕の魔法でワンランク上の髪の毛になった。
「ふふ♡、なんだか気持ちがいいですわ♡」
「回復魔法ですから、癒しの効果もあると思います」
「きっとそれだけではありませんわ♡、シオン様だからいいのです♡」
「嬉しいです、そう言っていただけて」
アンゼリカ様の髪の毛からはいい匂いがしてドキドキするけど、頑張って平静を装いながら髪の毛をうるツヤにしてあげる。
「ありがとうございますわ♡、いかがですの?♡」
「とっても美しいです、アンゼリカ様」
「うふ♡、うふふ♡」
僕が褒めてあげるとアンゼリカ様はいつも笑ってくれる。僕も一緒に笑っちゃうくらい素敵な笑顔だ。
次の日からアンゼリカ様の髪の毛を手で梳いてあげるのが朝の日課になった。僕の回復魔法をかなり気に入ってくれてるのも嬉しいし、アンゼリカ様と一緒に過ごす時間が僕は好きだ。
「アンゼリカ様、今日はプレゼントがあります」
「あら♡、なんですの?♡」
「こちらです」
僕が差し出したのは櫛。これには僕の髪の毛のキューティクル回復魔法が付与されている魔道具だ。魔道具っていうのは魔力で動く魔法のアイテムのことで、人間が作る物と迷宮から出土する物がある。今回は前者だ。
「もしかして♡」
「はい、回復魔法の櫛です」
「ふふ♡、これでシオン様がいなくても綺麗な髪が保てますわ♡」
「でも僕がいるときは僕にさせてくださいね」
「もちろんです♡」
ちなみにお世話になっているメイドさんや公爵家のご当主様にも櫛をプレゼントして大変喜ばれた。
「シオン様は付与魔法までできるだなんて♡」
「僕にできる物ならなんでもお作りしますよ」
「ふふ♡、わたくしシオン様にお礼をしている身ですのよ?♡、そんなに甘やかさないでくださいまし♡、購入という形にさせてくださいな♡」
アンゼリカ様には僕もお世話になってるから、お礼をしたかったんだけどそういえば命をお救いしたんだったね。もう恩は充分に返された気がするけど。
「シオン様にはキッチンの魔道具の調子を見ていただきたいんですの。何分古い設備ですから」
「わかりました!」
厨房の魔道具は大きいわりに火力が低かったり、あんまり冷えない冷蔵庫だったりって感じで確かに古い。この世界の魔道具の基準がわからないけど、前世の家電と比べたら性能はよくない。
ほとんどの魔道具をエネルギー効率が良く、かつ威力が出る様に付与魔法をかけて、料理人さんに使ってみてもらう。
「これなら今までよりも速く調理ができそうです!、ありがとうございます!、シオン様!」
「何か不具合があったら教えてくださいね」
取り合えず料理人さんには満足いただけたからキッチン改造計画は成功だ。
「シオン様の魔道具が市場に出たら飛ぶように売れそうですわね♡」
「確かに将来は魔道具職人も悪くないですね」
付与魔法の才能は魔導士100人に1人って言われてるから、使いこなせば結構稼げるはずだ。学校に入ったらその辺も勉強しようかな?
アンゼリカ様からしっかり魔道具改造の代金を頂いて、全部僕のポケットマネーに入っていく。
「シオン様には不自由ない暮らしを保証いたしますが、シオン様自身がお金を稼ぐ術をお持ちなのはとても良いことですわ♡」
「え?、ずっと公爵家にお世話になるわけには......」
「むぅ、勢いで誤魔化せばシオン様とずっと一緒にいられると思いましたのに」
アンゼリカ様はほっぺたを膨らませて可愛らしく抗議して来る。気持ちは嬉しいけどヒモ生活ができるほど図太い神経はしていない。ゆくゆくは公爵邸を出ると思う。
「ですがシオン様♡、ずっと一緒には暮らさなくとも、わたくし達はずっと仲良しでしょう?♡」
「それはもちろんです」
「ふふ♡、今はそのお言葉だけで満足しておきますわ♡」
さっきの子供っぽい感じとは打って変わって妖艶な微笑みを見せてくれるアンゼリカ様にドキッとしたのは隠しておこう。
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