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悠久の盟約 ~地獄モードを生き抜いた最強ハイエルフは、魂の輝きで仲間を集め『みんなで帰る』クランを築く~  作者: いさな


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第32話 迷宮は、視ている

「さて!、今日からはついに迷宮深層に向かいます!」


サラさんの元気な言葉にみんなも頷く。この夏から秋にかけての1か月みっちり訓練を重ねて成果が確かに形になってきた。


今日は『帰り道』は意識しつつも攻略に力を入れる。たとえはぐれドラゴンが出ようと今回は迂回するなり、必要とあらば倒すなりして深層を目指す。


「?」


迷宮の穴に足を踏み入れた瞬間体がざわっとした。なんだか迷宮の様子がおかしい......雰囲気が違う。


「シオンも気付いた?」


「サラさんもですか?」


「うん、何かおかしい。いつもは迷宮ってもっとこう......カリカリしてるっていうか、こんなにすんなり迎えてくれる感じじゃない」


いつもの迷宮の様子を知っていて、かつ魔力を感じ取れる強者であるサラさんが言うんだ。きっと何かある。


「でもなんというか......危険ってわけではない。そんな気がするんです」


自分でも変なことを言っている自覚はある。もちろん魔物はいるから警戒はするんだけど、それ以上に迷宮の奥に何かが待っている。そんな気がする。


「同感。アタシはこの違和感も含めて確かめたい」


僕の隣でサラさんが一歩踏み出した。


「みんな、行こう!」


「「「「うん!」」」」


僕の言葉にみんな頷いて、僕らはどこかおかしくも、なんだか優しい迷宮の深層を目指して歩み始めた。


「今回のリッチ戦は戦士組にやらせるわ。魔力を纏う訓練よ」


アイシャさんの訓練は迷宮でもやる。確実に『帰れ』て、でも地上じゃなかなか訓練できないことを迷宮でやるのだ。


「アナとリンダは守りよ。イザベラ、あなたの剣でリッチを打ち払って見せなさい」


「「「はい!」」」


いつもはリンダ様が大盾で守りのはずなんだけど、今日はアナ様と一緒に守るみたいだ。


「コァァァァァァ!!」


リッチの魔法が3人に向かって飛来して来る。1つ1つは大したことない威力だけど、連射されると困る。


「私に任して!」


アナ様の剣が鈍く輝いて魔力を帯びる。


「せやっ!!」


リッチの連射魔力弾を剣ではじき返している。しかも無暗やたらに剣を振り回しているわけではなく、どれが致命的かを見極めて剣で弾いているのだ。


「イザベラ!」


「はい!」


イザベラさんがその隙にリッチに近づき、鈍く輝く剣で袈裟切りにした。リッチの実態を捉えた剣技は確実にダメージを与えている。


「ホガァァァァァァ!」


この前はリッチに対して牽制が精いっぱいだったのに、今回は違う。魔力操作が上手になった証拠だと思う。


「リンダさん!」


「うん!」


リンダ様が最前線に躍り出ると大きな盾で思いっきりリッチのことを殴り飛ばす。この攻撃にだってしっかり魔力が籠っている。


「アナちゃん!」


「あいよ!」


最後はアナ様、守りの剣から一転して今度はリッチの魔力核をも捉えた鋭い1撃。あの物量攻撃を瞬時に見極めて凌ぎ切るんだ。弱点を見極めて切り裂くなんて訳ないこと。


「いいわね。各々訓練の成果が出ているって感じられるわ」


「リゼもいい感じだった」


「え?、あたし?」


モナさんは戦闘に参加していないリゼのことも褒めている。


「じゃあ、無意識?、なら今度は意識してできるようにするといい。リゼはリッチの魔力核をずっと捉えていた。ずっと威圧して『逃がさないぞ』ってしてた」


「え、えへへ......」


モナさんになでなでされてリゼは照れている。モナさんの方が身長低いのは言わないお約束だ。


「通りで狙いやすかったわけね~」


アナ様もその違和感を感じ取っていたみたい。僕も戦闘に直接参加しなくてもサポートしたり状況を把握できるようにしないと。


素材を回収した後はセーフエリアで一休み。ここまでの道のりは僕らには簡単だったけど、一旦リセットタイムだ。


「こんなの作られたらたまりませんわぁ」


サラさんはテントのベッドに転がってぶ~ぶ~言っている。理由は簡単。サラさんたちが苦労して手に入れた魔道具テントを優に超えるものを僕がサクッと作ったからだ。


今やテントの中は合宿所みたいにベッドがずらっと並んでいる。一緒に冒険するメンバーが増えるたびにテントを拡張してきたからね。


みんなでお風呂に入ってご飯を食べて、明日からの準備をしたらみんなでお布団に入る。


「モナはシオンの布団で寝る」


「わわっ!」


「こら!」


「んみゃ!」


モナさんが子猫のように僕のベッドに上って来たのをクリスタさんが捕まえてあるべきベッドに連れ戻す。


「なんか懐かしいな~♡、モナってば昔っから人と一緒に寝るの好きだったんだよね♡」


『大樹』のほっこりエピソードにみんなで笑顔になりながらおやすみをして、翌朝からまた冒険が始まる。


「ワフ!」「ピッ!」


エルとニジハが何か伝えたそうに僕の方を見つめて来る。言わんとしていることはなんとなくわかっている。迷宮のこの感覚のことだろう。


セーフエリアには魔物は湧かない。安全だ。でも『視られている』感じがする。


「大丈夫。何かあったらすぐ帰ろう。みんなでね」


「ワフ!」「ピッ!」


2人のことを撫でたら着替えて第2草原エリアに向かう。


「ま~た、『はぐれ』かな?」


サラさんの視線の先、遠くの方には前回よりも小さいけれどグランドドラゴンがのそのそ歩いているのが見える。


「サラさん。あれ『はぐれ』じゃないです」


「シオン、なぜそう思うんだ?」


「ここの魔力、前よりも濃いんです......この濃さならドラゴンが生まれても......それは『はぐれ』じゃない」


「つまり、この階層にドラゴンが自然に湧くようになったということか......」


エリス様は僕の言葉に頭を悩ませる。これを異変と捉えて撤退を提案するか進むか考えているんだろう。


「もう少し先見て見よっか」


サラさんの言葉にみんなで頷いて、グランドドラゴンに気づかれないように遠回りをして僕らは下の階層に潜っていった。


「......!」


まただ。また視られている感じがする。


「シオン。やばくなったら全力で合図して。今、迷宮の異変を一番に察知できるのはシオンだから」


「わかりました!」


迷宮の異変。確かに『変だ』だけど。『危なくない』そう言われているみたいな感覚もしてどうすればいいかわかんないのが現状だ。


草原エリアのボス部屋の前までやって来た僕らは、前衛のリンダ様を先頭に扉をこじ開ける。


中にいるのは豚頭の魔物『オーク』......いや、『オークジェネラル』かな。


「リンダ、シオン、フローラ、ユナで決着をつけてみなさい。指揮はシオン!」


今回もアイシャさん的には『訓練』判定だから少人数の連携を試す。


「リンダ様、相手の斧を受け流してください。正面から受けては危険です!」


「はい!」


オークジェネラルの斧がリンダ様の盾の上を滑って地面に叩きつけられる。


「せや!」


その一瞬のすきに僕はオークジェネラルの腕を切り落とす。同じ身体強化、武器強化の具合でもオークジェネラルの腕がバターのように切れていく。少しは僕だって成長しているさ。


「フローラ様、ユナちゃん!、今のうちに!」


さっきからずっと高まっていたフローラ様とユナちゃんの魔力が解放されてオークジェネラルが消し炭になる威力の大火炎が僕とリンダ様の前に現れる。ちょ、ちょっとだけ焼き豚のいい匂い......


「うん、いい連携ね」


アイシャさんが褒めてくれる。


「でもシオン。リンダの実力なら受け流さずともオークジェネラルの斧をはじき返すことだって出来たわ。そうしたらもう1手少なく、リンダの盾とフローラたちの魔法で決着だったわ」


アイシャさんは反省点をしっかり提示してくれるけど、褒めることも絶対に忘れない。


「シオンに大切なのは味方の能力を『理解』して『信じる』こと。貴方は『指揮官』、すべてを統括し『使う』自覚を持ちな」


サラさんは僕のことを撫でながら『でも仲間を大事にする意識は満点だから、あとちょっとだよ』って言ってくれる。


ボス部屋の次のセーフエリアに入った僕らはまた一休みする。その間もどこか『視られている』感覚を感じながら。

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