第17話 ボスは一瞬、夜は長く
「ついに来たねボス部屋......!」
「うん、この先にボスがいるんだね!」
「油断はできないな」
「みんな、頑張ろう!」
僕らはボス部屋の前までやって来た。ここまでの道のりは正直楽ちんだったけどイザベラさんの言う通りボスはそうとは限らない。気を付けて行こう。
イザベラさんを先頭にして僕らはボス部屋の中に入る。中にいたのは人間の胴体に牛の頭の『ミノタウロス』だ。
「ブモォォォォォォ!」
「はぁっ!!」
イザベラさんの剣が一閃。叫び声が終る前に......いや、叫びながらミノタウロスの首は宙を舞っていた。さすがは高等学院に特待生で入る剣士だ。でも僕らの出番がないね。
ボス部屋を過ぎた先には『セーフエリア』っていう魔物が湧かないエリアがある。大体の冒険者はここで夜を明かす。
冒険者はもってきた携帯食料をかじってるけど、僕らはそんなの無理だから後でおいしいご飯を作る。
「シオン!、テントテント!♡」
「今だすね」
僕らは他の人の邪魔にならない端っこの方でテントを広げてみんなで中に入る。
「ふひゃ~♡、ごろ~ん♡」
「あ~!、リゼちゃん!、ベッドの場所はじゃんけんって言ったでしょ~!」
僕のベッドの隣を予約するように飛び込むリゼにユナちゃんはぷりぷり怒っている。
「いいじゃ~ん♡、前回あたし端だったんだし♡」
「も~!」
「お風呂入っておいで、僕ご飯作ってるから」
「「「は~い!♡」」」
「ワフ!」
「ピッ!」
テントに入らずに待っているエルとニジハにもご飯をあげたら、僕は今日ゲットした牛の魔物のお肉で簡単にステーキを作る。
塩をしたお肉を豪快に焼いて、胡椒は最後にかける。焦げちゃうからね。
ぐぅぅぅ~
「ん?」
料理していたら周りの冒険者がじっとこっちを見ているのに気づいた。......もしかして欲しい?
「えっと......自分で材料出してくれるなら焼きますけど......」
「「「「お願いします!!!」」」」
皆荷物の中から草原エリアで狩ったお肉を出してきて列に並ぶ。マジックバッグを持ってる人なんかはお肉を売り始める始末だ。
「あれ~?、何かすっごいことになってない?」
皆さんにステーキが行き渡ったところで、リゼたちがお風呂を終えてテントから出てきた。
「僕らも食べよっか」
いい感じにミディアムに火が通ったステーキにみんなでかじりついて、僕らはお腹を満たす。
「じゃあ、僕お風呂入るね」
「は~い!♡」
「リゼ、なんでついてくるの?」
衝立の向こう側で着替えようと思ったらリゼがずっと後ろでニコニコしてる。
「背中流してあげようと思って♡」
「リ~ゼ~ちゃん!、セクハラ!」
「リゼ殿、看過できんな」
「むぅ......ダメかぁ......」
リゼがしょぼしょぼとベッドに戻っていくのを確認したら僕はゆっくりお風呂に入る。
「シオンくん♡、今日は私が髪の毛するね♡」
「ありがとうユナちゃん」
「んふふ♡」
ユナちゃんに髪の毛を櫛で梳いてもらいながら乾かしてもらって、髪の毛サラサラだ。
「我も魔法を......」
イザベラさんは自分だけ魔法が使えないのがちょっと寂しいみたい。今度魔道具でも作って、それでやってもらおうかな。イザベラさんの尻尾がしょんぼりしてて可哀そうだ。
「今日の反省会た~いむ!」
何故か僕のベッドの上に集まって、今日の冒険の反省会の時間が始まった。
「まずはあたしたちシオンに頼りすぎだよね~」
「うんうん!、『シオンくん1人でいいじゃん』の状況を突破しないと!」
「うむ......今のままではシオン殿の飾りになってしまう。それは騎士として恥ずべきことだ。我はシオン殿を守る盾であり、敵を貫く矛だ」
イザベラさんの握った拳からは、僕を守って支えようとしてくれる覚悟が伝わってくる。
嬉しいな......前世では誰かと一緒に寝転がるなんてなかったから、みんながこうやって一緒にいてくれるのが。
「明日からは各々もっと頑張ろう!、マジックシールドはほんとにやばいとき限定!」
「うん!」 「うむ!」
「怪我とかしないでね......?」
「も~♡、シオンったら優しいんだから♡」
リゼは照れくさそうに僕のほっぺたをツンツンしてからかって来る。
「んふふ♡、じゃあ、私はここで寝て明日の英気を養いま~す♡」
ユナちゃんは自分の枕を僕の枕の隣に置いて、さりげなく場所取りをする。
「あ~!、ユナズルい!、イザベラちゃんまで!」
僕の左右はすでにユナちゃんとイザベラさんが占領していて、すでに寝転がっている。
「ぶぅ~!、またあたし端っこだ~!」
4つも大きなベッドがあるのに1つのベッドにみちみちに詰まって寝るのはなんだかおかしいけど、でもすっごくあったかくって安心してしまう。
イザベラさんなんて尻尾を巻き付けて僕にくっついてくれる。これもきっと守ってくれてるんだろう。
「あったかいね......」
「こうなったらユナごとシオンを抱きしめちゃう♡」
「んきゃ♡、シオンくんの顔が近くって......♡」
リゼがユナちゃんのことを押して少しでも僕に近づこうとしてくれる。ユナちゃんの何がとは言わないおっきなのがむにゅんって潰れるのがドキドキしてしょうがないけど、必死に目を閉じた。
「シオン殿......すぅ......」
イザベラさんは今日1日前衛として頑張ってくれたから寝ちゃったみたい。
「みんな、明日も頑張ろうね」
「「うん♡」」
翌朝、昨日のステーキの件で冒険者さんたちに感謝されながら、僕らは朝ごはんを食べて僕らは次なるエリアに向かって準備を進める。
「イザベラさん。この腕輪つけてみて」
僕はサクッと作った新しい魔道具をイザベラさんに渡す。
「新しい魔道具か」
「これで火と風の魔法が使えるようになるよ。今晩はこれで髪乾かしてね」
「わ、わかった!」
イザベラさんは尻尾をぶんぶん振りながら嬉しそうに腕輪を撫でている。
「んふふ♡、シオンくんってば優しいんだから♡」
「シオン~♡、あたしにも何か欲しい~♡」
「じゃあ、何か考えておくね」
リゼに詰め寄られてドキドキしながら、僕は曖昧な言葉でその場を凌ぐ。リゼは弓術士だから魔道具の矢とかかな?
「やった♡」
僕らは次のエリアの熱帯雨林エリアに入ってフルーツ類を採取し始める。森には時折魔物の叫び声がこだましてユナちゃんがビクッてする。
「ユナちゃん、危なくなったら僕が守るよ」
「ち、違うもん!、私がシオンくんを......守るもん!」
「あたしだって!」
「我もシオン殿をお守りする」
「ワフ!」
「ピッ!」
僕らのパーティならきっともっと深い階層まで行けちゃうはずだ。だってこんなにお互いを想いあってるんだもん。
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