第13話 大樹
「「「「かんぱ~い」」」」
僕ら『翡翠の竜鱗』は初のパーティでのお仕事を終えて酒場で乾杯している。他のみんなはDランク、僕はCランクの中級冒険者だからガンガン森の奥に入って獲物を狩ってきた。
イザベラさんが敵を引き付けて、リゼがその隙を射抜く。ユナちゃんは回復中心で僕とエル、ニジハは遊撃だ。
「みんなで行っちゃう?、早速迷宮攻略!」
「まだ学校にも慣れてないんだから早くない?、リゼちゃん」
「う~ん、それもそっか」
リゼはちょっと不満そう。もっと冒険したいんだろうね。でもパーティも出来たばっかりで浮かれちゃうのは解かる。
「ユナちゃんの言う通りだと思う。お互いのこともっと知って、ちゃんと『生きて帰れる』って思えるようになってからね」
「おぉ......なんかCランクっぽい!、それにリーダーって感じするよ!」
「迷宮は宝で釣って人間を食べる『生き物』だから......想定外もたくさん起きると思う。でもパーティ内の連携を深めれば想定外にも対処できるよ」
僕も聞いただけの話をしているけど、あってるはずだ。
内部では魔物しか生まれず、魔物を倒すとアイテムをドロップして死体が消えてしまう。まるでゲームみたいな空間が迷宮だ。
世界には7大迷宮という大きな迷宮と小さな迷宮がある。小さな迷宮ももちろんあるけど、この国には大迷宮がある。キバラ公爵の南方にある『ワータラ』という街に迷宮があるのだ。
「じゃあ、迷宮攻略に向けて色々準備する段階にしよっか!、あたしの先輩冒険者に色々聞いてみる!」
リゼたちはすでに冒険者の知り合いがいるみたい。僕なんてずっとぼっちでせこせこ稼いでたからそんな人いないのに......
「我はいつも通り鍛錬を続けよう」
「僕は......魔道具作るね」
「さっすが付与魔導士♡」
皆の分のマジックシールドと体温調節の魔道具とか作っておいてあげよう。
「シオンも会う?、先輩冒険者」
「こ、怖い人じゃなければ......」
「ふふ♡、優しい人たちだよ♡」
「じゃあ、会ってみる......」
今度リゼの知り合いの先輩冒険者に会うことになって、僕らはそれぞれ寮やお家に帰るのだった。
「アタシがリゼとユナと同じ村出身の先輩冒険者のサラで~す♡、よろしくねシオン♡、イザベラ♡」
リゼの知り合いの先輩冒険者もエルフの人で、なんとSランクの冒険者なんだって。
「まさか知り合いが『大樹』とは......」
イザベラさんはどうやらサラさんのことを知っているみたいで驚いている。何か僕だけ蚊帳の外感ある。
「サラ殿は前年の王都武術大会の準優勝者だ」
「へへ♡、すごいだろう少年?♡」
「すごいです!」
「むっふ~ん♡」
「サラ姉、シオンの褒め言葉に気持ちよくなってないでシャキっとしてよ!」
「おっとそうだった......コホン!、まず迷宮に必要なのはDランク以上の冒険者資格、そして戦える準備、寝泊まりの準備、食事の準備......かな?、まぁ何とかなるって!」
「寝泊まり......ぐふふ♡、テントは1個あれば足りるよね?♡」
なんだかねっとりした視線をリゼから感じるけど、確かにこの人数ならテントは1個あれば十分だね。我慢しよう。
「少年♡、今度うちの、むっふぅん♡、うちのパーティハウスに来ないかい?♡」
サラさんは鼻息を荒くして僕を誘ってくれるけど......
「じゃあ、みんなで伺いますね」
「うむ!、みんなでご飯会しよう♡」
みんなを巻き込んじゃったけど、嫌がってないみたいだし結果オーライかな。
「今度迎えに来るからギルド集合ね♡」
「「「「はい!」」」」
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後日僕ら『翡翠の竜鱗』はギルドに集合してサラさんがやって来るのを待っていた。
「お待たせ少年少女!」
急に目の前に現れたのはサラさんと水色の髪のエルフだ。多分スノーエルフっていう種族だね。
「クリスタ!、転移!」
「皆さん近寄ってください」
クリスタさんと呼ばれたスノーエルフに近づいて、僕らは一瞬で別の場所に転移する。
「ここが我が『大樹』のパーティハウスで~す♡」
かなり大きなお家で、外観に煌びやかさはないものの王都に建っていることを考えれば豪邸に入る部類だと思う。
「まぁ♡、可愛い子♡、いらっしゃい♡、待ってたわ♡」
僕らを迎え入れてくれたのは金髪に悪魔の角が生えた悪魔族のお姉さん。中からお料理のいい匂いがしてお腹が空いてくる。
「さぁ座った座った!♡、早く食べよ~♡」
僕が端っこの席に座ろうとしたら真ん中に連れ出されて、さらには僕の隣の席じゃんけんが始まった。僕の決定権は......?、せ、先輩相手だから拒否権ナシかな......?
「むふふ♡、モナの勝ち♡」
「や~ん♡、可愛い♡」
勝ったのは黒猫の獣人さんとさっきの悪魔族のお姉さんだ。
「自己紹介しま~す♡、リーダーのサラです!♡」
サラさんのことはみんな知ってるから、短めの自己紹介だ。
「私はクリスタです。この『大樹』の副リーダーを任されています」
クリスタさんは水色の髪のスノーエルフ。さっき僕らを転移魔法で運んでくれた人だ。
「私はヒルダで~す♡、よろしくね~♡、お料理と魔法使い担当よ♡」
僕の隣に座る悪魔族のお姉さんはヒルダさん。
「モナはモナ」
反対の隣に座るのは黒猫の獣人のモナさん。尻尾がゆらゆら揺れてて可愛らしい。
「私はシーナです!、よろしくお願いしますね♡」
白いうさぎの獣人さんはシーナさん。お耳がピンと立っていてモフモフだ。
「私はアイシャ、よろしく」
最後は銀髪に褐色肌のダークエルフのアイシャさん。傍らには刀がある。僕と同じ武器を使う人は初めて見た。
「以上6名が『大樹』で~す♡」
『大樹』の皆さんの自己紹介が終ったら今度は僕らが自己紹介をする。
ぐぅぅぅ~
「ご、ごめんなさい......」
目の前にお料理がある状態で、自己紹介をしていたら僕のお腹が鳴っちゃった。だってなんだか懐かしい匂い......そう、お醤油の匂いがするんだもん。
「ふふ♡、食べましょうか♡、よそってあげるわね♡」
ヒルダさんにお料理をよそってもらって、みんなで食べ始める。お醬油の匂いの正体は照り焼きのチキンだった。
「シオンちゃん♡、美味しい?♡」
「おいしいです!」
「よかったわ♡、いっぱい食べてね♡」
どうやらヒルダさんが作ってくれたみたいで、いっぱい食べるみんなのことを微笑ましそうに眺めている。
「シオンちゃんはチキンが好きなのね♡」
「はい!、この味付け大好きです!」
「それはヤマトのお醤油っていう調味料で味付けしたの♡、王都でも売ってるから買ってみるといいわ♡」
ヤマトっていうのはトチーヌ王国の東隣。このレイセリア大陸の東の果てに存在する国だ。
「アイシャ的には嬉しいもんなの?、故郷の料理でしょ?」
「そうね。少し嬉しいわ」
どうやらダークエルフのアイシャさんはヤマト出身らしい。
「シオンは何処出身?」
「僕はサガン公爵領なんですけど......」
僕はいつもの通り、ちょっぴり暗い身の上の話をみんなにしてあげる。
「辛くないシオンちゃん?、お姉ちゃんはいつでもお姉ちゃんだからね」
「モナたちはシオンの味方。先輩冒険者としていつでも頼って」
ヒルダさんとモナさんが横から抱きしめてくれてあったかい。
「かぁ~!、許せん!、フシン王国め!、こんないたいけな少年の笑顔を奪うとは!」
サラさんはフシン王国にぷりぷり怒りながらご飯を食べている。
「でも僕は辛くないですから......ありがとうございます、僕のために怒ってくれて」
「「「「!♡」」」」
「じゃあ、何か楽しい話しよっか!、この前の迷宮攻略でね~!」
サラさんの楽しい話を聞きながらご飯を食べて、みんなで笑いあって楽しいご飯会になった。
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