第10話 ご褒美
王都まで帰ってきたら早速密猟者の尋問に入る。こういうのは実行犯だけじゃなくって、売人やそれを買う人までいるっていうのが怖い所だからね。
すぐに色々吐いてくれて、フシン王国が神獣を狙っているらしいっていうのがわかった。国から正式に抗議するって話になったけど、たぶんトカゲの尻尾切りにあうだけだと思うっていうのがみんなの考え。
「ライちゃん♡」
「ミーッ!」
クリスティーン様と一緒に公爵邸に帰ってきて、今はアンゼリカ様がお膝にライを乗せて可愛がっている。今はまだ青白い毛並みの子猫って感じだけど、大人になったらあの巨大なトラになるんだよね。
「今の女王様はどんな神獣を従魔にしているんですか?」
「お母様もフェンリルですわ♡、同じフェンリルの主同士でお会いしたいと言っていますわよ?♡」
「さすがに陛下にお会いするのは......」
「ふふ♡、陛下は怖いお方ではありませんわ♡」
アンゼリカ様はライを撫でながらそう言うけど僕からしたら超偉い一国の主だ。恐れ多いにも程がある。
「大丈夫ですわ♡、わたくしも付いていますから♡、ね?♡」
「はい......」
「では早速参りましょう♡」
「えぇ!、今日?!」
クリスティーン様に馬車に連れ込まれて、僕はこの国の中心である王城へと運ばれる。
「シオン殿、余がリズベット・フォン・トチーヌ。この国の女王だ」
「わ、私はシオンと申します!」
「ふふ♡、シオン様♡、そんなに緊張なさらないで♡、エルちゃんはあんなにリラックスしてますのよ?♡」
エルは部屋にいる陛下のフェンリルと仲良く毛づくろいしている。あれが神獣同士のコミュニケーションだろうか。
「シオン殿、まずはフシン王国からの間者を捕らえてくれたこと、そしてクリスの神獣探しに付き合ってくれたことに感謝をする」
「は、はい!」
ちゃんと冒険者ギルドを通して報酬は受け取ったけどすごい額だった。さすがは王家からの直接の依頼だ。
「そしてスタンピードを無傷で抑え込んだことにも礼を言わねばなるまいな」
「あ、ありがとうございます」
「後日シオン殿には正式に国から褒美を授ける」
「シオン様は何が欲しいんですの?♡」
「う、う~ん......」
急にご褒美に何が欲しいかなんて聞かれても困っちゃうな。お金......はなんだかはしたないし、自分がどのくらいの行いをしたのかがわかんないから要求もしづらい。
「陛下の裁量にお任せいたします......」
「もう♡、シオン様は無欲ですわね♡」
「ピッ!」
クリスティーン様にほっぺたをツンとつつかれる。ニジハもそれに対抗するように僕のほっぺたに体を擦りつけてもふもふしてくれる。
「ワフ!」
「ブラッシングか?、セツナ?」
陛下のフェンリルはセツナっていうみたい。器用にブラシを咥えて陛下にブラッシングのおねだりをしている。やっぱりフェンリルって賢いね。
「陛下、良かったらこのブラシを」
「シオン殿の回復魔法のブラシか......これの代金も帰りに持たせよう」
全然あげる気だったのに陛下に特製ブラシをお買い上げいただいて、セツナのことをみんなでブラッシングする。
「ふふ♡、いつもよりふわふわですねセツナ♡」
「ワフ!」
セツナも喜んでくれたみたいでご機嫌に尻尾を振っている。
夕食の時間になったからそろそろ公爵邸に帰る準備をして、エルと一緒にセツナや陛下にご挨拶をする。
「シオン殿、いつでも遊びに来てくれ。クリスの友として歓迎する」
「は、はい!」
「シオン様が来てくださらなかったらわたくしが呼びに行きますからね♡」
帰りも馬車で送ってもらって、アンゼリカ様の待つ公爵邸で夜ご飯を食べる。
「あら♡、王家からもご褒美を戴けることになったのですね♡」
そう。王家から『も』だ。実はスタンピード完勝のご褒美は公爵家からすでにもらっている。公爵家の最大級の感謝と友好の証であるメダルをもらっていて、ほぼ貴族級の待遇を国内で受けられるようになった。
後日本当に王宮に呼び出された僕は、綺麗な服を着せられて謁見をすることになった。
「面を上げよ冒険者シオン。貴殿の魔法の一閃が我が国の数万の命を救った。故に至上の感謝をこめてこの王家のメダルを下賜する。この国が存続する限り王家はそなたの後ろ盾となろう」
陛下はこの前のイメージよりも偉そうで、何だか荘厳な感じ。これが女王様の覇気か。
メダルを胸につけてもらって謁見の間から退いた後は、別室に通されて陛下とクリスティーン様が入ってきた。あ、ライもいるね。
「シオン殿、まずは謝罪をせねばならんのだ」
「謝罪?」
「うむ......本来ならばメダルの下賜だけではなく爵位や国庫からの褒美をとらせるはずだったのだ。それが貴族からの反対意見が大きくてな......」
「シオン様が平民だからって蔑む者までいたんですのよ?!、許せません!」
クリスティーン様が僕のためにぷりぷり怒ってくれている。僕としては正直メダルだけでも恐れ多いんだけど、2人はそれじゃ不十分だと思ってるみたい。
「わたくしとの婚約なんていうのも褒美の候補にあったのですが......♡」
「それは最高のご褒美ですね」
「も、もう!♡、からかってはいけません♡」
別にからかったわけではないんだけど、クリスティーン様はリンゴみたいに真っ赤になって慌ててくれている。
「僕はメダルだけで十分にご褒美になってますから、本当にお気になさらないでください」
「そうか。感謝するぞシオン殿。女王としてシオン殿に最大限の感謝を」
陛下がいっぱい感謝してくれてるっていうのはすっごく伝わってきてるから、僕はそれだけでも充分心がぽかぽかするのだ。
その後は3人でゆっくりお茶をしてライのことをブラッシングしてあげてから公爵邸に戻った。
そろそろ入学試験があるからそれに向けて最後の詰め込みの時期になる。魔法はもう大丈夫だろうから最後にいっぱい問題集を解くのだった。
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