第99話 恐怖のスリル
「せっかくですので、是非、お二人の体験評価もお聞かせください」
新規オープン予定の超大型海洋テーマパーク開発部長イワキは、笑顔で言った。
レイラとネクリ。
施設内にある、テーマパーク運営会社の応接室に通されていた。お茶も出される。やっと、人心地ついた。
「何よりも、当施設を利用して下さったお客様のご意見ご感想こそが開発部の我々には命なのです」
イワキ部長は、真剣である。
ご意見、ご感想?
レイラは、まだ、頭がぐるぐるしている。
うっかりと、オープン前のテーマパークに入っちゃって、あれこれとギリギリの体験をしたんだけど。
本当にあれが、テーマパークだったのか?
一応、言う事は言ってみよう。
「えーと、私たち、その、うっかりとテーマパークの区域に入っちゃって、岩に乗ったら、それが岩亀で、いきなり動き出したんだけど」
「あはは」
と、イワキ。
「あの岩亀は、ロボットです。あれでお客様を、テーマパークに運ぶのです。このテーマパークは、竜宮城をイメージしているのです。それで亀型ロボットの水上艇なのです。お客様に、是非、ワクワクを感じていただきたいと思いまして」
ロボットだったんだ、あの亀。乗ったら、自動で竜宮城へ連れて行ってくれる仕様。入場スイッチ押しちゃったってこと? ワクワク? テーマパークだど知っていたら、ワクワクしたかもしれないけど。
「あのー、でも」
レイラ。どうも納得いかない。
「竜宮城……この施設についてから、いきなり、激流で高速落下したんですけど。あれ、絶対危ないですよ。振り落とされたら、死んでましたよ」
「いえいえ」
イワキは、自信満々。
「あのウォータースライダーは、完璧に重力制御装置で管理されているのです。お客様がもし亀から落ちても、しっかり優しく受け止めるようになっています。万に一つの事故もありません。これはもう、何度もテストをしてはっきり証明されています。安全快適で、それでいてスリル満点。それを両立させるのが、開発者としての苦労のしどころで」
重力制御装置で完璧に管理されていた? 絶対安全だった?
レイラは、ガックリと脱力する。なんだ。振り落とされないように、ネクリを守るために、あんな必死になってしがみついて頑張ったのに。必要なかったんだ。いや、こっちはテーマパークだと知らないもんだから、スリルどころじゃなかった。完全に、あれで寿命が削られた。知ってれば楽しめたのか?
「じゃあ、あれは」
レイラは、なおも、
「私たち、いきなり暗い洞窟に閉じ込められて、でっかい軟体生物に、襲われたんだけど。結構危なかったんだけど。あれも、安全なんですか?」
「ああ、ヌール君ですか」
イワキの顔がほころぶ。
「ヌール君?」
「はい。当施設のアイドルとして、自信を持って開発した、人造生物です。触手というのは、人類永遠のテーマでして。お客様を優しく持ち上げますので、お子様に人気が出るかと期待しております。ショーの主役も考えております。目玉にショックを与えれば、すぐに動かなくなります。もうこれは、絶対安全で楽しい遊戯装置でして」
お子様に人気? 楽しい? それにショーの主役だって?
どう見てもホラーな仕様だったけど。ヌール君の触手に巻きつかれたときの感覚を思い出す。
あのネチャネチャ、ヌチャヌチャ。
あれが人類永遠のテーマ?
レイラ、いろいろ頭痛が痛くなってくる。テーマパークもいろいろ進化してる。まあ、消費者の嗜好に合わせたいろんな趣向があると、そういうことだろう。
隣のネクリは、唖然としている。本当に死ぬ思いだったのだ。
一応、最後にもう一つ、レイラは訊く。
「あの、ゾンビ軍団に襲われたんですけど、あれも楽しい遊戯装置なんですか?」
「ええ、それはもちろん」
笑顔のイワキ。
「あれもロボットでして。入り口付近の隠し戸にある照明銃で撃てば、簡単に倒れる仕様になっています。たくさん現れるゾンビを、バンバン撃って、どんどん倒して、お客様にスカっとしていただこうという趣向です。いわば、ボーナスステージですな。他にも、いろいろな武器がございます。あちこちの隠し戸から、自分の好きな武器をとって、お好みの倒し方ができる。それも売りでございます。ハードなステージとイージーなステージ、この組み合わせバランスが、開発の肝でして」
レイラは、もう、何も言えなかった。あちこちに、武器が隠してあったんだ。わかるわけないよな。無駄に素手で頑張っちゃった。
ネクリも、ただただ、目を丸くしている。
すごいな。最新型のテーマパークって。
いろいろと想像を超えてくる。




