第97話 確保した男
レイラは、確保した男の首をロックした両腕を、少し緩めた。
口を利けるようにするのだ。
「私がこれからする質問に答えろ。大声は出すなよ。小声で喋れ。いいな? では、始めよう。お前たちの正体は何だ? 宇宙海賊か? ここで何をしている?」
さっそく本題に入る。今は他に誰もいない機械室だけど、誰かが入ってくるかもしれない。そんなにのんびりしている暇は無い。
「海賊?」
組み敷かれた男が、小声で言う。
「何の話だ?」
「質問をしているのは私だ。お前は、答えるんだ」
レイラ、また、ロックした両腕を、締める。
「ぐほっ」
男は、声にならない声を出す。
「わかったよ。あの……これが、どういう遊戯だがわからんけど、その前にさ、お前、その声は、レイラだろ?」
「は?」
目が点になったレイラ。思わず、両腕を緩めそうになる。
今、なんていった? こいつ、確かに、レイラと言った。私の名前だ。私の名前を知っている。なんで? 海賊に知り合いなんていないんだけど。
「俺だよ」
男はうめくように言った。
俺って誰? 知り合い? そういえば、この声、聞いたことがある。それも、つい最近だ。
「ギルバンだよ。ほら、この前会ったばかりの。覚えてるだろう?」
「ギルバン!?」
それなら、つい先日、数列家の事件で、出会ったばかりだ。
ギルバン。私立探偵の男。
そうなの? 本当に? 確かにこの声は。
レイラは、男の顔を覗き込む。男のほうもこっちを向いた。2人は至近距離で見つめあう。
「あっ!」
慌てて顔を離したレイラ。
今の顔。間違いない。
ギルバンだ!
なんで? なんでギルバンがここに!?
ゾンビの出現より、もっとわけのわからない事態。
レイラの頭、もうついていけない。
「わかっただろ」
ギルバンが、言う。
「とりあえず、俺の首から腕を離してくれよ。断頭台に頭が乗っかったままってのは、気持ちいいもんじゃないぜ。さ、どかしてくれ」
「ダメ」
レイラは、手足を、ぎゅうっと使って、ギルバンをしっかりロック。
「おい、何するんだよ。ふざけるなよ。だから、こんな遊戯、俺の趣味じゃねーよ」
「うるさい、黙れ」
と、レイラ。理不尽な展開が続きすぎている。素直に相手の言うことを信じるわけにはいかないのだ。
「あんたがギルバンなのは、わかった。私立探偵のギルバンね。でも、あんたが、表の顔は私立探偵で、裏で海賊の手下をやってた、そういうことだって、充分あり得るじゃない」
「ありえねーよ!」
ギルバンは、必死の声。
「なんだ、そりゃ。何の妄想だよ。俺が海賊の手下? レイラ、何の冗談だ? お前、おかしいぞ。本当にどうしちゃったんだ?」
「海賊の手下じゃない? じゃあ、何なのよ」
「ここで雇われているだけだぜ。警備だ」
「雇われてる? 誰に雇われているの?」
「そりゃもちろん、ここを経営している会社に決まってるだろ」
「会社? なにそれ。何の会社?」
「本当に、お前、何言ってるんだ? この海洋テーマパークを経営している会社に決まってるだろ!」
「海洋テーマパーク?」
◇
バラバラと。
機械室に、人が入ってきた。
明るい色の制服姿だ。制服の胸には、よく見ると、大手テーマパーク運営会社のロゴが入っている。スーツ姿の男がいる。それに、光線銃をぶら下げた警備要員も。
レイラ、ポカンとなる。
なんだ、こりゃ。




