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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.8 ネクリの休日
95/180

第95話 出口



 両腕をダランと前に垂らしながら、ゆらゆら、わさわさ、追いかけてくるゾンビの群れから。


 レイラとネクリ、必死に逃げる。


 相手の動きは、遅い。とりあえずは、逃げられる。でも、ずっと走っているわけにはいない。ゾンビのほうは、どうなのか? ゾンビのスタミナ事情について、レイラはいくら考えてもわからない。いや、もう考えるのも放棄した。


 目の前が。


 十字路になっていた。先が暗くて、見えない。


 一旦、十字路の中心で立ち止まる。どっちに行けばいいんだ?


 その時、十字路の先まで、通路に、ぼおっと白い光が灯った。


 「あ」


 レイラ、息をのむ。


 十字路。どっちに行っても。さっきと同じ棺桶の列が、並んでいる。整然と、きれいに並ぶ棺桶たち。


 「これって」


 あれこれ考える必要はなかった。棺桶が一斉にガタガタと動き出した。そして、蓋が開くと、ボロボロの青白い腕がつき出されてきた。あっちの棺桶からも、こっちの棺桶からも。全部から。


 ぐしょぐしょの顔に白目を剥いたゾンビたち、次々と姿を現す。


 囲まれた。



 「ああ、もう」


 ネクリは、かすれた声で言うと、ペタンと座り込んだ。


 「私……だめ。動けない。レイラ、1人で逃げて」


 「大丈夫よ」


 レイラは、ネクリに笑顔を見せる。


 「あんなボロボロの腐って崩れる寸前の奴らなんて、束になってかかってきたって、なんてことないから! 任せといて」


 そうはいうものの。


 ゾンビと戦うって。


 何しろ武器は何もない。素手で殴ったりしたら、どうなる?


 拳が、ゾンビの、ボロボロの衣服と体に、ぐしゅっと、めり込みそうだ。なんだかドロドロした体液とか出てくるの? それって洗えばちゃんと落ちるの? ゾンビたちのボロボロ、ぐしょぐしょの体に囲まれて、ガブッと噛まれちゃったりするの?


 「そんなの、嫌!」


 想像するだけで、震える。これまで、数々の悪党と対峙してきた刑事レイラである。でも、ゾンビなんて想定したことはない。


 ああ、せめて、棒でもあればいいのに。


 ゾンビの群れは、十字路の4方向から、ゆっくりと近づいてくる。


 死んだ白目、白目、白目、白目、白目、こっちを不気味に見つめている。


 レイラ、両の拳を突き出して構える。


 何十体いようが、関係ない。所詮、ボロ雑巾みたいなものだ。うん、そう思って戦おう。とにかく、ネクリを守らなくちゃ。


 覚悟をしたレイラだが、その時、気付いた。


 

 十字路のすぐ先に。


 赤く光る時で、何か書いてある。



 『関係者以外、立ち入り禁止』


 

 ◇



 「これは」


 レイラ、ネクリの手を引く。


 「ネクリ、扉があるよ。あそこへ逃げ込もう。助かるかもしれない。ほんの数歩だから、頑張って」


 ネクリも立ち上がる。


 「行くよ」


 しっかりとネクリを抱えて、レイラは、急ぐ。


 『関係者以外、立ち入り禁止』と書かれた赤い文字の表示。扉だ。扉があった。ノブもある。


 レイラ、ノブをつかんで、押す。


 扉が開いた。


 「さあ、ネクリ、入るよ」


 中に何があるのか、何が待っているのか、わからない。でも、ゾンビの大群よりはマシだろう。今より最悪なことなんて、考えられない!



 中は。


 明るい照明の空間だった。白く輝いている。


 かなりの広さがある。


 そして。


 大小の機械(メカ)が、ぎっしり、いっぱい並んでいた。


 稼働中らしく、ランプが点滅したり、モニターに表示が出ていたりしている。


 機械(マシン)(ルーム)


 この謎の大規模地下施設は、何の目的で造られたかはさておき、現在も稼働中である。これだけの施設を動かすんだから、それなりの機械制御が必要である。


 「ここがその、制御室ってことかな?」


 キョトンとするレイラとネクリだったが、今はとにかく、ゾンビの追撃をかわさなくてはいけない。この機械(マシン)(ルーム)は、怪物(モンスター)が出てくる雰囲気ではない。


 レイラは、しっかりと扉を背中で抑える。ゾンビを、こっちに入れてはいけない。


 扉の向こうの通路。ゴソゴソ、音がする。ゾンビの群れが、通っているんだ。しかし、ゾンビたちは、こっちに入ってこようとはしない。やはり、決められたプログラムで動く仕様なのかな。やがて、外の音は、消えた。


 「よし、やった。とりあえず助かったみたい」


 ほっとするレイラ。ゾンビとは、もう絶対に関わりたくない。


 ネクリ、床に座り込む。


 

 「おや」


 レイラは、気づいた。


 人だ。


 機械(マシン)(ルーム)に、人がいる。



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