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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.8 ネクリの休日
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第93話 触手獣



 「危ない!」


 レイラ、持った棒で、伸びてきた触手を、叩く。


 ぐにゃっと曲がる触手。すっと引っ込む。


 とりあえず撃退。でも、触手は1本じゃなくて。10本、20本……いや、どんどん伸びてくる。


 「ネクリ、走るよ」


 レイラは片手で棒を握り、もう一方の手でネクリの手を引いて、走る。


 かなり広い空間(スペース)だ。


 必死に走れば、軟体の怪物(モンスター)と距離を取ることができた。岩の洞窟の隅へ逃れた2人、ぜいぜいと、息をつく。


 巨大軟体生物は、無数の触手をニョロニョロ、グニョグニョと蠢かしながら、ピタピタ、とゆっくり動くことしかできない。


 でも、大きな赤い目玉をギョロつかせながら、じりじりと2人に迫ってくる。


 「ここで鬼ごっこしてたら、いつかはやられちゃう。隅を周りながら、出口を探そう。絶対、出口はある。あいつの動きは遅い。十分こっちに引きつけてから、ダッシュするよ」


 レイラは、触手を蠢めかす怪物(モンスター)との距離を計る。相手は、のろのろとした動きだ。


 落ち着いて逃げれば、かわすのは、問題ない。


 

 ピタピタ、ヌルヌル、


 

 嫌な音が、洞窟内に響く。


 大きな赤い目玉、近づいてきた。


 よし。 


 「さあ、ネクリ、行くよ!」


 手を引いて、レイラは走る。


 そこかしこに、ぼんやりとした赤い光。暗いので隅々までは見通せない。落ち着いてよく調べれば、どこかに出口はあるはずだ。


 それを見つけるまで、逃げ切ればいいんだ。


 が、


 「あっ!」


 ネクリが、転んだ。レイラの手、離れる。


 「ネクリ!」


 レイラが振り向いた時、



 ビュッ、ビュッ、



 触手が束になって伸びてきた。さっきよりも速い動きだ。


 たちまち、ネクリに巻き付き、からめとる。巨大軟体生物は、触手の束で、ネクリを高々と持ち上げる。 


 「キャーっ!」


 ネクリの悲鳴。 


 「ネクリ!」


 レイラは助けようと駆け寄るが、


 

 ビュッ、ビュッ、



 伸びてきた触手に、自分も絡みとられてしまう。


 ぐるぐる巻きになって、高々と持ち上げられてしまった。



 ◇



 「こらーっ! 離せーっ!」


 レイラは、自分に巻きついている触手を、棒でバシバシ叩く。しかし、今度は、触手は引っ込まない。ぐにゃっとした手ごたえがあるだけ。束になってるせいか、叩いてもびくともしない。


 ヌルヌルした触手。拳で叩いても、引っ張ってみても、どうにもならない。


 「ちょっともう、これ、何なの?」


 タコだがイカだかクラゲだが。


 こういうのって、人間を捕まえたらどうするんだろう。タコとかイカには確か、歯があるんだっけ? クラゲはどうなんだろう? どうやって捕まえた獲物を食べるんだろう? ああ、そんなこと考えちゃだめ!


 必死なレイラ。


 ふと、自分を睨んでいる大きな赤い目玉に気づく。


 眼球がある。あれなら。軟体じゃないから、攻撃が効くかもしれない。


 よし。あれを狙おう。すべてを懸けることにしたレイラ。


 えいっと手にした棒を、赤い目玉めがけて投げつける。


 

 ◇



 レイラは槍投げの経験はなかったが、奇跡的に、投げた棒は、赤い目玉に突き刺さった。そのままめり込んでいく。


 

 グシュルルウウウ、


 

 軟体の怪物(モンスター)は、なんとも不気味な音を立てた。


 動きが止まる。ゆっくりと、持ち上げていたレイラとネクリを床に下ろした。


 スルスルと、2人に巻きついていた触手がほどけ、縮んでいく。


 

 グシュッ、



 生ぬるい音がして、巨大軟体生物の、動きが止まった。


 倒した、のかな。


 目玉が弱点だったのか。


 レイラとネクリは茫然と。しばらく、床に座り込んで、不気味に赤く発光する軟体の塊を見つめていた。



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