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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.8 ネクリの休日
91/179

第91話 謁見の間



 洞窟の通路。


 行手を塞ぐ大きな扉に、レイラは、近づく。


 すると。

 

 

 スッ、と。


 

 扉が開いた。


 「あっ」


 レイラ、慌てる。扉の向こうからは、強い光が溢れ出す。


 一瞬、視界が奪われる。


 「しまった!」


 自動扉だったんだ!


 これじゃ、こっちは中から丸見え。そして向こうの確認はできない。


 焦る、が。 


 何も起きない。


 目が光に慣れると。


 扉の向こう、大きな広間が見えた。



 ◇



 「すごーい」


 ネクリ、目を丸くしている。


 2人が入った広間。


 かなりの空間(スペース)。天井は高く、大きなシャンデリアがたくさんぶら下がっている。輝く照明。真昼並みの明るさだ。さっきまでの幻想的な洞窟とは打って変わった光の世界。


 床は、人工大理石。入り口からまっすぐ広間の中央に、赤い絨毯(カーペット)が敷いてある。


 絨毯(カーペット)の両側には。


 左右にずらりと、黄金の甲冑兵士が、整列して並んでいた。



 「なんだろう、これ」


 レイラ、甲冑兵士に、慎重に触れてみる。


 中身は空っぽみたいだ。ネクリは甲冑兵士をコンコン叩いているが、何の反応もない。面頬(マスク)の細い目の向こうは、カラッポ。


 頭の兜から、胴の鎧、脛当てから靴まで、全部黄金色の全身甲冑がズラリと並んで立っているだけ。


 「やっぱり、ここ、海賊王の宮殿だよ」


 と、ネクリ。


 うーむ、レイラは考え込んでいる。


 イメージでいえば、まさにそんなところだ。誰がどう見ても。王の間の前にある控えの間、謁見の間といったところか。


 ガランとした広い空間。


 天井のシャンデリア。黄金の甲冑兵士。大理石の床に敷かれた絨毯(カーペット)


 冷たく輝く広間。静まりかえっている。物音一つしない。



 ひょっとして。誰かに()られている?


 レイラは気になるが、もしここに、警報器(センサー)や監視カメラがあるなら、とっくにレイラとネクリは捕まっているはずだ。


 ここをアジトにしている悪党がいるとしても、警報器(センサー)もカメラも設置できない程度の連中?


 燦然と輝くシャンデリアの下で。


 レイラは、何かがおかしい、と頭をひねっていた。


 状況がいろいろ矛盾している。ここはすごく綺麗で、きちんと整備されている。明るい光に満ちた空間。汚れも何もない。まるで新品出来たてみたいだ。


 「ずっと昔にこれを作って、そのまま保存されてきた。そんなことあるのかな」


 呟やいてみる。


 宇宙警察自慢のスーパーコンピューターなら、ここまでの情報で、何か解明できるだろうか。下着モデルの同僚の数列家カオリなら、コンピューターなしでも、この状況を全部見透せちゃったりするの?


 わからない。


 でも。動かなくては。



 ◇



 レイラは、甲冑兵士の腰の剣に、手を伸ばした。


 武器だ。とにかく手ぶらで探検するのは危険だ。何でもいいから、武器があれば、心強い。


 「あれ、抜けない」


 剣の柄をつかんで抜こうとするが、抜けない。鞘とくっついてるみたいだ。鞘ごと剣を兵士から外そうとするが、外れない。


 甲冑兵士は、頭のてっぺんからつま先まで、一式丸ごと、全部きっちりくっついて固定接着されていた。取り外しは、どこもできない。


 考えてみれば、当然だ。これは装飾用に作られた甲冑兵士なんだ。


 「ああ、もう」


 恨めしそうに、黄金の剣を見つめるレイラ。


 何か役に立ちそうなものはないか? 必死に探す。1番奥に立つ兵士の持っているものが目に留まる。


 「これはどうかな?」


 奥の兵士は、大きな真紅の旗を持っていた。旗には美しい紋章が縫い込まれている。旗持ちの儀仗兵なのだ。


 「あ、やった!」


 旗と甲冑兵士。これは接着されていなかった。兵士の手から、旗を抜き取ることができた。


 レイラは、旗から布を外し、身の丈ほどもある棒を、ブンブンと振り回す。


 「ネクリ、やっと、武器が手に入ったよ!」


 ただの棒だけど。素手より、断然いい。いくら素手での体術格闘術逮捕術を学んでいるとはいっても、ビキニに素手では。



 ◇



 「さあ、次、行こう」


 これ以上、ここで得られるものは、何もなさそうだ。


 真紅の絨毯(カーペット)、甲冑兵士の列の先には、また、立派な大きな黄金の扉があった。ここも豪奢な紋様が彫り込んである。


 「いよいよ海賊王のお出ましなのかな?」


 と、ネクリ。


 雰囲気的には、いかにも次が、王の間って感じだけど。そろそろ状況が、はっきりするかな。


 2人が、黄金の扉の前に立つと。


 また、スッ、と扉が開く。


 「なんだこりゃ」


 次の部屋。真っ暗だ。何も見えない。


 2人はとりあえず中に入ってみるが、真っ暗。


 「照明のスイッチ、どこにあるのかな」


 ネクリが言ったとき、背後の扉が、スッと閉じた。



 「キャアーっ!」



 真っ暗闇の中に、閉じ込められた。



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