第91話 謁見の間
洞窟の通路。
行手を塞ぐ大きな扉に、レイラは、近づく。
すると。
スッ、と。
扉が開いた。
「あっ」
レイラ、慌てる。扉の向こうからは、強い光が溢れ出す。
一瞬、視界が奪われる。
「しまった!」
自動扉だったんだ!
これじゃ、こっちは中から丸見え。そして向こうの確認はできない。
焦る、が。
何も起きない。
目が光に慣れると。
扉の向こう、大きな広間が見えた。
◇
「すごーい」
ネクリ、目を丸くしている。
2人が入った広間。
かなりの空間。天井は高く、大きなシャンデリアがたくさんぶら下がっている。輝く照明。真昼並みの明るさだ。さっきまでの幻想的な洞窟とは打って変わった光の世界。
床は、人工大理石。入り口からまっすぐ広間の中央に、赤い絨毯が敷いてある。
絨毯の両側には。
左右にずらりと、黄金の甲冑兵士が、整列して並んでいた。
「なんだろう、これ」
レイラ、甲冑兵士に、慎重に触れてみる。
中身は空っぽみたいだ。ネクリは甲冑兵士をコンコン叩いているが、何の反応もない。面頬の細い目の向こうは、カラッポ。
頭の兜から、胴の鎧、脛当てから靴まで、全部黄金色の全身甲冑がズラリと並んで立っているだけ。
「やっぱり、ここ、海賊王の宮殿だよ」
と、ネクリ。
うーむ、レイラは考え込んでいる。
イメージでいえば、まさにそんなところだ。誰がどう見ても。王の間の前にある控えの間、謁見の間といったところか。
ガランとした広い空間。
天井のシャンデリア。黄金の甲冑兵士。大理石の床に敷かれた絨毯。
冷たく輝く広間。静まりかえっている。物音一つしない。
ひょっとして。誰かに視られている?
レイラは気になるが、もしここに、警報器や監視カメラがあるなら、とっくにレイラとネクリは捕まっているはずだ。
ここをアジトにしている悪党がいるとしても、警報器もカメラも設置できない程度の連中?
燦然と輝くシャンデリアの下で。
レイラは、何かがおかしい、と頭をひねっていた。
状況がいろいろ矛盾している。ここはすごく綺麗で、きちんと整備されている。明るい光に満ちた空間。汚れも何もない。まるで新品出来たてみたいだ。
「ずっと昔にこれを作って、そのまま保存されてきた。そんなことあるのかな」
呟やいてみる。
宇宙警察自慢のスーパーコンピューターなら、ここまでの情報で、何か解明できるだろうか。下着モデルの同僚の数列家カオリなら、コンピューターなしでも、この状況を全部見透せちゃったりするの?
わからない。
でも。動かなくては。
◇
レイラは、甲冑兵士の腰の剣に、手を伸ばした。
武器だ。とにかく手ぶらで探検するのは危険だ。何でもいいから、武器があれば、心強い。
「あれ、抜けない」
剣の柄をつかんで抜こうとするが、抜けない。鞘とくっついてるみたいだ。鞘ごと剣を兵士から外そうとするが、外れない。
甲冑兵士は、頭のてっぺんからつま先まで、一式丸ごと、全部きっちりくっついて固定接着されていた。取り外しは、どこもできない。
考えてみれば、当然だ。これは装飾用に作られた甲冑兵士なんだ。
「ああ、もう」
恨めしそうに、黄金の剣を見つめるレイラ。
何か役に立ちそうなものはないか? 必死に探す。1番奥に立つ兵士の持っているものが目に留まる。
「これはどうかな?」
奥の兵士は、大きな真紅の旗を持っていた。旗には美しい紋章が縫い込まれている。旗持ちの儀仗兵なのだ。
「あ、やった!」
旗と甲冑兵士。これは接着されていなかった。兵士の手から、旗を抜き取ることができた。
レイラは、旗から布を外し、身の丈ほどもある棒を、ブンブンと振り回す。
「ネクリ、やっと、武器が手に入ったよ!」
ただの棒だけど。素手より、断然いい。いくら素手での体術格闘術逮捕術を学んでいるとはいっても、ビキニに素手では。
◇
「さあ、次、行こう」
これ以上、ここで得られるものは、何もなさそうだ。
真紅の絨毯、甲冑兵士の列の先には、また、立派な大きな黄金の扉があった。ここも豪奢な紋様が彫り込んである。
「いよいよ海賊王のお出ましなのかな?」
と、ネクリ。
雰囲気的には、いかにも次が、王の間って感じだけど。そろそろ状況が、はっきりするかな。
2人が、黄金の扉の前に立つと。
また、スッ、と扉が開く。
「なんだこりゃ」
次の部屋。真っ暗だ。何も見えない。
2人はとりあえず中に入ってみるが、真っ暗。
「照明のスイッチ、どこにあるのかな」
ネクリが言ったとき、背後の扉が、スッと閉じた。
「キャアーっ!」
真っ暗闇の中に、閉じ込められた。




