第90話 大海賊の洞窟
洞窟の階段。
照明も、なんだか色彩が増えて華やかになってきている。
さっきまでの青、紫、碧に、赤、黄色、ピンク、琥珀色、その他、色とりどりになってきている。人工石の照明。キラキラと輝いている。
「綺麗だね」
ネクリ、少し気を取り直している。
確かに、明るく、華やかな雰囲気だ。
「ほんと、何のためにここを作ったんだろうね」
レイラは、呟く。
世の中に知られていない、沖の海底の秘密基地。
妙に凝った、豪奢な通路を作っちゃったりしてる。
ここを作った時、よほどカネとヒマがあったのか。通路におしゃれな照明とかしちゃってるってことは、この先にはもっと豪華な部屋とかあるのか?
これは、いったい?
ひょっとしたら、遥か遠い昔に、宇宙戦争に備えて作った秘密の地下シェルターとかではないのか。国家の要人たちが、ここに隠れるための。それなら辻褄が合う。国家規模の計画で造ったものなら、何でも説明がつくといえばつくんだけど。
戦争に備えた、秘密の地下シェルター。
宇宙は、今、ずっと平和である。戦争の脅威がなくなって、ここは、放棄された。そして、ずっと時代が降って、たまたま入り口を見つけた誰かが、ここを利用していた。
そんなところかな。
◇
「ねえ、レイラ」
ネクリが、手を引っ張ってくる。
「私、気づいた。ここ、海賊の隠れ家だよ」
「海賊?」
能天気だなあ、と、レイラは呆れる。さっきまであんなに怖がってたのに。ちょっとウキウキしているみたい。確かに色とりどりの華やかな空間だけどさ。
「ここは大海賊の城! あっちこっちから奪ってきた財宝で、ここを飾り立ててるんだよ」
ネクリは、自分が謎を解いたと言わんばかりに、胸を張る。
海賊って。
レイラは、頭痛が痛い。
現在も、宇宙野盗だ宇宙海賊というのは存在するけど。こんな地下施設を作るほど、予算や人員のある宇宙海賊なんて、存在しないはずだ。
もっとも、国家が作った地下シェルターを、宇宙海賊がたまたま見つけて、自分たちのアジトにしている。そういうことならあるかもしれないけど。
「ネクリ、油断しちゃだめ」
レイラは、言った。
「ここにいるのが宇宙海賊だとしても、水着の女の子がつかまって、良い扱いを受けるとは、とても思えないからね。誰に出会っても、警戒しなきゃ絶対にダメ。いい、わかった?」
「はーい」
ネクリの声、なんだかんだ浮き立っている。
本当に能天気な子だな。ま、あんまりガタガタ震えていられるよりは、いいんだけど。
◇
誰かを見つけたら、出会ったら、どうしようか。
レイラは、冷静に考えている。
こっちは武器も道具もない。本当に水着だけ。それに、ネクリも守らなければならない。
相手がどんな人間なのか、やばい奴なのか、武器を持っているのか、そういうのを確認してから対処している時間は無い。先に光線銃を抜かれたら、それで終わりだ。宇宙海賊かどうかは別として、ここが悪党のアジトの可能性、それは依然として高いのだ
自分の生命と安全を確保する手順。
相手が危険な悪党の可能性がある以上、まずは相手の身柄確保拘束。それが最優先だ。その後、相手の素性を確認する。それでいい。相手が悪党で、武器を持ってたら、取り上げてこっちのものにする。
容赦のない戦いだ。
◇
キラキラ光る階段を上ると。
大きな扉があった。扉にも、色とりどりの照明石で華麗な紋様が描かれてある。
「ネクリ、私が先に行くから、気をつけてね」
レイラは、扉に近づく。




