第88話 海底洞窟の謎
洞窟のさらに奥へ。
少し行くと曲角がある。左に伸びている。
レイラ、ネクリの手をしっかりと握って、左に曲がっていく。
「あれ」
明かりが、さっきより大きくなっている。洞窟内部全体が見渡せる。
「なんだこりゃ」
岩壁が光っている。レイラは、調べる。
「これ、苔とか生き物じゃないね。どう見ても、岩そのものが光っている」
紛れもなく、岩が所々光っているのだ。それも青や紫や碧色に輝いている。結構明るく、幻想的に洞窟を彩っている。
「綺麗……」
ネクリも、驚いている。
レイラ、コンコンと輝く岩を叩く。
「これって光る石なの? でも、光を反射するんじゃなくて、自分で発光する鉱物なんて、あったっけ?」
またまた、自分の知識の乏しさを呪うことになる。
ともあれ。
洞窟内は明るい通路なのだ。
安心して歩いていける。
しかし、曲がりくねっているので、先までは見通せない。狭くなったり広くなったり、天井が高くなったり低くなったりする。
何度目かの曲角を越えたとき。
「きゃああーっ!」
ネクリの悲鳴。
レイラもギクっとする。
洞窟の壁に凭れるようにあったのは。
人骨だ。
◇
真っ白な人骨。髑髏から、胴体の部分から手足まで。きれいに揃っている。それも、3体分ある。
どう見ても、人骨にしか見えない。
レイラは、かがみ込んで調べる。
刑事である。人間の死体や、人骨は、何度も見ている。後ろでガタガタ震えているネクリと違って、冷静に人骨を調べる。と、いっても触る気にはなれないが。刑事の現場保存の習性でもある。
「なぜ、ここに人骨が……」
レイラが呟く。刑事モード全開。
「あ、ひょっとして」
ネクリが、震えながら言う。
「さっきの岩亀さんが、ここに運んできたんじゃないのかな。ここ、あの亀さんの巣なんだよ。それで、時々、人を攫ってきて、ここにストックして、食料にしてるんじゃ。そうよ、亀さんはここに卵を産むんだ。そして、生まれた子亀がストックされた食料を食べるとか、そういうのじゃないの? きっとそうだよ」
ネクリ、顔はもう真っ青というか、土気色になっている。
「落ち着いて、ネクリ」
レイラは、言う。
「それはちょっと違うと思う。よく見て。骨の周りには、何もない。衣服も、持ち物も。亀が連れてきた場合、攫われてきた人の持ち物は、どうなったんだろう。骨だけ残るなんて不自然。それに、食べられたなら、こんなきれいな形で骨が保存されるわけがない。バラバラになっているはず。だから、動物の食料とかそういうのではないよ」
「そっか」
ネクリ、ほっと、息をつく。
レイラは、続ける。
「同じ理由で、ここに流されて、遭難したっていうことでもないよね。遭難して、ここで亡くなった場合でも、やっぱり所持品が残るはず。持ち物が全部腐って無くなるなんてありえないから」
「レイラ、すごい」
ネクリは、素直に感心している。刑事としての初歩的な実況検分の結論なんだけど。
「で、どうなるの? 真相は」
「うん。これは……人間の仕業ね」
「人間の仕業?」
ネクリ、大きく目を見開く。
「そう。誰かが死体をここに置いた。そして、衣服や所持品を残らず剥ぎ取って、持っていった。ただ、死体だけをここに残して。そういうことができるのは、人間以外考えられない。だから、人間の仕業ね。これは間違いない」
「そ、それじゃあ」
「1番の可能性は、この海底洞窟が、悪い奴らの隠れ家、アジトだってこと」
ネクリ、息を呑む。
白骨死体。人間の仕業。
悪党のアジト。
岩亀の巣とかいう結論より、よっぽどやばい現実だ。
ネクリは震えが止まらない。気づくと、しっかりとレイラに抱きついていた。




