第87話 光る洞窟の中で
広い、薄くぼんやりと明かりのある洞窟で。
取り残されたレイラとネクリ。
座り込んで、しばらくは無言。
ややあって。
「いったい何だったんだろ、あの亀」
と、レイラ。
「本当にあの亀、竜宮城だかなんだか知らないけど、ここに私たちを連れてくるのが目的だったみたい」
岩亀の習性。何か知ってることがないか、必死に思い出そうとするが、何も出てこない。亀なんてペットショップか水族館でだけ見るものだと思っていた。
ネクリは、キョロキョロと周りを見回している。
「洞窟の岩が、所々、光っている。これって何なんだろう?」
「うーん」
レイラも洞窟をぐるっと見回し、
「発光生物じゃないかな。苔とか。海の中にも、光る生物って確かいたよね」
洞窟の中を照らすぼんやりとした光。こんなの見るの初めてだけど、そうとしか考えられない。
せめて携帯端末があれば、何でも撮影してすぐ検索して調べられるのに。いや、それ以前に携帯端末があるなら、すぐ救援を呼んで、無事解決するんだけど。
◇
「これから、どうしよう」
ネクリが、当然の疑問を口にする。
「ここにいれば溺れることは無い。でも、救援は来ない。そうだよね」
と、レイラ。
洞窟の奥まで流されてきた。とにかく外に出ないことには話にならない。外に出て、気長に誰かが通りかかるのを待つ。それしかない。
外に出る。
来た道は?
海から洞窟に入って、すごい急斜面激流を下ってやっとここに着いてーー
「あれ?」
レイラは、気づく。
洞窟は、急斜面になって、地底に伸びていた。洞窟の入り口は、半分海水に浸かっていた。だったら洞窟は海水でいっぱいになるはずだ。
「ここって海面より下なのに、なんで海水が来ないんだろう。大きな空気溜まりみたいなものなのかな」
わからない。レイラ、この辺の知識はあやふや。ネクリも首をかしげている。さっぱりわからない。
なんであれ、ここにいれば息ができる。それだけは確かだ。
問題はどうやってここから出るかだけど。
レイラは、また考える。
来た道を戻るのは。
激しく降る激流の中を逆に登る。そして海面に出たら、さらに無人島の周囲の断崖を上ってーー
無理。絶対無理。
ネクリがいなくても、レイラ1人だって、だめだ。
他の方法を考えなきゃ。
◇
「レイラ、見て」
洞窟の奥を見つめていたネクリ、立ち上がる。
「あっち、まだ奥に続いてるよ。行ってみよう」
洞窟の奥。よく見ると、確かにまだぽっかりと穴が開いている。その向こうがどうなってるのか、わからない。真っ暗闇の世界。
でも、行くしかない。
来た道を戻る事は、できないのだ。とにかく行ける道を、行ってみるしかない。
「そうだね。ネクリ、行こう」
レイラも立ち上がった。
うん?
ネクリが、レイラの手を握った。やっぱり怖いんだ。当然だろう。
「レイラ、ありがとう」
洞窟の奥を見つめたまま、ネクリが言う。
「え?」
レイラは、ネクリの横顔を見つめる。
「ありがとうって、何が?」
「亀に沖に連れていかれた時、レイラだったら、海に飛び込んで1人で泳いで岸に戻れたんじゃない? 私のこと心配して、一緒に来てくれた。そうなんでしょ?」
「あはは、そんな」
レイラは、首を振る。
「そんなことない。急なことで、私も慌てちゃって、どうすることもできなかったの。それだけ」
「そう? さっきだって、すごいスピードで落ちる時、私のことを必死に庇って守ってくれたよね。本当にありがとう」
「ううん、なんでもないよ。そもそも、立入禁止区域にあなたを連れて来ちゃったのは、この私だし。本当にごめんね」
「謝らなくていい。私、レイラと一緒にいれば、何があっても絶対大丈夫、そんな気がするの。それに」
「それに?」
「さっき、レイラ、私にしっかり覆いかぶさってくれたよね。レイラの胸、ずっと私の背中に押し付けてたよね。本当にすっごく大きいんだね。びっくりしちゃった。本当にうらやましい」
「そ、そんなでも」
レイラのメロン級の胸。ネクリは気にしてるんだ。
「さ、行こ」
レイラは、ネクリの手をしっかりと握ると、洞窟の奥へ歩き出す。




