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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.7 瀕死の下着モデル
82/180

第82話 数列家下着モデルの戦い



 レイラは、モデルの寮となっているタワービルに戻った。


 そしてカオリの様子を見に行く。


 カオリの部屋には、ルイーザと、白衣の男がいた。


 白衣の男は医者だった。カオリを心配したルイーザが、連れてきたのだった。


 さっきは朦朧として、譫言を言っていたカオリだが、今はスヤスヤと眠っている。目も開けない。


 

 「これは、心配ないですな」


 診察を終えた医者は言った。カオリは、ずっと眠っている。


 「確かに高熱で、今は目も開かんが、もうじきよくなるでしょう。峠は越している。これはなんというか、頭の使いすぎで起きる発作熱のようなものですな」


 「発作熱? 頭の使いすぎで熱が?」


 ルイーザ、目を丸くする。


 「そんなことあるんですか?」


 「うむ」


 医者は咳払いをして、答える。


 「なんというか、世の中には、普通じゃない頭の使い方をする人間も居る。そうすると、ちょっと特殊な症状が出るんです。稀なこととはいえ、そういう事例が報告されています。ま、一般の我々には関係ないことですな。よほど頭が捩れるくらい考えないと、出ない熱だそうです。3 、4日、水を飲んで寝ていれば自然と治ります」



 医者とルイーザは、帰っていた。



 ◇



 レイラはまだ心配だったので、部屋に残ってカオリのことを見守っていた。


 数列熱。頭の使い過ぎで起きる発作熱。


 みんながそういうんだから、それが正しいのだろう。


 3、4日寝ていれば治る。


 さっき私が来たときのカオリは、1番最悪の状態の時だったんだ。まずい時に来ちゃったんだ。


 なんだ。 


 レイラはがっくりと力が抜ける。


 結局今日は、1人で無駄に騒いだだけだったんだ。



 しばらくして。


 カオリの目が開いた。


 「レイラさん」


 起き上がる。すっきりとした顔をしている。頬の赤みはもうなく、いつもの病的な白い(はだ)である。


 「あの、ずっと私の看病してくれたんですか? 熱でうなされていた時、レイラさんがそばにいてくれたの、覚えています」


 あんまりちゃんと覚えていないようだな。別にいいけど。


 レイラは、にっこりとする。


 「よかった。みんな心配したよ。お菓子とサンドイッチあるよ。ドリンクも、いろいろ」


 冷蔵庫に入れておいた、お見舞いの品を取り出す。


 カオリは、ケーキを少しずつ食べる。


 「すっかりご心配おかけしたみたいですね。申し訳ありません。時々こうなるんです。これは、数列熱なのです」


 「うん。聞いたよ」


 「この宇宙の、森羅万象、万物を支配する法理を究めることが数列家の道なのです。それは時にこの脳に耐え難いことなのです。これは戦いなのです。私は戦い続けなければなりません。それが数列家の宿命なのです。」


 「そうみたいだね。あんまり無理しないでね」


 レスタード。数列に取り憑かれたあげく、暴走した男。カオリもあんな風にならなきゃいいんだけど。


 「あ」


 カオリが、何かに思い当たった。


 「大変だ。こうしちゃいられない。私、大事な仕事があったんです」


 「ああ、その件ね」


 と、レイラ。


 「大丈夫よ。もう片付いたから。数列家協会に問い合わせてみて」


 「え?」


 驚くカオリ。


 「レイラさん、ご存知なんですか?」


 「うん。少しね」



 キョトンとしてこちらを見つめるカオリを前に、レイラは安堵していた。


 数列家のトラブルに巻き込まれちゃったけど。


 無事に一見落着した。とにかくよかった。


 連絡先(アドレス)も1つ手に入れたし。



 ◇



 華やかな下着モデルの世界に身を置いて。


 レイラの潜入捜査は続く。



( 事件簿No.7 瀕死の下着モデル 了 )



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