第78話 ヒーロー参上!
今、まさに自分の頭上に振り下ろされようという革棍棒。
もうダメだ。レイラは、目をつむる。
その時。
ガシャン!
音がした。ガラスが割れる音。
レスタード、音のする方を振りむく。
ビュウウ、
閃光が走った。レイラがよく知っている光の条。
光線銃だ。
撃ち込まれた光線銃の光線が、レスタードの革棍棒を吹っ飛ばした。
それと同時に。
窓から男が飛び込んできた。
ものすごい身のこなしだ。レイラは息を呑む。素早く、無駄がない。
迷いのない一直線の動きで、レスタードへ突進。教授はすっかり固まっている。大きく目を見開き、身動きひとつ出来ない。
飛び込んできた男。黒のソフト帽にトレンチコート。片手に光線銃。そして、もう一方の手で持っているものを、レスタードの胸に慣れた手つきで押し当てる。
ブルルっと体を震わせる数列家の教授。
そのまま白目を剥いて、崩れ落ちる。
飛び込んできた男は、無駄のない動作で倒れるレスタードを支え、床に寝かせると、心臓の鼓動をチェックする。
電撃ショック系の武器で、レスタードを眠らせたんだ。
レイラには、わかった。
それにしても、ものすごく鮮やかな手際だな。
逮捕確保術のプロであるレイラも舌を巻く動きだった。
宇宙警察でも、こんな動きができるのは、よほど訓練を積んだ特殊部隊の人間だけである。
床のレスタードの状況をチェックし、手錠を嵌めると、男は立ち上がり、レイラの方を向く。
「あ」
レイラ、唖然となる。
黒のソフト帽とトレンチコートの男。
ここに来る前に出会った、ギルバンだ。
◇
ギルバン!
なんで?
なんであの男がここに?
さすがのレイラも混乱する。
どういうことなの?
まさかずっと、下着モデルの寮から、私をストーキングしてきたってこと?
いや、そんなことあるはずない。尾行には注意していた。刑事の習性である。絶対に誰も尾けてこなかった。それは間違いない。
ギルバンは、光線銃を拳銃嚢に収める。
そして、コートの内ポケットから強化ナイフを取り出した。
身をすくめるレイラ。
しかし、ギルバンは、これまた慣れた手つきで、レイラの拘束具をスパッと切った。ガシャンと床に滑り落ちる拘束具。
急に体が自由になったレイラ。
椅子の上でグダっとなる。そのまま、ずり落ちそうになるのを、なんとか必死にこらえる。
「大丈夫か」
ギルバンが、レイラの肩を支える。がっちりとした強い手だ。
「あり……がと」
レイラはやっと言った。
急に助かって。安堵で緊張の糸が切れ、めまいがした。身体と頭の痛みがまた気になりだす。クラクラする。
しばらくギルバンに支えてもらっていた。
◇
「ありがとう。もう、大丈夫」
レイラはふうっと息をつくと、しっかりと言った。
「無事みたいだな」
と、ギルバン。落ち着いた表情をしている。ずっとだ。こんなこと何でもないという顔。
「あの」
レイラはしっかりとギルバンの瞳を見て、
「どうしてここに来たの? なぜ、わかったの?」
「ん?」
ギルバンは、ニヤリとする。
「それはもちろん、姫を助けに」
「え?」
レイラは赤くなる。
「もう、ふざけないで」
ギルバンは、あっはっは、と笑う。
「僕はこのレスタードを確保するためにきたんだ。依頼されたんだよ。数列家協会にね」
「確保? それって」
レイラはまじまじとギルバンを見つめて、
「あなた、いったい何者なの?」
「探偵さ」
ギルバンは、カードを取り出した。
探偵証だ。間違いない。宇宙警察が認可した証明書だ。
この男、ギルバンの正体は。
宇宙警察公認の私立探偵。




