第77話 話し合いの先にあるもの
レスタード教授。
数列家。
深く刻まれた皺の中で、瞳を爛々と光らせている。妖しい光だ。すっかり数列家である自分に陶酔している。自分が数列のお告げだなんだで万物を支配できると、本気で信じているみたい。
やばいタイプだ。
自分の信念というか、思い込みのためなら、どんなことでもやってのける。そういう人間だ。
いや、今やってることだって、既に宇宙公法を逸脱したやばい行為なんだけど。
とりあえず、市民の義務を説いても無駄なようだ。それはよくわかった。
この人は法も警察も信じていないんだ。
「お嬢さん」
レスタードは、きっとレイラを睨みつけ、革棍棒をまた突きつけてくる。
「よろしい。あんたは何も知らん。そういうことでいいだろう。確かに事情を知っていたら、こんな間抜けなやり方をするわけは無い。それはそうだ」
宇宙警察の俊英エリートであるレイラは、間抜けと言われて少し傷つく。
レスタードは続ける。
「友達の代わりに来た、そうだったな。それでは、友達の事について話してもらおう。カオリという名前だったな。で、そのカオリはどこに住んでいるのじゃ? 住所と、建物に入るための暗証番号を教えてもらおうか。わしが直接行って、カオリとやらから、話を訊くことにしよう」
レイラ、黙り込む。
さっきは自分をおびきだす罠だと警戒していたけど、今度は自分で乗り込むと言うんだ。
レスタードが、カオリと会ったら?
平和的な話し合いをして、お互いの誤解を解いたり問題を解決したりとか、できたりするのだろうか。
数列家同士、話が通じる?
いや。
とてもそうは思えない。それに今、カオリは高熱だ。まともに話すことも、動くこともできない。
カオリのところに、この男を行かせるわけにはいかない。
革棍棒を持ち出すような男を。
どうしようか。
ここで、でたらめな住所をしゃべったら?
騙されたと気づいたこの男は、戻ってきて今度こそレイラをぶちのめすだろう。
時間稼ぎにはなる……かもしれないけど。
危険だ。
ともあれ。
「私の友人は、今、高熱なんです。誰にも会うことができません」
「どこにいるのか教えろと言っているのじゃ。どうするかはわしが決める。さ、住所を言うのだ。いっておくが、嘘をついたらただでは済まぬぞ」
「……言えません」
「そうか」
眼をギラギラさせるレスタード。
「少し長話をしすぎてしまった。最初から、こうするべきだったんだな」
革棍棒を振り上げる。
「お嬢さん、すぐに全部喋ってもらうからな。喋る気にさせてやる。これも全て、万物の王たる数列の導きなのじゃ」
うわあっ、
レイラ、今にも振り降ろされようという革棍棒に、恐怖する。
なにやってるんだ! なんてこった!
やっぱり話が通じない! そんなの宇宙開闢以来、決まっていたことなんだ!
話し合いは終了。あとは……暴力?
革棍棒で……
宇宙警察の刑事の私が、こんなところで終わるの?
「いやっ!」
レイラは叫ぶ。
「誰か、助けて!」
大きな研究室いっぱいに、響き渡る声。




