第74話 捕縛された下着モデル
頭がじんじんする。
苦しい。気分が悪い。息ができない。
いや。完全に息ができないなら、生きていないはずだ。
え?
生きている。
私、生きてるの?
それは確かにレイラの意識だった。
まだ、ぼんやりしてるけど。
何も見えない、真っ暗だ。自分の身体があるのかどうかさえわからない。息をしているのかどうかもわからない。でも、意識はある。これって生きてるっていうの?
ゆっくりと、痛む頭にあれこれのことが甦ってくる。
カオリに言われた……
ええと、そうだ、レスタード教授。会わなきゃいけないと。
で、会いに行って。なんだか急に攻撃されて、それから宙に浮いて……いや、宙に浮いたんじゃなくて、そうだ、落とし穴に落とされたんだ。
それで、全て消えた。
だいぶ頭がはっきりしてきた。今の状況。
完全に数列家レスタードの攻撃、策に嵌った……
どうなるんだろう、私。
いやそもそも、今、私ってどうなってるの?
ひょっとして。意識はあるけど、何も見えない。身体の感覚も全くない。
これって。
〝分解〟とか?
もうとっくに私、数列道50億年の秘法とやらで、分解されちゃったの?
それってどうなっちゃうの? もう、私は私じゃないってこと? 私の体は消えちゃったってこと? 小さな断片にバラバラにされて。
そんなの、そんなの、
「いやああああっ!」
叫ぶレイラ。
急に。
周囲が見えた。光。まぶしい。思わず目をつむる。
目を開けると。
ここは?
理解するのに、しばし時間がかかった。頭はまだズキズキするが、記憶と記憶、意識と意識がゆっくりとつながる。
レスタードの家だ。大きな部屋。さっきと同じだ。紙の本がぎゅうぎゅうに詰め込まれている本棚に、所狭しと並んでいる大小のコンピュータにディスプレイ。
床は。落とし穴の蓋は、元に戻っている。
なんだ?
床の下に落ちたのって、もしかして幻覚?
いや。
あれは幻覚じゃない。
身体感覚も戻っている。あちこちと痛む。
椅子に座っていた。座っている、そうではない。しっかりと縛りつけられていた。手首は後ろで椅子の背に。足首も揃えて椅子の足に縛りつけられている。
専用の拘束具を使っているようだ。頑張って身体を動かそうとするが、もぞもぞとしか動けない。
脱出は無理……みたい。
きっちりと椅子に縛られたレイラを。
レスタードが見下ろしていた。すぐ間近だ。深い皺の顔。瞳をギラギラとさせている。
教授の手には。
棍棒が握られていた。革製のようだ。誰かをひっぱたくのにちょうどいい仕様。
「もう気がついたのかの、お嬢さん」
レスタードが言う。
「見かけによらず強靭な精神と身体の持ち主のようじゃな。安心して、こいつで話が訊ける」
教授は、手にした革の棍棒を愛しそうに擦る。
「お嬢さん、全て話してもらおうか」
ええと。
どうしよう。
革製の棍棒で話をする、そう言ってるの?
ちょっと剣呑だな。うん。
すべて話せ? すべてって。
話すことは全部本当に話したんだけど。
落とし穴、拘束具、棍棒。
こんなの自宅に準備して、来訪者を迎えている人なんだ。
話が通用する……のかな。




