第72話 また数列家の呪文
「このわしに、ついてこいと? このわしの城から引っ張り出したいと?」
レスタード、声を高める。
「あ、いえ」
なんだか雲行きが怪しい、とレイラ。
「無理にではなくて、できればなんですけど」
「できれば、ついてこい」
レスタードは、反芻する。そして、ニヤリとする。いや、顔を歪めたといったほうがよかった。
「お嬢さん、そろそろ下手なお芝居は終わりにしてくれないかな?」
「ええ?」
お芝居? 私の態度、そんなにおかしかったかな。全部事実をちゃんとしゃべっただけなんだけど。
レイラは慌てる。
「あ、本当です。本当に、今、話したことが全てなんです。これ以外のことは何も知りません」
なんだか、かなりまずいやり方で言い繕ってるように我ながら思う。確かに不自然な話には違いない。でも。数列家が絡むと話が妙な方向に行くのは、絶対に自分のせいじゃない!
レスタードは、顔を歪めたまま、ふっふっと笑う。大小の顔の皺が一層深くなる。
「お嬢さん、本当につまらない芝居だ。もうやめなさい。友人が熱を出した。譫言でわしの名前を言った。よくそんな口実で、わしを引っ張り出せると思ったな。見え透いとるぞ。わしをおびきだすのが目的だったのか。残念ながら、あんたはあまり賢くないようじゃ。数列というものをちょっとでも齧っておれば、もう少しましな口実が用意できただろうにな」
私、宇宙警察学校で成績優秀抜群だったんですけどけど!
レイラはキリキリする。しかし、潜入捜査中の身として、下手な芝居と言われたのは、傷つく。少なくとも刑事だとはバレてないし。
ともあれ。
なんだかこの教授に、妙な勘違いをさせちゃった。完全にレイラのことを疑っている。これ以上ここにいても、得るところはないだろう。
レイラは、椅子から立ち上がる。
「失礼しました。誤解をさせてしまって申し訳ありませんでした。それでは、今日は帰らせていただきます」
「待ちなさい」
レスタードの鋭い声。
「人を罠に嵌めようとして、しくじったら、はい、さよなら、か。そういうわけにはいかん」
「え?」
罠?
話が大きくなってるな。なんで私が教授を罠に嵌めなきゃいけないの?
レスタードも立ち上がった。
手になにか握っている。
あれは。
「数列よ。森羅万象を、星々行き来を開示せよ。振動を合わせよ、人の心に、身体に」
レスタードが唱える。
あ、これは。
前に、カオリから数列攻撃を食ったときの呪文。数列家って、みんな同じ呪文を使うんだ。なんで呪文が必要なのかよくわからないけど。
教授が手に握っているもの。数列家の能力発動のための数列杖だ。カオリのと同じ。
「残念じゃな、お嬢さん、罠に落ちたのは、あんたの方だ」
レスタードの声。
え?
じゃあ、なに?
これから私を攻撃するってこと?
何かの勘違い誤解で? そういうのやめて欲しいんだけど!
レスカードの手の数列杖から。
数字や記号が、踊り出してきた。
大きな部屋いっぱいに飛び跳ねぐるぐると回る。




