第69話 教授の家
やってきたエアカータクシーに乗り込むレイラ。
タクシーといっても無人で、自動運転か呼んだ客の自己運転か選べる仕様だ。
レイラは自動運転を選択し、目的地を音声入力する。
発車するエアカー。
シートに凭れたレイラ。頭はまだカッカしている。
何だったんだ? あの男は。
ギルバンのことを思い出す。
あいつはカオリとどういう関係なんだ?
まさか、あんな男がカオリの友達のわけはない。
と、すると。
数列家。その仲間か。数列家、大昔から続いている数列道といっていた。組織や団体があるのだろう。数列家の組織の関係者だろうか。それでカオリを知っていて、会いにきたとか、そんなところか。
しかし、あの男。
どう見ても数列家にが見えない。カオリとはまるで違う。
あの身のこなし。油断のない目配り。頭脳より、肉体を鍛えた武闘派。
プロだ。間違いなく格闘訓練を受けている。
その時、レイラは気づいた。
さっき、あのギルバンという男の顎にパンチを入れたときのこと。
あれは。
避けようと思えばできたのに、避けなかった。そんな動きだ。
ふと、宇宙警察学校での、格闘訓練のことを思い出した。ギルバンの身のこなし。体術格闘の教官の動きに、似ていた。
「あー、もう、私、何をやってるんだ」
レイラはますますカッカする。顔が真っ赤になっている。
「あんなチンピラに見透かされ、見切られるなんて」
生意気なやつだったな。妙に馴れ馴れしかった。
「こっちが女の子だからってバカにしやがって」
レイラが1番嫌な態度だ。苛々が募る。
落ち着くんだ。自分に言い聞かせる。
自分は宇宙警察の刑事だ。あんなやつ何でもない。今日はたまたま、刑事の身分が使えないから、ちょっと遅れをとっただけだ。
警察証が使えればあんなやつ簡単に締め上げてやれる。うん。何の問題もない。
切り替えよう。今すべきことに集中するんだ。
あのギルバンが、格闘術を修練した数列家なのか、数列道の組織の戦闘部門の人間なのか、よくわからないけど。
◇
ベルモガル街1523番地。
自動運転で、すぐに着いた。
星都の郊外の閑静な住宅街である。
広い敷地の立派な一戸建てばかりだ。そこそこ裕福なエリア。
目的地の少し手前でレイラはエアカーを降りる。
目的の家。レスタード教授の家は、古風な2階建てだった。先宇宙期の木造建築様式。玄関の両脇に立派な門柱があり、上にテラスがある。
「ここでいいんだよね」
レイラは住所を確認する。
家に表札は出ていない。一応、家の周辺をチェックする。刑事の習性である。
普通の郊外の家。問題ない。
来る途中、携帯端末でレスタード教授についてチェックした。
ここシン・トーキョー星にある大学に、レスタードという名前の教授はいなかった。しかしレスタードという名前はそれほど珍しくない。検索を全宇宙に拡大すると、この名前の教授はたくさんいた。中には数列と関係ありそうな数学の教授もいた。誰がカオリのいうレスタード教授なのか、わからない。
ともかく。
カオリがここにきて、レスタード教授に会わなきゃいけない、そう言ってたんだ。
会おう。
玄関の前に立つレイラ。
その時。
気づいた。
視られている。




