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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.6 下着モデル密室消失事件
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第58話 女社長の過去



 エストがホテル支配人カジヒラと、今をときめく女社長ミレイヌの娘だったとは。


 驚きの事実である。


 いや、誰よりも驚いたのは、エストだろう。


 今日ホテルに着いた途端、これまで会ったことのない実の両親を知ってしまったのだから。そしてそのうち1人は、今日のパーティーの主催者、ファッションメディア界の風雲児ミレイヌだ。


 「それでロビーで、あんなに真っ青になって動揺してたんだ」


 エスト。


 柱の陰でカジヒラの話を聞いて、混乱したに違いない。しないわけがない。頭の整理も心の整理を全くできないままパーティー会場に行って、ミレイヌと出会った。ずっと知らなかった自分の母親を目の前で見た。それで思わずあんなことしちゃったんだ。そして混乱したまま、パーティー会場を駆け出して行った。


 エストは会場の外の廊下でカジヒラと出会った。カジヒラはエストのただならぬ様子に、とにかくここは自分がしっかりエストを守ろうと支配人ルームに行くように指示し、(ドア)(ロック)(キー)を教えた。エストはそのまま支配人ルームへ行った。


 カジヒラは、エストを追ってきたレイラにはエストは見なかったととぼけ、一緒に反対側を探すふりをした。そしてレイラと別れた後、支配人ルームに戻り、エストと話をした。


 しっかりと時間をかけて、話がしたい。これから2人で郊外にある私の別荘に行こう。そういった。


 エストは、青ざめたままうなずいた。


 カジヒラはすぐにホテルに休暇届を出し、エアカータクシーを呼んで、エストと2人でこの別荘にきたのだった。



 「私たちはやっとしっかり話ができたのです。もちろん、私が棄てて顧みなかった娘です。私の父親だなどと名乗る資格はなかったのですが」


 カジヒラはまた言った。すっかり憔悴している。


 父娘の断絶と再会。


 事情を話してくれた。





 若い頃。カジヒラ、当時のモルンはサクラ、後のミレイヌと出会い、愛し合い、同棲していた。サクラはカジヒラにすっかり夢中で、何かにつけ結婚しようと言っていた。カジヒラも、一旦はその方に考えが傾いたのだが、他の女性に心を奪われてしまった。結局のところカジヒラはサクラから去り、その女性と一緒になることにした。しかし、今度はカジヒラがその女性に逃げられてしまうのである。突然、事情も告げずに女性は出て行ってしまったのだった。


 「私は茫然となりました」


 自分を愛してくれる1人の女性から逃げ、自分の愛した1人の女性からは逃げられたカジヒラ。


 しばらくの後。サクラから通信(メッセージ)が来た。


 また一緒にやり直さない? そう言うのである。


 ごめん。もう僕の心は君にはないんだ。カジヒラは返信した。


 そこに、サクラは思いがけない通信(メッセージ)を送ってきた。


 あなたの子供を出産した、というのである。


 通信(メッセージ)には、出生証明書の画像が添付されてあった。


 母親はサクラ。娘の名前はエスト。間違いなかった。


 だが。


 愛する女性に逃げられ茫然となっていたカジヒラに、サクラに許へ戻る気はなかった。自分の娘が生まれた。その時には、遠い世界の話のように思えた。


 カジヒラは返信しなかった。


 サクラとは、そして直接顔を合わせぬエストとも、それっきりだった。



 やがてカジヒラは立ち直り、モルンからカジヒラと名を変え、ホテルマンとして働き、ついに支配人に出世した。昔の事はリセットし、自分の人生をやり直していたのである。


 そこでまた思いがけないことが起きた。



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