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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.6 下着モデル密室消失事件
53/179

第53話 活動的なダウナー系



 レイラとカオリ。


 2人は非常口から、外へ出た。


 ホテルの裏庭に面した窓の下には、バルコニーがあろ。


 しかし部屋同士行き来できないように、仕切りの壁がある。


 レイラ、当然のように、仕切りに手をかけ、乗り越えていこうとする。


 「レイラさん」

 

 カオリ、びっくりする。


 「何するんですか? 見つかったらまずいですよ」


 「ふふ、何でもないよ」


 レイラは振り向いて言う。


 「ちゃんと照明(ライト)検知器(センサー)の位置は計算して動くから。まかせといて。支配人の部屋の様子を見に行って、すぐに戻ってくるから。カオリ、あなたは、ここで待っていて」


 「私も連れて行ってください」


 「え?」


 きっぱりとした声とともに、カオリがレイラの首に抱きついてくる。カオリの青い髪がパラリとレイラの顔にかかり、甘い匂いがする。


 「このまま背負って、連れて行けってこと?」


 「お願いします」


 なんだか強引な子だなあ。しかし、妙に強い決意を感じる。振り払っていくわけにはいかない。この子、本当にダウナー系なのか? 活動的すぎる。


 「もう、じゃあ、しっかりつかまっててね」


 レイラはスレンダーだが、体力筋力腕力には自信がある。宇宙警察学校で必死に鍛えたのだ。


 えいっ、とカオリを背負ったままバルコニーの仕切りを乗り越えた。カオリはしっかりとレイラにしがみついている。細くて華奢で小柄なカオリ。軽い。担いで行くのには問題なかった。


 そのまま2人は。


 見つからないように身をかがめて窓の下を通り、また次の仕切りの壁を乗り越え進み、支配人ルームの窓の前までたどり着いた。


 「私が様子を見るから。あなたは身をかがめていて」


 捜査のプロであるレイラ。カオリに指示を出すと、そっと中を伺う。


 窓にはレースのカーテンがしてあるだけだった。照明はついている。よく見える。


 広い支配人ルーム。居間だ。立派な机にソファー。誰もいない。もちろん中が窓から見えない部屋がいくつもある。そこに人がいるかどうか、外からはわからない。


 窓にも(ロック)がしてある。


 破るわけにはいかない。油断なく中に視線を走らせるレイラ。


 「あっ」


 声を上げた。


 「見て、カオリ。椅子の背にかかっている白い肩掛け(ショール)


 カオリも、中を覗き込む。


 「エストさんのみたいですね」


 エストはパーティーの時、黒いドレスの上から白い肩掛け(ショール)をしていたのだ。


 「うん。もう間違いない。やっぱりエストは支配人に連れられてここにきたんだ」


 「そして、今はいません」


 「どうして分かるの?」


 「数列です」


 カオリは、平然と言う。その手には、小さな(スティック)が握られている。数列杖(シーケンススティック)。数列家の秘密兵器。


 「これを使えば、物体を貫通する振動(リズム)を数列に変換し、近くの距離なら精査(サーチ)できるのです。この部屋の中には、人の反応はありません」


 音響探知機(センサー)と似たような原理か。宇宙警察の刑事であるレイラもそういうのは持っている。しかし数列道とやらで、ずいぶん高度なことができるんだな。


 「パーティー会場から飛び出したエストは、支配人カジヒラと出会った。カジヒラが、エストに自分の部屋に来るようにと言った。そして2人はここで落ち合った。そして2人でどこかへ行った。これは決まり。もう間違いなしね」


 とりあえずの収穫だ。レイラは、窓の外から、無人の部屋の中を丁寧に撮影(スキャン)する。


 よし。


 これをここですることは無さそうだ。


 「カオリ、戻ろう」


 「はい」


 カオリはまた、レイラの首に抱きついてくる。少女の甘い匂い。


 「ねえ、カオリ、あなたの数列道とやらで、壁の乗り越えくらいできるんじゃないの?」


 「それはできません」


 カオリ、やや恥ずかしそうに囁く。


 「ふふ、じゃあ、しっかりつかまっててね」


 レイラは来た道を戻ろうと、また、えいっとバルコニーの仕切りの壁に飛びかかる。



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